【エッセイ】トルコの友人 Dike 1.「トルコへようこそ」2/3

—— 私が彼女に連絡をしたのは今から10日前。

 4日間の連休を利用してistanbulに旅行する予定で、滞在中ぜひとも会いたいから時間のある日を教えてほしい、とメッセージを送った。

 これで会えれば2年ぶりだ。

 ドイツの大学では同じ寮で生活し、クラスメイトでもあり、一緒に学内のイベントに参加する良き友人だった。彼女とは英語とドイツ語ごちゃ混ぜで会話し、「言語はいかに正しく話せるかが重要ではなく、自分を正しく伝えるための手段だ」ということを再認識した。そして彼女には言いたいことは何でも言えた。

 この時期彼女から学んだことはかなりたくさんあった。

 まず言葉の壁に関して、彼女といると伝わらないなんてことはなかった。彼女は意見や気持ちを、ありとあらゆる引き出しから言葉を引っ張り出し(英語でもドイツ語でもトルコ語でも、はたまた知っている日本語からも)、細かなニュアンスまで相手に伝えようとする。気持ちが強いあまり、無意識にトルコ語がほとばしることもしばしば。Google Translateの少し不自然な日本語を見せてきて、適切な言葉がないかを一緒に探すことも時折あった。

 なにがなんでもあきらめない姿に見習うところがあった。(私はもとから自分の気持ちを言葉に変換して他者に伝えることに不自由を抱えているのだが)取り繕ったきれいな言葉を並べるよりも、いかに他人に自分を分かってもらうかの方が大事だということを、彼女といる時ほど強く感じることはなかった。

 彼女は、他人の目によって自分の生き方を左右される人生を全く知らない。どんな時も自信を持ち、堂々としていた。たとえ誰かが彼女の陰口を叩くことを知っていたとしても、「まあ、いい。」と言って、"何が今一番重要で優先されるべきか" の意識を失わず、考えて行動するのであった。まさに私が欲しかった友達。


 —— 10日前、彼女からの返信はこうだ。

「久しぶり。元気?istanbulに来るのであれば、うちのゲストになれるよ。飛行機の時間と旅の詳細を教えて。私の弟は日本に関心があって、会いたがっているし、彼の奥さんも来たがっているよ。また連絡する。」

 彼女の家族はドイツに住んでいたことがあったから、話が全く伝わらないことはない。

 彼女は私の出発前日に長いメッセージを送り、当日の待ち合わせ場所や空港からのバスの種類、料金、スケジュール、そして自分の電話番号を教えた。事細かに、特に待ち合わせについてはよく考えてくれた。

 「空港でWifiを使用できた場合、何時のバスに乗るのかを伝えてほしい、そうすればバス停まで迎えに行く。もし連絡が取れなかった場合は、バス停の向かいにあるPoint Hotelのロビーで待っているから。」

そして締めくくりはこうだ。

「もし連絡が取れなくても心配しないで。

全て大丈夫。いつでも笑顔でリラックス。」

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