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カフェでゆっくり小説を読む

お休みの間に、やっておきたかったことのひとつ。

妻と娘が、映画を見に行くというので、一緒にショッピングモールまでついていって、私は一人カフェにいく。

彩瀬まるさんの小説は、本当にいつも素晴らしい。単行本で一度読んでいるお話だけど、文庫本で2度目の通読。ああ、そうだ「手」のお話だと一話目を読んで思い出す。
結末もまたとても素敵なのだけど、それに至るまでのさまざまな登場人物の昼と夜のそれぞれに見せる表情がとてもいい。

みんな昼間は、いろんなものを被って生きている。眠れない夜、どこかのだれか、だれとも分からないだれかには、体を脱いで何も被っていない表情を見せてもいいような気がする。
たとえば、インターネットはわかりやすく、そういう場所であっていいと思う。端的にいえば、嘘がここに混ざっていてもいいし、私が今書いている文章もじつは嘘が少し混ざっている、ということがあってもいい。本当のことは、実際のところほとんどの人には分からないのだから。
昼間にみんなに見せている顔は、本当の自分なんだろうかと思うこともまた、きっとあるはずだ。そして、大人になればなるほど、そういう嘘はどんどん増えていくように思う。

「手」は嘘をつけるだろうか?「手を見せて」と言われると、嘘をつけないような気がする。手をつなぐ、とか、手に触れるとか、手は体の中でも、一番正直で、感覚が直接感情に伝わる箇所だ。

いろんな嘘や見た目、肩書、噂話、ステレオタイプに振り回されて、悩みながら日々を過ごすたくさんの登場人物を、嘘のつけない「手」でつなげていく。とても見事で、素敵な小説だ。

彩瀬まるさんのおかげで、カフェのレモンケーキもとてもおいしかった。

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