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デンマークはコロナ禍にどう対応している? 民主主義と教育から見るデンマーク Pop-up Creative Class #3 イベントレポート

北欧をはじめ欧州で活躍するゲストと共に様々なトレンドやインスピレーションを集め、共に学ぶ場と機会を提供する「Pop Up Creative Class」。

オンライン開催3回目のテーマは「Denmark Today~幸せの国デンマークは新型コロナウイルス危機にどう対応しているのか?」です。デンマークのビジネスデザインスクール「KAOSPILOT」の現役生のMai(マイ)とMarkus(マル)がスピーカーとなり、参加者のみなさんとの対話を通して。
コロナ禍におけるデンマーク政府の対応や、その基盤にある民主主義や教育について探っていきました。
※ 本記事の情報は2020年5月13日時点のものになります。

デンマークを支える民主主義

イベント冒頭では、本イベントの主題にもなっている「コロナ禍にあるデンマークの今」について、デンマークの民主主義と教育に焦点をあてながら解説していきました。

デンマークで民主主義の父と呼ばれるハル・コックは、「民主主義とは生活様式そのものである」と述べています。デンマークにおける民主主義とは、国民一人ひとりに根付く考え方であり、その考えのもとに営まれる生活です。民主主義が国民の生活に直結している例として、スピーカーの2人がプレゼンの中でいくつか動画を共有してくれました。動画の中でデンマークの民主主義を強く感じられたのは、コロナウイルスが感染拡大するなかでデンマーク政府が国民に向けた記者会見でした。

デンマークの首相、メッテ・フレデリクセン首相は会見の中で、国民にこのように語りかけています。

" 私たち政府もコロナへの対処に最善を尽くしていますが、未曾有の自体で政府が間違った判断をするかもしれません。それでも政府が全力を尽くしていることをご理解ください。

国民に対して首相自ら政府も完璧ではないことを伝えることに対して、デンマーク国民はどのような考えを持っているのでしょうか。 マイとマル2人が在籍するビジネスデザインスクール「KAOSPILOT」の生徒へ問いかけたインタビュー動画を見せてくれました。

“ デンマークのコロナウィルスへの対応に関するとてもポジティブなことと言えば、政府や首相側の透明性です。デンマーク政府は情報が入り次第直ちにその情報を国民に共有してきました。同時に知らないことに関しては、回答することができないと率直に伝えてきました。そういうことを含めてどれだけ国民が考慮されているか実感しました。

デンマークの政治の中で民主主義がどのように機能しているのかを表しています。国民が持つ「私は社会の一員である」という自覚は、こういった政府と国民の関係性から生まれ、政治や社会への関心に繋がっているのでしょう。

「自らの人生に責任を持てる人を育てる」デンマークの教育

デンマークの民主主義や教育、コロナへの対応の概要を理解したあとは、Q&Aで参加者の皆さまが、それぞれファシリテーターに聞きたいことを尋ねながら理解を深めていく時間となりました。「教育」をキーワードに、全体で共有された質問と回答の一部をご紹介します。

デンマークでは教室の構造なども民主主義を実感できるような工夫がありますか?

マイ: デンマークの小中学校では、基本的に決まった席や並びがあるケースはすごく少ないと感じています。デンマークの教員を養成する学校では、”教員は学びをデザインするデザイナー”と教えられています。そのため、生徒の特徴や成長段階に合わせて、教員は柔軟に学びをデザインしなければなりません。それに伴い、教員が臨機応変に対応しながら自分で決める権利があると感じています。授業によって輪になって勉強するときもあれば、イスや机を使わない時もあります。

デンマークと日本の教育の大きな違いのひとつは、教育のあり方のように感じます。デンマークに住むマイさんから見てこの点について何か思うところはありますか?

マイ:日本とデンマークの教育について今までたくさん考えてきました。私が感じている大きな違いは、『正解』の求め方にあると思います。日本の教育現場では、正解を教えることに焦点を置いていると感じています。科目が何であっても、”こう考えるのが正しい”を学ぶことに多くの時間を割いている印象があります。一方で、デンマークに来たばかりの頃に、周りにこれどう思う?と聞くと、私の考えとあなたの考えは違うから自分で考えなよと言われ、自分で考える大変さを実感した。デンマークでは正解がひとつではないを前提に、学びを設計していくのだと思います

マル:私から追加すると、数学の計算など全ての科目が対話中心で行われているわけではないです。学生の学びの到達度を測る基準は、内省、クリティカルシンキング、コミュニケーションです。多様化する社会だからこそ、物事を多角的に捉える力、コミュニケーション能力は重視されます。

━━ フォルケホイスコーレ(※ デンマーク発祥の全寮制教育機関)で役割ややりたいことが見つからな人はどうするのでしょうか?

マル:フォルケフォイスコーレだけでなくデンマーク全体で、やりたいことや果たしたい役割を見つけられない人もいます。デンマークのような自由度の高い社会でネガティブな面があるとすれば、自分自身で選択する能力に長けていなければならない。たくさんの選択肢があり何でも選べる中で、どれを選んで、選んだことに対する責任を持つことは難しいです。

自由度が高いデンマーク社会では、生徒のあり方・教員のあり方・教育のあり方を通して、柔軟に個人としてどのような選択をし、その選択に対してどう行動し、責任をとっていくのかを大切にしているようです。

今後も、デンマークの民主主義や教育、ライフスタイルなど多角的な視点からトレンドを発信していく予定です。お楽しみに!

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