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多様性のあるコミュニティから事業の共創を | LAC屋久島コミュニティマネージャー・阪根さんの想いと挑戦

世界自然遺産の島として知られる鹿児島県屋久島。縄文杉などが有名で、圧倒的な自然とその中で楽しめるアクティビティが人気です。

そんな屋久島の南部にLivingAnywhere Commons(以下、LAC)の拠点があります。LAC屋久島は屋久島空港から車で45分ほどで、ゲストハウスやシェアハウス、コワーキングスペース、食堂の複合施設となっています。

コミュニティマネージャーを務めるのは、阪根充(通称:みっきー)さん。LAC屋久島の魅力やコンセプト、事業にかける想いについてお話を伺いました。

阪根充(さかね・みつる)さんプロフィール
屋久島サウスビレッジ(LAC屋久島)、屋久島ユースホステルのオーナー。自身で立ち上げた屋久島関係案内所代表、屋久島カフェ巡り実行委員会代表を務める。会社員生活を経て2002年に屋久島に移住し、宿泊施設のマネージャーとして3年勤務。その後、宮之浦ポートサイドユースホステル(現 屋久島ユースホステル)をオープン。2016年には屋久島サウスビレッジをオープンさせ、2021年5月にLACと提携。

開放感がある広い施設が魅力。周辺にはアクティビティも

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--屋久島サウスビレッジの施設について教えてください。

ゲストハウス、シェアハウス、食堂、コワーキングスペースの複合施設になっていて、LAC会員はゲストハウス、食堂、コワーキングスペースが使えます。

私のお気に入りの場所は木の上のデッキですね。友達の大工さんに作ってもらいました。

--ウッドデッキで仕事したら気持ち良さそうですね!施設の魅力は何ですか。

施設規模が大きいため、開放感があって人口密度が非常に低いことが魅力です。お客さまからは「ほどのほどの距離感が良い」と言われますね。他の人と適度な距離をおきながら、それぞれが過ごしやすい所を見つけている感じです。

--施設周辺にどのようなスポットがありますか?

すぐ近くに海があって、歩いて海に降りられます。海に降りると滝があって、滝行ができるんですよ。仕事に煮詰まったら海に降りて滝に打たれると良いと思います。海を見ながら瞑想するのも良いですね。

--海に滝があるなんて珍しいですね!利用者の方々は、アクティビティを楽しまれる方が多いですか?

そうですね。トレッキングやカヤックなど、山と海どちらのアクティビティも楽しむことができます。また、鹿児島県がサイクルツーリズムに力を入れているということもあり、レンタサイクルやサイクリングツアーも行っています。半日で巡る絶景ダウンヒルコースというツアーがあって、ガイドは私が行っています。

--アクティビティ好きにはたまりませんね。ずっと遊んでしまいそうです(笑)。

LAC会員さんは恐ろしいくらいに仕事してますね(笑)。1週間から2週間滞在される方が多いのですが、例えば4、5日仕事をして、残りの2、3日は遊びに行くという過ごし方が多いです。また、仕事の合間に散歩に行ったり海に降りたりしてリフレッシュされています。

画像2▲阪根さんお気に入りのウッドデッキ

屋久島の魅力は大自然と水、多様性のある島民たち

--屋久島の魅力について教えてください。

自然が素晴らしいのはもちろん、水と空気がおいしいです。特に水はお客さまにも好評ですよ。焼酎や食べ物がおいしい理由は水の良さだと思います。

屋久島はどこでもおいしい水が飲めるので、コンビニで水を買う本土の習慣にびっくりしますね。

--屋久島の水、飲んでみたいですね。屋久島の暮らしはいかがですか?

海も山も近いので、どちらの遊びも楽しめます。また農業も漁業もあるので、食べ物も豊かです。暮らすのに良い島だなと感じています。

また、人の多様性も魅力ですね。北と南で島民の性格は違うとも言われます。屋久島には24の集落があり、古くから集落ごとの文化が強くて言葉も違います。今はだいぶ薄まってきたみたいですが、昔の人は話し方でどこの集落の人かわかったそうです。

また、移住者も多い島なので多様な人に出会うことができますよ。

--屋久島サウスビレッジでは地元住民の方との交流も楽しめそうですか?

