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『チョンキンマンションのボスは知っている: アングラ経済の人類学』を読んで

『チョンキンマンションのボスは知っている: アングラ経済の人類学』を読みました。

読書会のなかで年間マイベスト本を紹介し合う流れとなり、知った一冊。いやあ、知らない世界が広がっていました。

舞台は香港のチョンキンマンション(どうやら住まいのマンションでちがいない)。そこにはタンザニア人の商売人たちが集うコミュニティがあった。そこへ、文化人類学者であり、アフリカ研究者の著者が潜入する。

こういったフィールドワークの成果って固い文章の印象。ですが、本書はエッセイのつくり。で、それを可能としてるのは、カラマ(タンザニア人)というチョンキンマンションのボスの存在。彼を主人公に据えて描く、その血の通った人間模様・生き様がおもしろいんです。もちろんビジネスも。

カラマは時間にルーズ、ホラ吹きにも見える。けれど、時には頼りになる。憎めない、そんな愛されキャラ。昼夜逆転した生活を送っていて、中古車のビジネスやブローカーを生業としてる。(仲間のなかには香港で稼いだお金を、故郷で投資して家族にビジネスを任せるような人もいる。)

ひと通り人間模様を描いた後、まとめに入っていきます。なるほどなあと思ったのはこの部分。カラマはテキトーに遊んでいるように見えて、なぜかちゃーんと理にかなったビジネスをしてるよってお話です。ファッションのくだりをクリップします。

この方法を採用すれば、日々の洗濯代を節約し、故郷の人々からの評判を獲得し、転売して得た利益で毎日のようゆ新しい高価な衣類を購入してファッションを楽しみ、格好をつけた自撮り写真を投稿することで、TRUST(仲間内のSNS)において「彼は羽振りが良いらしい」という評判を獲得し、ますます衣類を売りやすくなるという合理的なサイクルができているからだ。そして、これもシェアリング経済の一つの形だ。

コミュニティビジネス、スモールビジネス、シェアリングエコノミー、サーキュラーエコノミー。

シリコンバレー的なグローバル企業に対する逆張り。もしくは一周まわったかんじで「あえて」行き着きそうだけど、無計画でも実践ありきで生きているカラマたちの方が、ずっと進んでいたりする。その意味ではたしかにヒントになるんだろうなあ。

この本がこの内容で成立しているのはカラマあってこそ。最初の出会いで著者がカラマから協力を得られなかったらどうなっていたのだろう。そう考えると、こういうフィールドワークを基とした本に、奇跡のようなものも感じました。

というわけで以上です!

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「心の中から出たものであるならば再び心に届かんことを」。おもに本、言葉に関すること。