詩:山脈(2022.11.16)

山脈

これは山脈
連なる山脈
雄々しい山脈
高い高い山脈
深い深い森の山脈
清らかな水が流れる山脈
美しい青い湖を抱える山脈
岩肌をくり抜いて作り上げた巨大なダムを抱える山脈
林業を営む人々が曲がりくねった山道を軽トラで走る山脈
生物の多様性を後世に伝えるために保護された自然環境のもと多種多様な動物や植物がその生命を営んでいる山脈
近隣市町村の多くの小学校校歌の中で歌われ地域の人々にとってのアイデンティティであり文化的信仰的象徴としての意義を持っている山脈
山脈の中にある色をくり抜いてドット柄のポーチをつくろうとしている
赤い黄色い紅葉の山脈
青い白い霧がかった朝の山脈
新緑の生い茂る初夏の緑や黄緑や青緑で包まれた山脈
青い川と湖、そしてダム、晴天、川面に光る魚の鱗、オオルリ、アカゲラ、コマドリ、モズ、キラキラした青色や白色の光と彩り
あと花
いろんな綺麗な色をした花
それが花畑のように広がっていたり
あと熊
熊いる、山脈には
とにかく色々な色をくり抜いて粗い解像度の中で
モザイク画のように山脈の風景を切り取ろうとしている
そのポーチが出来上がったら、地元の道の駅で売る
クラウドファンディングで制作費用を集める
自然愛好家の人たちに売る
しかしそんな架空の山より現実の山をみていた方がいいんだろうな
山に孤独と豊穣と彩りの夢をのせて
高原列車が発車する
果てしない長い山脈を繰り返し登ったり降りたりしながら、列車が走っていく
山の夢は延々と続く
さようなら山脈