屋久島サウスビレッジにいろいろな人が出入りしているのを地元の方々も知っているので、面倒を見てくれる人は多いです。近くの居酒屋に行って地元の人と盛り上がって閉店後まで飲んだり、散歩してたら話しかけられてお家に遊びに行ったり、そんな体験をするゲストさんもいますね。

会社員を経て屋久島に移住。好きだった「旅」を仕事に

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--阪根さんが屋久島に移住したきっかけは何ですか。

屋久島での宿泊施設の求人に応募したのがきっかけです。屋久島に移住する前は10年間会社員をしていたのですが、いずれは自分で事業を興したいという想いがあってタイミングを見計らっていました。

--以前から屋久島で事業をしたいと思っていたのですか?

屋久島に絞っていたわけではないですが、九州の自然豊かなほどほどの田舎で観光宿泊業を行いたいと思っていました。私が思い描く条件に当てはまるのが屋久島だったのです。

観光宿泊業をしたいと思った理由は、私自身旅が好きだからです。全国の温泉を巡っておいしい料理を食べたり、自転車で旅をしながら山に登ったりすることが幸せでした。

--旅に関わる仕事をされたかったのですね。LAC屋久島のコミュニティマネージャーに就任するまでの経緯を教えてください。

移住後、修行のために宿泊施設のマネージャーとして3年間勤めました。修行期間を終了した後にオープンさせたのは、屋久島の北にある宮之浦ポートサイドユースホステル(現屋久島ユースホステル)。港の目の前だったので、典型的なバックパッカー宿でしたね。

LAC拠点である屋久島サウスビレッジは2016年にオープンし、2021年5月にLACと提携しました。

このままでは屋久島が疲弊する。関係人口創出へ事業を転換

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--屋久島サウスビレッジをオープンしたきっかけは何ですか?

屋久島サウスビレッジは廃業した宿泊施設を買い取ってリニューアルオープンしたのですが、当時のオーナーから「自分の想いがこもった施設を大事に引き継いでもらえる人を探している」と相談を受けたのがきっかけでした。

--宮之浦ポートサイドユースホステルの運営を行いながら、屋久島サウスビレッジをオープンさせたのですね。当時、どのようなイメージを思い描いていたのですか?

今の言葉でいうと関係人口作りですね。リピーターや長期滞在など、より深く屋久島に関わってくれる方のための拠点を思い描いていました。

屋久島といえば縄文杉。みんな行きたいと思いますよね。しかし、「脱・縄文杉」を掲げ、「縄文杉に行きたい人は来ないで!」というノリでオープンしました。(笑)

--屋久島で「脱・縄文杉」とは!関係人口作りに取り組もうと思われたのはなぜですか?

屋久島の観光はパターン化され、観光として消費されているだけだと思ったからです。これを続けていたら、自分たちも地域も疲弊すると思いました。屋久島にとってプラスにならないし、持続可能性がないと感じていました。

宮之浦ポートサイドユースホステルでバックパッカーを受け入れること自体は楽しかったですし、経営はうまく行ってたのですが、「これをずっと続けるのか」と考えたときに自分のモチベーションが持たないなと思いましたね。

--関係人口を創出して屋久島にとってもプラスになることを行いたかったのですね。

そうですね。来てくれた人が屋久島と深く関わり、屋久島のプラスになることを残していってくれたら良いなと思うようになりました。そのためには屋久島サウスビレッジという人と人との「接点」が必要だったんです。

「暮らすように旅する」と「旅するように暮らす」が交わる場所がコンセプト

--屋久島サウスビレッジのコンセプトを教えてください。

屋久島サウスビレッジは、「暮らすように旅する」と「旅するように暮らす」が交わる場所をコンセプトにしています。旅する人や長期滞在する人、住んでいる人が入り混じっている場所ですね。ここで新しい事業やアイデアが生まれてほしいです。

--新しい事業やアイデアが生まれる仕掛けづくりも考えているのですか?

LACのオープニング企画で、「これから屋久島で新規事業したい」「次のステップを模索したい」という事業家を集めてトークショーを行いました。それを通じて島内の事業者同士で新しい動きが生まれました。

今後はLAC会員のみなさんがそこに関わってくれるとうれしいです。

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--事業が生まれる場所にしたいと思った理由は何ですか?

