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『細雪(上)』(谷崎潤一郎)を読んで

高峰秀子『私の渡世日記』の中で、谷崎潤一郎との交流が描かれていました。すげーなと。1950年版の映画『細雪』に高峰秀子は四女の妙子役で出演。

谷崎自身が妙子に思い入れがあることもあり、大阪弁の指導などはじめ、公使ともに彼女はお世話になっていたといいます。

さて、小説『細雪』ですが新潮文庫版は上中下の3冊という構成。なかなかのボリュームでして、まずは上巻を読みました。

ふれこみには、こうあります。「幸子夫婦の気がかりは、美しい亡母の面影を残しながら、いまだに良縁に恵まれぬ三女雪子と、幼なじみとの色恋沙汰で新聞を賑わせた、奔放な四女妙子の行く末だった。」と。

あ、妙子だ!と思いましたが上巻の読後印象としては完全に三女雪子。彼女の回でございました。古い、良家のお見合いです。自由恋愛を理想としているわけでもなく、あくまでホームドラマ的にといいますか、淡々と関西の上流社会の日常が綴られます。

三女雪子はおしとやかな物静かな女性。近所の美容院の井谷がお見合いをセッティング。お相手となる男性・瀬越氏は目鼻立ちは整っているも、平凡なかんじではある。でも、彼はその気。雪子も満更でもない?

ただ残念ながら、読み進めると本家の興信所(そこまで調べるか!)の調査で瀬越氏の母親が精神病と発覚。いまの感覚ではなんと!なのですが、そこが原因で「家」は瀬越氏にノーを突きつけます。間に入ってしまった次女の夫・貞之助はたじろぎます。

いやもうね、瀬越氏が気の毒でならない。読後、唯一の感想です。

今度瀬越氏が大変よい所から嫁を貰うことになったと云う噂が、もうMB会社の同僚の間にも伝わっていて、瀬越自身もそれを否定せず、あの生真面目な人物が近頃は仕事が手につかないでそわそわしている、と云う風な評判も此方の耳に這入って来ているので、貞之助はそんなことを聞くにつけても瀬越が気の毒で、一廉の紳士に何の必要もなく恥を掻かしたように思えて仕方なかった。

会社ではそわそわしてたのに、、。上巻でその後、瀬越氏は登場しません。ご本人に関わるけれど、ご本人のコントロールが効かないところ(周りの環境や生い立ちなど)で人生に多大な影響を与えてしまうという現実。

切なさを胸に抱き、そのまま中巻へ。

というわけで以上です!


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