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『全世界史』(出口治明)を読んで

古代オリエントからローマ、中国、イスラム、モンゴルの歴史がひとつに融合する。「複雑きわまる世界史も、たったひとつの歴史=全世界史として読めばもっとわかる」という出口治明さんならではのコンセプト。『宗教と哲学全史』がおもしろかったので手に取ってみました。

15世期から産業革命の前ぐらいまで、目まぐるしく変わる情勢(世界地図ふくめ)についていくのがやや大変。図版がもうちょっとあればとも思いましたが、逆にいえば語り口の柔らかな文章で成立させている出口さんがおそろしい。おもしろく読みました!

自分の気付きをかんたんにまとめます。

*外圧とアイデンティティ

日本でいえば「白村江の戦い」の敗戦がありました。唐を中心とした海外の外圧によって、自分のことを相手に伝えるためにアイデンティティが芽生え、やがて『古事記』や『日本書紀』につながっていった。

持統天皇が武則天からの影響を受けているのも、ある意味では外圧ありき。今後の元寇、ペリー来航もろもろを考えてみると、外圧が日本を変えている。国だけに関わらず、外圧で変化するのは会社も人も同じかもしれない。

*民主主義と憲法

チャーチルは言いました。「民主主義は最低の政治形態だ。ただしこれまでの王制や貴族制を除いては」。読んでいて、やはりナポレオンの功績は大きいと感じました。一気に「現代世界」へシフトしていく印象です。

イギリスで起きた産業革命、それはもちろん大きなインパクトを与えましたが、個人としてはフランス革命・ナポレオンが近代国家の道切り拓いたように思えました。(その前にルソーの社会契約論とかさまざまな下慣らしがありましたが。)

*「英断」というワード

日本の開国に関する契約・条約。歴史の授業では「不平等さ」が強調されていたように思えます。本書で印象的だったのは出口さんはあえてそれらを「英断した」と表現していたことです。決断でも踏み込んだでもない、あえて「英断」というワードを使っているように感じました。

*オイルショックと技術革新

東側はソ連が価格を維持し、西側は価格の高騰が起きてしまった。だから西側は石油の使用を減らせるようさまざまな分野で工夫を凝らした。その結果、西側に技術革新がもたらされたという逆転劇。これは世界史に限ったことはない普遍性があるように思えます。

*グランドデザインをどう描くか

優れた政治家は将来の見通しを立て、それを実現できる段取りを付けておく。それが「グランドデザイン」。ルーズベルトしかり吉田茂しかり。フランスのド・ゴール、中国の鄧小平、ソ連のゴルバチョフは「人」として興味を持ちました。

そういえば80年代のいつだか、小室直樹さんはテレビ番組のなかで「日本の首相は給料を払ってゴルバチョフにお願いすればいい」とわりと本気でおっしゃってたなあ。日本のグランドデザインはこれからどう描いていくか。また、グランドデザインとは会社でいえばビジョンであり、中期経営計画にあたり、やはり大事。

というわけで以上です!


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