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AIでどれほどの新聞記事が書けるかを試していたら、たどり着いた結論

ChatGPTの勢いが止まりません。公開からわずか5日で100万ユーザー、2カ月待たずに1億人超という凄まじさ。100万ユーザー獲得にはネトフリで3年半、インスタでも2カ月半というから、凄さが分かります。AIに新聞記事が書けるか、というのは既に愚問かもしれませんが、部員と楽しみながらいろいろ試しています。そこでたどり着いた一つの結論がありました。

プレスリリースを基に記事を生成する

静岡おでん祭

まず、一覧性がいいのでOpenAIのPlaygroundから試してみました。使わせてもらったプレスリリースは日本最大級!全国のご当地おでんが大集結!「静岡おでん祭 2023」開催です。

こんな感じでプレスリリースをコピペして貼り付けるだけです。プロンプト(指示文)も単純に「以下の情報を基に新聞の告知記事を書いてください。『だ・である』調。300文字以内で」としました。※文字制限はあまり守ってもらえません。ただ、なんとなく短めとか、長めに書いてほしい、ということは伝わりますので、一応指定します。

プレスリリースを読み込ませた上で、記事を生成

生成された記事は次の通り。

3月3日(金)・4日(土)・5日(日)の3日間、静岡市中心街 青葉シンボルロードで開催される、日本最大級のおでんの祭典「静岡おでん祭2023」が決定した。静岡おでんをはじめ、全国のご当地おでん31店舗が参加し、全国からご当地おでんを一度に味わえる貴重な機会となっている。静岡おでんの真っ黒なスープに黒はんぺんや牛すじが入っていて、青のりとだし粉が味の決め手となる。また、予約が取れないと話題の肉の名店なども出店し、おでん以外のメニューも楽しめる。入場料は無料で、商品購入代のみ必要となる。来場者には、静岡のおでんと全国のご当地おでんを一度に楽しめる、年に一度の祭典をお楽しみいただきたい。

生成例

最後に主観が入ってしまっていますが、これは手動でも取れるし、指示を改めて取ることもできるので、たいした問題ではないでしょう。プレスリリースに主催者コメントがあれば、それを反映してもらうこともできそうです。

次に、告知記事ではなく、開催後を想定して記事を生成します。つまり取材したと想定します。生成された記事は次の通り。

3月3日~5日の3日間、静岡市中心街の青葉シンボルロードで日本最大級のおでんの祭典「静岡おでん祭2023」が開催された。静岡おでんの老舗店や有名店、全国のご当地おでんなど31の屋台が出店し、入場料は無料。静岡おでんのルーツは大正時代にまでさかのぼり、牛すじや豚モツを材料として煮込み料理を作り始めたと言われている。また、地元の鉄板焼きそばと共に、黒いスープに黒はんぺんが入るのが特長的な静岡おでんをはじめ、富山の「カニ面」おでん、青森の生姜味噌おでん、陸前高田の漁師のおでんなど全国各地のおでんが一堂に会し、全国から多くの人が訪れた。

生成例

カギかっこ(人のコメント)がないのが物足りませんが、事実の正確性はさておき、一見すると十分に新聞記事になっている印象を受けます。

騎馬武者行列@浜松まつり

次に、自治体のプレスリリースを試してみます。浜松市の大河ドラマ「どうする家康」騎馬武者行列@浜松まつりの開催を使わせてもらいました。

プレスリリース:
大河ドラマ「どうする家康」騎馬武者行列@浜松まつりの開催について
市民協働で築く「未来へかがやく創造都市・浜松」
大河ドラマ「どうする家康」で本市が舞台となる中、浜松まつりを盛り上げるため、大河ドラマの出演者をお招きした、騎馬武者行列を下記のとおり実施します。

(1)概 要 大河ドラマ「どうする家康」で徳川家康役を演じる松本潤さんを家康公とした騎馬武者行列の他、市民参加型のパレードを実施
(2)日 時 令和 5 年 5 月 5 日(金・祝)午後 2 時 00 分~午後 4 時 00 分※予定
(3)会 場 浜松市中心部
(4)出 演 者 徳川家康役 松本 潤さん他
(5)そ の 他 パレードのルートなどの詳細、松本さん以外の出演者、観覧応募方法は後日、改めて発表させていただきます。

浜松市ホームページ(報道発表資料)
プレスリリースとプロンプト

生成された記事は次の通り。

浜松では、令和5年5月5日(金・祝)、大河ドラマ「どうする家康」が舞台となる中、市民協働で未来へかがやく創造都市・浜松を築くため、騎馬武者行列を開催する。松本潤さんが家康公役で出演し、パレードも市民参加型で実施する。会場は浜松市中心部で、午後2時00分~午後4時00分の間行われる予定。出演者などの詳細は、後日発表されるが、松本さん以外の出演者や観覧応募方法もあるという。浜松の将来を築くため、一般市民も一層参加して、「未来へかがやく創造都市・浜松」を目指す。

