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特別な時間

2017年12月31日の昼下がり、お茶専門のカフェ屋さんにいます。
会社の近くにあるオシャレなカフェで、まだ二、三回しか入ったことがないのだけれど、とても美味しい緑茶が飲めます。
慌ただしく過ぎてしまった今年のいちばん端っこで、どうしてこんなところにいるのかというと、今日まで仕事をしていたからなんですね。
「仕事が納まらない」と苦笑まじりにつぶやく、まさかわたしもその一人になるとは思いませんでした。
そもそも週勤5日で会社に勤めるなんて、大学生の頃のわたしは夢にも思わなかったでしょう(サラリーマンなんて夢じゃない。夢にも思わない、そんな人の多い大学で学んでいたのですから)。
朝早くに、いつもと違う雰囲気の街道を通って、会社へたどり着き、いつものように仕事する。今日の勤務はわたし一人。その一人の特別感が面白く、新鮮な気持ちで仕事をしていたら、あっという間に午後になりました。
話を戻すと、そのお茶屋さんは本当に美味しいお茶を出してくれ、お茶にちなんだ甘味が何種類もあり、店内にはゆったりとしたBGMが掛かっていて、まったりとくつろげる場所なんです。
だからこそ仕事の合間に立ち寄れる雰囲気ではなく、いつも遠くから見ているだけでした。
誰一人仕事をしていないイレギュラーな空間だからこそ、今日はそのお茶屋さんへ行こうと思いたちましたところ、なんとそのお店の「会長さん」なる人がカウンター席でお茶を飲んでいる。どうやら年末の挨拶に来たらしい。古くからの常連さんが続々挨拶していきます。
その店で昔に働いていた人たちが、従業員さんと歓談をしている。
「あなたがここにいるなんて、レアだね!」そんな声が聞こえてくる。
仕事をしていて楽しいのは、決まり切った「仕事」という枠組みを飛び越える、レアな瞬間がたまにやってくることです。例えば誰かが旅行のお土産をくれた瞬間。例えば滅多に壊れない機械が壊れた瞬間。例えば近くで事故が起こった瞬間。例えば野生動物がお店に入り込んできた瞬間……。
空腹のときに食べる食事はなんでも美味しいというけれど、仕事もけっこうそれに似ている。
退屈な日常の中に突如として現れる、異物がもらたらす「特別」は大晦日よりレアに感じる、そんな今日このごろです。

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