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【香りの今昔】ドルチェ&ガッバーナの香水と醍醐天皇御選の練香

瑛人の「香水」

瑛人の「香水」、今大人気ですね!
「君のドルチェ&ガッバーナのその香水のせいだよ」
最初にどこで耳にしたのか分かりませんが、いつのまにかメロディーを覚えてしまいました。
香水と恋愛って、どうしてこんなに相性が良いのでしょうか?
映画や小説でもよく出てきますよね。
恋人から友人の香水の香りが漂ってきたり。
隣りに座った男性が昔付き合った男性と同じたばこを吸っていたり。
それだけで色々なストーリーが思い浮かんできそうです。

匂いと記憶

匂いと記憶は深く結びついているそうです。
近所のお医者さんは「匂いを感じる部分が、記憶を司る海馬と近い場所にあるから」と仰っていましたが、探してみるとこんな記事がありました。

「Psychology Today」によると、これは以下のようなメカニズムです。
鼻に入ってきた匂いは、鼻の内部から脳の下部に沿ってある嗅球で最初に処理されます。嗅球は、感情と記憶に強く関与している脳の2つの領域、「へんとう体」と「海馬」と直接つながっています。面白いことに、視覚、聴覚(音)、触覚の情報は、脳のこの領域を通っていません。だから、おそらく嗅覚は他の感覚よりも、感情と記憶を呼び起こしやすくなっているのでしょう。
出典:「香り」を使えば、いつでも記憶をタイムマシンのように思い出せる

恋の歌

恋の歌は和歌の代表的なジャンルでもあります。
・たちばなの香をなつかしみ郭公 花散る里をたづねてぞ訪ふ(大伴家持)
・人はいさ心もしらずふるさとは 花ぞ昔のかににほひける(紀貫之)
久しぶりに出会ったその人の佇まい、雰囲気、そういったものを含めての「香」という表現には、奥ゆかしさを感じます。
一方で「クレオパトラがムスク(麝香)をまとっていた」などの海外のお話を見ると、異性を引き付ける本能への働きかけの部分が、日本より強いような気がします。
日本と海外でこういった差もあるのでしょうか?
今度調べてみたいと思います。

源氏物語と香り

ところで、日本で「香りと恋の歌」というとやはり「源氏物語」の時代です。
お香屋さんにある「練香」はこの少し前に生まれたそうで、源氏物語の時代は「練香」が大流行!
「源氏物語」を読むと、ちょっと古めかしい香り、流行の香り、その季節にあった香りなど、どんな香りを身につけるかは、当時の女性にとって重要だったということが伝わってきます。

醍醐天皇御選「六種薫物」

その源氏物語には「六種薫物」という、六種類の「練香」が出てきます。
梅花、荷葉、菊花、落葉、侍従、黒方、という六種類です。
このお香は、醍醐天皇が選んで六種類を決めたそうで、これはある意味で「ブランド」なのでしょうか?
別れた恋人から急に手紙が来て、「練香」の香りで昔を思い出して―
千年前の宮廷の中で、瑛人の「香水」のような場面があったかも?
もしかしたら「君の醍醐天皇御選のその練香のせいだよ」なんて呟いた人がいたかもしれませんね。

「練香」はあまり有名ではないけれど

残念なことに「練香」はあまり有名ではありません。
香道が生まれたのは室町時代なので、平安時代より前に生まれた「練香」は、香道でも使われていないそうです。
茶道では炉の時期に「練香」を使いますが、数十年前、友人のお母様がお若い頃は、茶道で使う「練香」はどのお茶席にいっても「梅が香」だったそうです。
そのとき、香道の「直心流」の講演で「六種薫物」のお話を聞いて「季節にあった練香を使うようになった」と仰っていました。
香道では「練香」は使わないと言いましたが、「直心流」は「練香」の文化も教えるために生まれたそうで、「練香」を普及する講演や活動をずっと続けているそうです。

香道の歴史は600年、お香の歴史は1200年。
誰かが伝えていかなければ、日本のお香の歴史は失われてしまいます。
直心流は、この1200年のお香の歴史を広義の香道と捉え、「広義香道の普及」を理念として、当時の浅草寺大僧正・清水谷恭順猊下の後押しを得て創流されました。
出典:直心流家元挨拶

素敵な香りで女子力アップ!

素敵な香りを身につけることは、昔から女性にとって大切な文化だったんですね。
そして失恋して匂いと恋の歌を歌う。
今までも、これからも、人間って変わらないんだなと思います。
でもそれが人間の魅力の一つなのではないでしょうか。
私も香りの文化を大切にしたいと思います。


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