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「愛している」よりも愛のある言葉は「ありがとう」だと思う

夜中に電話がかかってきた。
好きなあなたからだった。

電話の向こう側には
学生時代の友人と今しがた飲んでいて
久しぶりにほろ酔い気分の陽気な声が聞こえた。

ふっと笑った。

「ずいぶん楽しそうじゃない、いいわね」
「いやぁ、酔っちゃったねぇ」


酔うといつもより1.5倍でテンションが上がる
あなたが可愛いからその声を電話越しに聞けて嬉しく思う。

自宅に帰るまでの間、繋いだ電話では
あいも変わらず互いにいろんな話をしていたね。

時々「前も聞いたわよ(笑)」って
トピックも何個かあったりしてね。

その繰り返し話題を重ねるのも
なんだか耳心地が良くってさ。

「それ3度目!」と笑って返すと
ちょっと間をおいてあなたが言った。

ーいつも、ありがとうー
ーほんとうに、いつもありがとうー

1秒くらい間を開けて私もいった。

ーなに急に。
ーでも、こちらこそいつもありがとうなんだよー

私ね、あなたから
「ありがとう」って言われるの、好きだな。

私とあなたの間には
好きだとか、愛しているだとか
そんな甘い言葉を交わすことはなくって。

でも、なんか
お互いがお互いを大事に思っていることは
なんとなく伝わっていて。

それが友達としてなのか
それとも特別な人としてなのか。
私とあなたの気持ちもよくわからない。

時々はっきりさせたい衝動にも駆られるんだけど
別に急がなくていいかと、衝動を手放したりして。

そんなあなたが私に返してくれた
その「ありがとう」は

単に私があなたに
何かしてあげたことに対してではなくって
いつもそばにいてくれての「ありがとう」に
聞こえたんだ。

「ありがとう」

その響きを聞いた時
思わず鼻の奥がツンとした。

嬉しかった。
嬉しかった。
嬉しかった。

「好きだよ」よりも
「愛している」よりも
「ありがとう」が嬉しいなんて。

私、思いもよらない感情に出会った。
ありがとうがなぜこんなに嬉しいの。

それはきっと
心の奥深くから自然に生まれる
本当の愛情だからだと思うから。

好きだよ
愛している
可愛いね

これってさ
自然と言いたくなることもあるけど
でも、どこか一方的な思いにも感じない?

私の想いを君に知って欲しいです。
あるいは、そうやって言えば好きになってもらえる。
なんていう時の駆け引きの材料にもなる言葉。

好きも、愛しているも
相手に想いを与えようとする言葉だよね。

でも本当の好きや愛しているは
言葉にするのではなく、感じるもの
….ではないのかなと思う。

好きや愛していると言葉にした瞬間
なんだかそこに価値がなくなるような
まやかしのようなものにも時々思えるんだ。

もちろん思わず言いたくなるほど
感情が昂ることもあるけれど。

だけどそんな時こそ
実は好きだよとか、愛してるって
なんか言えない…なんてことはない?

でもさ「ありがとう」は言えるよね。
しかもその言葉に絶対、嘘はないの。
本当に思っていなければ生まれない言葉だから。

相手の存在や厚意を受け取って
それが嬉しいと思うから生まれる言葉だもの。

それってさ
それこそが、愛じゃない?

あなたがいってくれた
「ありがとう」という言葉は
私を幸せにする魔法がかかっていると思う。

だって私あなたに言われる
ありがとうで頑張れるんだもん。

私の存在をあなたは認めてくれるのでしょう?

愛も優しさも全部ひっくるめて
「ありがとう」って言ってくれるのでしょう?

どれだけ愛されているかとか
私たちの関係はどうなるの?とか
全部どうでも良くなっちゃうくらいよ。

私、あなたといつまでも、いつまでも。
「ありがとう」を交わせる関係でいたいな。


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