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『ビジネスに活かす教養としての仏教』(鵜飼秀徳)を読んで

みうらじゅんは著書『マイ仏教』で「自分探しよりも、自分なくしの旅に出よ」と言ったように仏教では「私」そのものをデカルト的なとらえ方はしません。

著者の言葉を借りれば「私」は常に様々な影響を受け、肉体的にも精神的にも常に変化しながら存在している総体である。

いわゆる「縁」の考え方は好みですし、貝原益軒先生の『養生訓』のように仏教は禁欲を唱えています。ざっくりですが仏教とは欲と意識をいかにコントロールするかという点に集約されるのではないかと思ったり。

著者の経歴がユニーク。浄土宗僧侶、また新聞記者として会社勤めの経験があり、現在もジャーナリストの肩書を持つ。読者想定はビジネスパーソン向けでライトに読める一冊です。

一見カタ苦しい仏教を、働くこと・生きること・企業価値(利己と利他)など普遍的な事柄に照らし合わせながら説法としてわかりやすくまとめている印象です。(時事的なニュースを写真付きで載せているところにジャーナリスト魂を感じ、ちょっと笑ってしまいました。)

生きる意味を見つけるのはムズい

ケインズは労働時間が減ると予測し、さらに「生きるために働く必要がなくなった時、人は人生の目的を真剣に考えざるを得なくなる」とも言っています。つまり、働くことを考えると突きつめると人生の意味を問うことに行き着きます。

ここで著者は、閑話休題で歴史の偉人だって生きる意味を見出すことができなかったと、いくつか事例を挙げています。考えようによっては「これが答えだ!」とも気もしておりまして、空海、ニーチェ、聖徳太子の言葉を下記に引用します。

◆弘法大師空海
生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終わりに冥し(人は何度も生まれ、死んでいくが、なぜ生まれてきたのか、なぜ死んでいくのかを誰も知らない)

◆ニーチェ
人生に意味なし 

◆聖徳太子
世間虚仮唯仏是真 (この世の物事はすべて虚構である。ただ仏の教えのみ、事実である) 

『天才の世界』で湯川秀樹が言及もしていますが、空海はちょっと異質ですね。パフォーマンスが入っているというか。

それでは仏教では何と言っているかというと、キーワードは八正道。正見、正思惟、正語、正業、正命、正精進、正念、正定。

ざっくりいえば、

「この世の苦からすこしでも解放されるためにも、よりよく生きろ」

八正道の実践はなかなかストイックで、まさに「欲」のコントールそのもの。煩悩。

後半に登場するトピックとして、殺虫メーカー各社が全社を挙げて不要な殺生への供養を行っていることだとか、定年後の人生として僧侶になる道があるだとか、僧侶目線の葬式や墓への捉え方などなど純粋にへぇボタンが欲しくなるようなお話も。

さくっと読みたい方にはまず取っかかりとしておすすめです。

というわけで以上です!


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