写真_2017-01-15_17_53_10

エッセイ - 小山温泉の覚え書き

今日は小山温泉に入っていた。思川を一望できる絶景の露天風呂を持つ温泉で、特に樽風呂から眺める思川の景色は、思川を独り占めするかのようで最高のロケーションだった。

ここには以前一度来たのだが、その時には夜も更けていて樽風呂に入ったはいいが一面暗闇の世界で何も見えなかったのだ

だから次来る時には絶対にこのロケーションを確かめようと、日の出てるうちに温泉に浸かろうと午後4時にやってきた

そしたらもうすごい人、めちゃくちゃ混んでる、日曜日ということもあるが3つしかない樽風呂はそりゃ高い競争率が予想されるだろう。

軽く内湯に浸かり、すぐさま露天風呂に向かった。


露天風呂、外がめちゃくちゃ寒い、湯船につからないと死ぬ、露天風呂も露天風呂で混んでたけどそれより湯温がぬるかった

樽風呂に入る3人のうちの誰かが出るタイミングを露天風呂の中で虎視眈々と見計らう

樽風呂から人が出た、樽風呂が1つ空いたのだ

早速意気揚々と露天風呂から出る


露天風呂から樽風呂へ歩いて向かう通路の途中、樽風呂の方向へ進路を向けると、そこには空いた樽風呂へ新しく入るおっさんの姿が。

明らかに樽風呂へ向けていた足先をクルッとターン、しかし一度出たのに露天風呂にもう一度入るのも変で、しょうがないので内湯まで敗走する


しかし内湯からだと外の樽風呂の状況がどうなってるのかよかわからないので、結局すぐに露天風呂に戻ってきたのだった。

露天風呂で暫く待っていると、また樽風呂から一人あがるおっさんの姿をみた、樽風呂の枠が1つ空いたのだ

今度こそチャンスだ。そこで俺は考えた、前回の敗走は、露天風呂から樽風呂へ向かうまでの歩行距離が長かったのが敗因である

歩いてる最中に別のおっさんに(樽風呂を)とられてしまったのだ

正規ルートで通ると失敗する、それならば、樽風呂に近い露天風呂出入口の反対側の方から出れば歩行距離も短くて済むだろう

露天風呂の外側には思川を一望できるテラスが広がっている、そこから出た方が樽風呂に近い。

露天風呂を上がり、すぐさま樽風呂へ向かおうと身体を方向転換すると、そこには既に樽風呂へ入ろうとする別のおっさんの姿があった

また先を越された!!!!早すぎるだろ!!!


この時、先日金曜ロードショーでみた「風の谷のナウシカ」のナウシカの台詞が頭の中でリフレインした

「あなたは何を怯えているの?まるで迷子のキツネリスのよう……」

2度も樽風呂争奪戦に敗れ、誰もみてない一人ぼっちの世界で俺はただやるせない怒りを抱えていた

頭の中のナウシカが問いかける


そう……俺は今、迷子のキツネリス……樽風呂にも入れず……突然露天風呂から立ち上がり、何をするでもなく寒い青空の下ただうろうろするだけの……

頭の中のナウシカが何度も声かけてくるが、虚しさが反響するだけだった


しょうがないからサウナに行ったら人が超満席で席は全部埋まってるし、なんか床にも座り込んでる人が2人ぐらいいるし、さらに座る床もないのでただ端っこで立ち尽くしているだけの人が1人いて「スラムかよ」て思った(異常な人口密集地=スラム)

もちろんそんな状態じゃサウナにも入れないので、一回露天風呂に戻り体制を立て直し、サウナから人が出るタイミングを見計らってサウナに入室することに成功した

そこで12分間サウナで戦い、水風呂に入り、また樽風呂を張ることにした


そして同時に2つ樽風呂の席が空き、遂に樽風呂の入浴に成功


時刻は5時を回っていた、まだ空は明るい、若干暗くなってきたとこだったが思川の雄大な景色は確かに一望することができた

俺が右側の樽風呂に入ってると、真ん中の樽風呂に親子連れの客が入ってきた

小さい子2人を連れた父親が、1つの樽風呂に


「思川きれいだねー」「あそこにあるの桜だよね?」「お母さんは入ってないの?じゃあ家に帰ったら、お母さんに自慢するんだー」など、微笑ましい親子の会話が聞こえてきて、両サイドに入っていた俺となんか兄ちゃんはそれをほっこりしながら若干遠目に生暖かい目で見送っていた

やがて、左側の樽風呂につかっていた兄ちゃんが樽風呂から退席した

すると、真ん中の家族連れのお父さんが、

「お前ら、樽風呂1つ空いたからお前ら(子供達)2人でそこの樽風呂入れよ」

と言い、3人で入っていた樽風呂は2人+1人に分散されたのだった


俺も充分樽風呂を満喫した。次の人も待っているだろう、樽風呂をあがることにする。

すると、樽風呂に入っていた子供達が、

「あ、向こう空いたから、僕そっちいっていい?」

と、1人俺の入ってた樽風呂に入っていった

こうして、3席の樽風呂は子・親・子の家族連れで占領されたのだ

これはどういうことだ!!!


無邪気さは時に残酷なものである、俺があれだけ入るのに苦労していた樽風呂は、いま1組の家族連れによってその3つを全て占領されているのだ。

しかし1時間前の競争率に比べ、その時にはもう樽風呂自体の需要も薄れてきていた

兵どもが夢のあととはまさにこのことである。

お父さんも「おい、他の人入るかもしれないだろ!1つの樽風呂を使え!」と注意してたし、別にこの家族連れは何も悪くない(


そんなこんなで波瀾万丈だった温泉体験を終えて、俺は帰路につくのだった。

脱衣所がクソ混んでて俺が落としたと思って拾った百円玉がよくみたら隣の人の奴で笑いながら渡した。


風呂上がりの牛乳はコーヒー牛乳にした



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?