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『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』を読んで

仕事でも遊びでも遠出するときは、その土地にある独立系の本屋さんを探します。オーナーのセンスが注ぎ込まれたようなお店が好きで、訪れたら応援の気持ちを込めて1冊は買うようにしています。

ユニークなお店には固定のファンがついています。そこでは読書会や朗読会のようなイベントの体験がよくみられます。本というよりはそのお店の空間・人・思想に共感して足を運ぶようなイメージ。

まさにユニークを体現したような古くて新しい本屋がフランスのパリにありました。

その名もシェイクスピア&カンパニー書店。「見知らぬ人に冷たくするな、変装した天使かも知れないから」と掲げ、朗読会・お茶会などイベントが充実。さらになんと書架の間にはベッドがあって人が寝泊りできるという。

当時の店主は、社会主義的なユートピアの場を理想とするホイットニー・ジョージ。

「できるだけ少ない金で暮らして、家族といっしょに過ごしたり、トルストイを読んだり、本屋をやったりすればいいじゃないか」

人を拒まないおおらかな心を持ちながらも、どこか偏屈でクセのある人物。でもだからこそ人間としての魅力を感じさせます。

初代がナチの影響で閉店しまってから十年後の1941年、ジョージは意志を引き継いで店名をシェイクスピア&カンパニー書店に。

初代と同じく作家との交流も創出しましたが、やはり二代目の特徴は人の受け入れです。芸術の街・パリに自由を求める若者が何万人もこの書店にお世話になったと。

著者はカナダ人の元犯罪記者。追われるように国を出て、あてもなくパリにたどり着きます。ホテル暮らしのお金もつきそうと思われた矢先、この本屋と出会います。そんな著者による数ヶ月の滞在記が本書。

世界各国から訪れる客たちや、これまたユニークな同居人たちとジョージを交えた人間模様を追うだけでもおもしろい。あまりにも不安定だけど訪れる刹那な喜び。

彼らは「永遠に続かないということ」を知りながらもあくまで日常として過ごすかんじがいいなあ。

その夜のポリー(本屋近くのバー)には、イタリア人にアルゼンチン人、ドイツ人、中国人、アメリカ人とイギリス人が集い、だれもが命の輝きなたあふれ、パリにいる喜びに酔っていた。
ビールをすすり、煙草を吸いながら、これからの旅やつくりたい映画、書きたい本について話した。全員の瞳の中に夢のようなものが輝いていた。

なによりこのお店がいまもなお実在しているのがうれしい。どうやら2006年にジョージは娘のシルヴィアにお店を譲っています。

Google先生で調べでみるとお店は店主が変わってから、グッと外装も内装もキレイになっているように見えます。いつか行ってみたいなあ。

というわけで以上です!


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