生成例

津波避難訓練の告知

次に避難訓練の実施について。以下は報道発表文。

令和4年度津波避難訓練の実施について
静岡県では、東日本大震災が発生した3月11日を含む10日間を津波対策推進旬間と定めており、津波に対する正しい知識の普及を図るとともに、指定緊急避難場所及び避難経路の点検等を通じて、津波避難における課題を再確認し、解決を図る契機としています。

静岡県第4次地震被害想定(津波浸水レベル2、重ね合わせ図)(別ウィンドウが開きます)
訓練日
日にち
統一実施日:令和5年3月5日(日曜日)
津波対策推進旬間:令和5年3月3日~12日(10日間)

3月5日(日曜日)は、サイレン吹鳴及び緊急速報メールの訓練配信を行います。
3月5日のみ、下記時刻にサイレン吹鳴及び緊急速報メールの訓練配信を行います。

時刻 内容
午前9時50分ごろ
同報無線「訓練のお知らせ」
※中・西・南・北区

午前10時00分ごろ
同報無線「地震発生[サイレン(60秒間吹鳴)」
※中・西・南・北区

防災ホッとメール、浜松市公式LINEによる訓練開始のお知らせ配信

中・西・南・北区の緊急情報を受信設定されている方

午前10時05分ごろ
同報無線「大津波警報[サイレン(3秒吹鳴・2秒休止)×3回]」 2回繰り返し
※中・西・南・北区

午前10時08分ごろ
緊急速報メール「【訓練】避難指示:浜松市」
※中・西・南・北区にある携帯電話、スマートフォンなどに配信されます。

浜松市ホームページ(報道発表資料)

生成された記事は次の通り。

静岡県は令和5年3月5日(日曜日)に、津波避難の訓練を行うことを決定した。3月3日から12日まで、津波対策推進旬間として津波に対する正しい知識の普及を図る。3月5日には、サイレン吹鳴及び緊急速報メールの訓練配信を中・西・南・北区で行う。また、携帯電話やスマートフォンなどから「【訓練】避難指示:浜松市」という緊急速報メールを配信する。この訓練を通じて、津波対策に対する正しい知識を広め、津波避難を安全に行えるよう、準備を行う。

生成例

ごみ減量ガイドブックの配布

ごみ減量ガイドブックの配布について。以下は報道発表文。

ごみ減量ガイドブック「今日からできる ごみ減らし術」の配布について
市民協働で築く「未来へかがやく創造都市・浜松」
「雑がみ」を集めてリサイクル!
環境×SDGs=浜松型循環モデル構築へ
浜松市では、家庭ごみの減量方法を重点的に市民へ周知し、行動を促すために、この度ごみ減量ガイドブック「今日からできる ごみ減らし術」を作成いたしました。
本冊子は、浜松市の家庭ごみ減量目標や、分別の仕方・減量方法などを写真・イラストを用いて説明した内容となっております。
1 作成の背景・目的
・令和 3 年度から実施した家庭ごみ有料化に関する説明会の市民からの意見でも、「家庭で取り組める具体的なごみ減量方法の周知が必要」との意見が多数あった。
・家庭ごみ有料化の検討に伴い、市民のごみ減量への関心が高まっていることから、周知し行動につなげたい。
2 冊子掲載内容
・雑がみの分別
・プラごみの出し方
・生ごみの減らし方 など
3 配布方法
令和 5 年 3 月号の広報はままつと合わせて、市内全戸へ配布し、各区役所、協働センター等にも配架します。
また、外国語版としてポルトガル語版及び英語版も作成し配布いたします。

浜松市ホームページ(報道発表資料)

生成された記事は次の通り。

浜松市では、家庭ごみの減量方法を重点的に市民へ周知し、行動を促すため、「今日からできるごみ減らし術」というごみ減量ガイドブックを作成した。冊子には、雑がみの分別やプラごみの出し方、生ごみの減らし方などが写真やイラストで解説されている。令和5年3月号の広報はままつと合わせて、市内全戸へ配布し、各区役所や協働センターなどにも配架する。また、ポルトガル語版と英語版も作成し、配布する。浜松市は未来へかがやく創造都市・浜松を市民協働で築くべく、環境とSDGsから浜松型循環モデルを構築していく。

