1/25「ジャン・アラン」

 バッハは1000を超える曲を作っている。総再生時間にするとどれだけになるんだろう。普通の人ならバッハだけ聴いていれば、他の作曲家を聴かなくても一生満足できるくらいの曲数だ。いろんな曲を作っているけれど、バッハといえばフーガ、フーガといえばバッハというくらい、バッハのフーガはすばらしい。フーガはひとつのメロディーを何度も繰り返しながら、そこに第二、第三のメロディーを絡みつかせて作った曲だ。バッハは複数のメロディーを同時に鳴らす「対位法」の名人で、膨らみながら曲が蠢き這い突き進んでいく姿は無機的かつ有機的で、特にオルガンの音色でそれを聴くと、なんだか化け物じみてさえいる。バッハが特別偉大な作曲家だと見なされるのは、やっぱり曲が畏れ多く聞こえるからだと思う。

 クラシック音楽は作曲家と演奏家が別れているから、好きな曲が見つかるといろんな演奏を探して聴き比べるという楽しみ方がある。同じ曲でもある演奏家ではすっきり聞こえたり、ある演奏家では情熱的に聴こえたり、かなり違いがあって面白い。

 僕は図太く聞こえるせいであまりオルガンの音色が好きじゃなくて、ほとんどオルガニストを知らない。でもバッハの「聖アン」のフーガが好きで、今日はそれをいろんな演奏家で聴き比べていた。その流れでふと、フランスのオルガニストであり作曲家でもある「ジャン・アラン」という人物にであった。

 Jehan Alainという名前をYoutubeで検索すると、幾つかの曲が出てくる。その幾つかの曲が素晴らしいので驚いた。確かにドビュッシー的に聞こえる部分もあるし、けして古典的でもないけれど、エスニックな匂いがして、ほとばしる生命感と冷徹な語法が組み合わさって妙な情感を生み出している。青白いサティという感じ。もっと聴きたいと思った。

 >1940年6月20日に、ソミュール東部戦線でドイツの先遣部隊を偵察中に、ル・プティ=ピュイでナチス・ドイツ軍の一団に出くわした。アランは降伏を拒否して攻撃し、殺害された。(享年29歳)


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