
歩く実習生
【入院日記3 2023年1月20日(金) 五日目】
先日のCT検査で再検査すべきところが見つかり安静採血というものを行った。これは起床時から起き上がらない状態で採血をするもの。起き上がった場合はそこから30分後に採血をし、その間は安静にしていなければならない。
担当看護師と前の晩に示し合わせ起床時間にトイレに先に行きそこから30分後に採血。しかしながら採血量が足りないと指摘を受けて再び採血。採血で失敗していなければこんなこともなかった。おかげで朝食時間が遅れる。
しかしそこで看護師ばかりを責めることもできない。と言うのも自分は静脈が見えづらくて他の人より採血が面倒くさいらしい。点滴のジョイントをつける作業などは特にそうだ。
今日のスケジュールはこの採血と尿検査。そして昼過ぎに糖尿病講習というものがあった。今日も9時過ぎから実習生のMさんがつきっきりになる。
これまでのビデオ学習も終了し、いつもよりも時間が空くようになったのでスケジュール表に書かれている「運動療法」にも今日から参加するつもりでいた。ところが部屋に行っても誰もいない。待っていても仕方がないのでその時間は歩くことに。
Mさんが調べてくれたが現在感染症の影響で運動療法は行われておらず、その分廊下を歩いてくださいと言わらたらしい。
糖尿病のケアは食事療法、薬剤療法と運動療法の三本柱で成り立つがそのうちの一つが現在ままならず代わりに他病棟に行かなければ好きなだけ廊下を歩いてくださいとウォーキングが容認されている。忙しそうな看護師たちをすり抜けて1日に何十往復も廊下を歩いている。再来週には手術を控えている自分にとってはできるだけ歩かなければならないし、歩くのが好きなので可能な限り歩くことにもしている。目標歩数は5000歩だが実際は10000歩以上歩いている。
実習でつきっきりになるMさんはこのウォーキングの時も一緒になる。実習っていったいどこまで付きっきりになるのかちょっと気になってきたが他の実習生も同じように決められた相手にべったり張り付いてケアをしているのでこんなものなのだろう。車椅子の人を担当すれば車椅子を押しているようだ。
そんなわけで歩いてばかりの僕に付き添いになってしまったMさんはかわいそうに他の実習生よりも圧倒的に歩数が多いはずだ。でもまあ先日いたナースにベッタリ甘える極道ジジイの担当になってしまうよりはずっとマシなのだろうと思う。
午後はお昼を食べてすぐに糖尿病教室。同じように教育入院をしている人と実習生も集まって講義を受けるが、元から人前で話すことには不得手な栄養士や薬剤師が話をするので声は小さいし話は少なくとも僕のような職業の人間が見たらちっとも講習になっていない。
前回の入院時に担当だった栄養士の先生がそれを気にされていて上手な授業の仕方を教えてくれと頼まれたことがあり指南したことを思い出した。その先生はもうこの病院にはいないようだがそれでもどこかできっと自信を持って栄養指導の講習を行っていることだと思う。
今日は整形外科の診察も入っていたのを思い出したが待てど暮らせどお呼びがかからず。3時でMさんは実習終了しそれと同時に担当ナースがやって来て整形の主治医が緊急の手術が入り診察はなしですと言われる。
実習生Mさんは糖尿病教室の内容が分かりづらいと言えばわからないところを後日調べて説明しますと言い、運動療法が現在行われていないことを知れば効率の良い退院後の運動療法を考えてくるとも言っていた。これらの事がもしも本当にできるのであれば相当優秀なナースになれるだろうし、ダメならダメでもその努力はたいしたものだと思う。この週末いろいろと考えてくるのかと思うとなんとも申し訳ない。さらに軽く3キロ近くは歩かせてさらに申し訳ない。
きっとどのナースも国試を受ける前の実習ではそれだけの気持ちと覚悟で実習には臨むのだろう。そしてそんな初心を今でも忘れていない人たちが今病気を患う僕たちのケアをしてくれているんだと思う。
去年後半から自分も出来るだけ前向きに、そして自己を容認するよう心がけて過ごすようにしており今回の入院は今のところ前回や前々回のように尖った日々を送ることもなくなった。誰とでも接して誰にでも親しくし、感謝の気持ちをできるだけ丁寧に伝える心構えで過ごしている。入院が自分を成長させてくれているような気もするが、そうだとしたらなんて乱暴な療法なんだろうとも思う。
それでもやっぱりナースにベッタリと甘えてまるでガキみたいに振る舞う極道ジジイは二度と顔も見たくない。
退屈な時間はウォーキングや写経だけでなく韓国語の勉強にも充てているが、このところ韓国のラジオなどを聴いていても拾える言葉が増えて来たような気がする。これも4月からコツコツ勉強を続けて来た成果なのかもしれない。
本当は退屈であろう時間は全部Netflixで消化しようと思っていたが入院してから一度も見たことがない。これは自分でも意外。こうなったら週末も来週もこのまま他のことで時間を有効的に使えたらと思っている。でもやっぱり歩きかな。
夜になってばったり整形外科の主治医と会ったので話をする。一度来週退院し、再来週には手術。またいろいろとお世話になりますと挨拶をして自分の病棟に戻った■
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