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『世界観をつくる 「感性×知性」の仕事術』(山口周×水野学)を読んで

「文化は文明に後追いする」。この言葉を目にしたとき、楠木建さんのある文章を思い出しました。「異文化体験という表現はあるけれど、異文明体験とは言わない」。つまり、どういうことか。いわく、

文明とは、便利で標準的かつ普遍的な価値を持つもの。それに対して文化は、文明ほど普遍性はなく、局所的な価値である。

たとえばアメリカは移民が建国した合理的であり文明的な人工国家です。その一方で、日本は歴史的にも地理的にも自国の文化濃度が高い。だから日本人は他国からの見え方を気にしてる。そして文化的多様性の必要性をとにかく説いてるという不思議な状態。

文化と文明のお話でした。

さて、本書です。対談形式でして何よりグッとくる組み合わせ!印象としては山口周さんの著書を何冊か読んでいれば、スッと入ってくる内容かと思います。

「役に立つ」と「意味がある」という軸があるとして、日本はこれまで「役に立つ」で成功を積み上げてきた。しかし、ある程度の課題は解決し、問題が不足した現在では、「役に立つ」よりも「意味がある」ベクトルで勝負をすべき。

ではどうするか。『センスは知識からはじまる』でおなじみの水野学氏との対談のなかで出たキーワードが「世界観」でした。

『D2C』と関連した世界観

先日、『D2C』で紹介されていた世界観を武器に勝負するアメリカの新興企業の事例を知りました。思ったのは、世界観を売る手段としてモノが必要であるということです。

で、水野学さんはモノで勝負していた会社が急にto Bに流れたり、コトにシフトしたりする状況に対してこんな言及をします。まさに!なことをおっしゃっていました。

「意味があるモノ」自体が存在していなければ、その周辺にコト消費を生み出すことはできないですよね。

世界観のつくり方について、正直な気持ちをいうと、もうすこし議論のスペースを割いていただけると読者としてはうれしかった。本書のなかで紹介されているシェイクスピア・アンド・カンパニーはたしかにすごい。

キーとなるような言葉を拾います。

世界観づくりの条件とは、細部まで徹底的に最適化していること。

細部まで「こだわる」のでなく「最適化」していること。ここがポイントだなあ。じつは日本企業の事例はバルミューダくらい。『D2C』でも日本企業にはノータッチ、ほんとに存在しない?関心あります。

デザインとは

おふたりのお話を拝読し、デザインを学びたい(インプットしたい)なあと思わせてくれました。哲学をおもしろがっていましたが、デザインに徐々にマイブームをシフトしていこうかな。

お二人の発言かはあえて省略の上、すこしクリップします。

デザインの本質は、人格を与えることだと思っています。
広告の究極の目的は、その人にとっての商品の意味合いが変わるということ。
いまここにない未来を想像し、鮮明に思い描いて実現への道筋を考え、最終的なアウトプットまでをつくりあげる。それがデザインの役割だと、改めて感じます。矮小な意味での表層デザインではなく、僕が思う「真の意味でのデザイン」の役割は、それだなと。

最後の引用クリップに関していうと、GOの三浦さんがクリエイティブディレクターの必要性とそもそも足りていない現状を訴えていらっしゃいました。一般論としてのデザインをもっと広義にとらえ、水野さんの言うようなアプローチが今後主流になってくるはず。

山口周さんに興味がある方は下記もご覧ください。

というわけで以上です!


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