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〜 謎解きから未知の世界へ・プッサン 〜

日めくりルーヴル 2020年7月10日(金)
 『サビニの女たちの掠奪』(1637-38年)ニコラ・プッサン

昨年10月 初めて訪れたルーヴル美術館で、自分がどこにいるのか分からなくなって迷い込んだ一室。そこにはプッサンの風景画や宗教画がズラーーーっと並んでいました。
そのプッサンの部屋に展示されていた(←と、帰国後の写真整理で確認した)のが、今日の作品です。

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ローマ建国を果たしたばかりで女性がいなかったローマ人たち。子孫を得るため、祭りを口実にして 近くに住むサビニの人々を招き入れ、女性たちを力づくで掠奪した、という恐ろしいローマ建国伝説を描いています。
あちこちで逃げまどう女性たち、力づくで捕まえようとする男たちが所狭しと描かれています。人々の身振り、表情、そして力強いローマ人の体つきなどの描写は見事ですね。
この一大事に街は大混乱ですが、作品全体には不思議と統一感があります。プッサンの構成力や画力の賜物でしょうか。

勉強不足のままルーヴルに臨んだ私が、プッサンの部屋で知っていたのは『アルカディアの牧人たち』(1639年)一作のみ。

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おーっ!これ、本で見たことがある!という子供のような感想で写真をパチリ💦
ルイ14世が購入し生涯手元に置いたほど気に入っていた、というプッサンの代表作。この時期のプッサンは壮大で明快な作品を描く古典派芸術の世界に影響を受けていたそうです。壮大、明快 … 確かに🤔。
しかし私は、“メメント・モリ!“(死を思え!)をテーマにした演劇舞台で、少し大袈裟な演出を見せられて戸惑ってしまう …  というような、何だか不思議な感覚に囚われてしまうのです。

美術史がよくわかっておらず、まだまだ勉強不足の私にとってプッサンは謎多き画家です。失礼を覚悟で言うならば「なぜここまでフランスで愛され評価されているのか?」わかりません。

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【Nicolas Poussin(1594 - 1665)】
▶︎ 17世紀フランス古典主義の基礎・基盤を完成させた画家
  ← 16世紀以前の人だと思っていました。意外と身近なのね💦
▶︎ 30歳以降は生涯ローマを主な活動拠点としたフランス人
▶︎ 首席宮廷画家としてフランスに戻ったこともあったが、2年でローマに逃亡
  ←「逃亡」って…。フランス宮廷に嫌気がさしたそうです。
▶︎ 母国フランスで愛され、絶大な人気を博した。王立絵画・彫刻アカデミー(1648年パリに創設)はアカデミーの理想を体現する画家としてプッサンを支持した

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  ← パリ国立美術学校で 右の門柱に乗っかる胸像を見ました!
  ← ロマン主義の画家やセザンヌ、ピカソにも影響を与えたそうな。
▶︎ 深い熟考の上で作品を描き、晩年は哲学的画家と呼ばれ、主に知的趣向を共有するパトロンからの個人的な依頼で中型の作品を制作することが多かった
  ← 理性的なアプローチが、フランス人を深く魅了したのですね。
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なんとなく … なるほどです🤔。
実物を前にしてもその凄さが全く実感できなかったのは、知性的・理性的なアプローチを理解できなかったのが大きな原因ですね。

さて、イギリスにおいても 気高く実直で道徳的な画家として高く評価されたプッサンの作品は<ロンドン・ナショナル・ギャラリー展>で見ることができます。
『泉で足を洗う男のいる風景』(1648年頃)

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図録によると、ジョン・コンスタブルは「僕がこれまで見たなかで最も感動的な絵だ。彼の描く風景は、敬虔で道徳的な感情に満ちている」とコメントしたそうです。
“敬虔で道徳的な感情“ に満ちた風景画 … うわーっ!私にとって未知の感覚。
風景画からこんな感覚を受け止められるようになったら、自分の脳内に新たな世界が広がることでしょう。
もっと勉強・経験して感性を豊かにするぞ!と決意を新たにするのでした。

40点ほどのプッサン作品を所蔵しているルーヴル美術館。もう一度訪れることができたその時、少し成長した私がプッサンの部屋を堪能していることでしょう。

  <終わり>


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