生成例

市長定例会見の議事録を基に要点を報告する

首長の定例記者会見の文字起こしはどこの自治体でも掲載されていますが、浜松市で試してみます。次の一場面をChatGPTで試しました。

記者:毎年聞いていることかと思いますが、令和5年度の当初予算を一言で言うとどのように命名されますか。
市長:今年は「デジ田先導予算」とさせていただきました。この命名の意味をご説明させていただきたいと思います。皆さんご存じの通り、今、国では「デジタル田園都市国家構想」というものを進めております。これはデジタル施策の最も重要なものとして位置づけられており、デジタルを使って田園都市を全国に作っていこうという取り組みとなります。この「田園都市国家構想」とは、故・大平元総理が1980年に作られたもので、自然豊かな地方の住みやすさと、都市の利便性の両方を兼ね備えた地方都市を作っていくことによって、国全体を発展させていこうという試みでした。当時は、まだ都市の利便性を地方に実装させていく手段がなかなかありませんでしたが、今、デジタルをはじめとした先端技術がございますので、これをフルに活用することによって、都市の利便性を地方都市に実装し、住みやすい地方の良さと、都市部の利便性を兼ね備えた都市を作ろうというものでした。考えてみますと、都市の利便性と自然の豊かさを兼ね備えた都市という点では、浜松は既に「田園都市」でございます。さらに、デジタルの活用によって、その利便性を向上させたり、市民サービスを向上させたりでき、住みやすさをより良くしていくことにより、田園都市に磨きをかけていくということで、まさに、全国の田園都市を先導する試みであると言えます。今回も、デジタル等に大変注力した予算編成となっておりますので、国のデジタル田園都市国家構想を先導するという思いで、今回は「デジ田先導予算」と命名をさせていただきました。

浜松市ホームページ(市長定例会見)

普通の記事形式で生成できることは分かったので、今度は記事形式ではなく、要点を抜き出してもらいます。

要点:
記者が、令和5年度の当初予算の命名について市長に尋ねる。
市長は、「デジ田先導予算」と命名した理由を説明する。
命名の理由は、国の「デジタル田園都市国家構想」に注力し、浜松市を先導するため。
「田園都市国家構想」とは、都市の利便性と自然豊かさを兼ね備えた地方都市を作ることによって、国全体を発展させる試みである。
浜松市は、すでに「田園都市」であるが、デジタル技術を活用することで、その利便性を向上し、市民サービスを向上させることで、より良い田園都市を目指す。
今回の予算編成には、デジタル技術に大きな注力があり、国の「デジタル田園都市国家構想」を先導するため、命名を「デジ田先導予算」とした。

ChatGPT生成例

「表形式で」などと指示すると、うまい具合に表形式でまとめてくれます。将来的に正確性が担保されるようになれば、上司や同僚と共有するためのテープ起こしから解消され、AIによって自動的に要点だけをシェアできるようになるかもしれません。というより、確実にそういう時代になりますね。

ChatGPT生成例

新聞記者はこれからどうしたらいいのか

APIで普及は加速の一途

このように、AIで新聞記事が書ける可能性は十分過ぎるほどあると分かりますし、実際、正確性に配慮した上で既に使っている新聞社もあります。

米OpenAIは3月2日(日本時間)に最新のChatGPT API(gpt-3.5-turbo-0301)を公開したばかりですが、そのAPI(※アプリケーション・プログラミング・インターフェース=これを使うことで外部の誰でもChatGPTを自分のアプリやサービスと連携させることができる)を使って早くもさまざまなアプリやサービスが登場しています。AIの普及は文字通り加速の一途をたどっていくと容易に予想されます。近い将来普及する次世代GPTは、正確性がある程度担保されるようになるとも言われており、プレスリリースを出したい側がフォームに必要事項を入力するだけで正確な新聞記事が自動生成されるサービスも早晩、登場するのは間違いないでしょう。

紙媒体の新たな使命

記事が自動生成される時代、新聞社や新聞記者はどうすればいいでしょうか。不安な記者も多いと思いますが、個人的には、AIの普及に伴ってデジタルの世界がより深く、より広くなるほど、紙媒体の存在意義は高まっていくと思っています。巨大な輪転機や戸別配達網を持っている、あえて言いますが「オールドメディア」は、デジタルの海に浮かぶ貴重な島のような存在になりうるかもしれません。それとも、海の家のような存在かもしれません。熾烈な差別化競争が繰り広げられているデジタルの大海とは違って、海面に顔を出せばすぐに目に入り、たまには上陸して羽を休めることもできます。

結論として

そのときに海の家のプロフェッショナルとして温かいラーメンや美味しい丼で人々を迎えることができるか―。やはりつまるところ、新聞記者はデジタルという言葉に必要以上に惑わされず、これまで通り、しっかりと目的意識を持った上で、足で稼ぐ泥臭い取材ができるかが問われることになると思います。今後AIが生成した記事を目にする機会はさらに増えていき、しかもたいていはAIに対する賞賛や驚きを伴う文脈で目にすることになるでしょう。ただ、そこで記者が自信を失う必要は全くない。記事を書くこと自体は、決して目的ではなく、手段に過ぎないからです。

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