人口減少が続いているためです。屋久島は観光で有名ですが高齢化と人口減少が続いていて、このままでは約60年後に無人島になってしまいます。移住者は多いですが、島暮らしに慣れず数年で出ていかれる方も少なからずいます。また、子育てに良い環境だからと移住される方も多いですが、ほとんどの子どもは進学や就職で島を出ていきます。

--移住者が多いイメージがありますが、それでも人口減少は止まらないのですね。

人口減少の悪循環を無くすためには、Uターンが鍵だと考えています。子どもが島を出て、自分の世界を広げること自体は悪いことではないと思います。ただ、屋久島に帰ってくるという選択肢が必要です。そのためには、屋久島でも十分暮らしていける環境を作らないといけないですよね。屋久島で産業を生み、仕事を作ることが必要と思っています。

--屋久島サウスビレッジが産業を生むための交差点でもあるわけですね。

そうですね。また、三方良しでもあると思います。利用者にとっては屋久島の自然の中で五感が研ぎ澄まされるので、都会にいるときとは違う発想が生まれたり、仕事の効率が上がったりするメリットがありますよね。そこでもたらされるものが、事業や産業として地元に残ればうれしいなと思います。

LACとの提携で多様性のあるコミュニティづくりを

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--LACと提携を決めたきっかけについて教えてください。

ある程度、関係人口の創出という点で成果は出ていたのですが、まだまだ足りないと感じていました。世の中では関係人口に注目が集まりはじめ、定額制多拠点コリビングサービスが誕生してきたので、そうしたネットワークと提携することを考えました。

そういった中で、徳島でおもしろいコミュニティづくりをしているゲストハウスのどけや(LAC美馬)に視察に行きました。オーナーと意見交換したときに、LACがコミュニティを意識した枠組みだと感じたのです。

--コミュニティづくりが決め手だったのですね。

「接点」を作るうえでコミュニティは重要と感じていました。コミュニティがないと、せっかく屋久島に来ても「接点」がなく終わってしまいますよね。

そのため、コミュニティづくりを意識して一緒に取り組んでいける企業を探していました。LACの「共創」の精神もおもしろいなと思いました。

--提携前もコミュニティを意識されていたと思いますが、なぜLACと提携したのでしょうか?

コミュニティには多様性が必要と感じていたからです。LACと提携する前は口コミのお客さまが多く、似たような人が集まる傾向がありました。それ自体悪いことではありませんが、私としてはいろいろな人が集まれるコミュニティにしたかったのです。

--ご自身にとってもそういった空間が心地良いのですね。

そうですね。多様性のあるコミュニティが好きなんだと思います。あまり偏ったところにいたくないというか、「社交」より「交流」が好きで、ほどほどの距離感でいろいろな人と付き合っていきたいですね。

事業が生まれる拠点を目指して

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--今後、どのような取り組みをしたいと考えていますか?

屋久島サウスビレッジが屋久島に住む人や滞在する人の「接点」となり、事業が生み出される場所になると良いなと思います。実際には、まだ事業が生まれるまでの成果は出ていないので、そこまで持っていける仕掛けやお膳立てをしていきたいです。

そのためにLACのポリシーである「共創」の精神を持った人に来てもらいたいです。こちらもそういった想いをうまく活かせる機会を作らなければいけないなと感じています。

--屋久島サウスビレッジでの取り組み以外に考えていることはありますか。

屋久島サウスビレッジは、バリバリ仕事をする大人の方が利用されることが多いので、もうひとつの拠点である屋久島ユースホステルで若年層向けのサービスを展開したいです。大学生や退職して次の道を模索中の人など、「勉強してみよう」という人が集まる拠点にしたいなと思っています。

--サウスビレッジはワーケーション。ユースホステルはスタディケーションやラーケーションといった役割ですね。

そうですね。現状、LAC会員は屋久島ユースホステルを利用できないので直接は関係ないかもしれませんが、2つの拠点がうまく連携して良いものを作っていけたらと考えています。

--最後に、LAC屋久島拠点の利用を検討されている方にメッセージをお願いします。

一緒に何かを作り上げたいと思っている方に対してのお膳立ては惜しみません。三方良しで、お互いにプラスの関係であることを目指しています。「共創」の精神を持っている方々、ぜひ屋久島拠点にお越しください。

「観光だけでは屋久島が疲弊する」という想いから、関係人口の創出に取り組んで来られた阪根さん。多様性のあるコミュニティづくりはまだまだ始まったばかりです。阪根さんの仕掛けによって、どのような新しい事業やアイデアが共創されるかが楽しみですね。


《ライター:岡野友美

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