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失われた幸福と、それにまつわる物語の話

破滅の話をします。

今年の4月から11月頭にかけて回していたブラッドムーンキャンペーンシナリオ『あなたへの花』の制作過程の一部と、そのシナリオ指定幸福NPC真城朔の話、および我々の破滅の話になります。

szstさん主催のみずわたアドバンテージドラゴンカレンダー15日目の記事です。
14日目のありおりさんの記事の後半です。そちらをお読み頂いているという前提の上で書かれています。
ピンで読めなくもないか? わかりません何も。

わかりやすくて読みやすい。ありおりさんはすごい。

「あなたへの花」のシナリオの核心的ネタバレが含まれます。
気になる人はリプレイ読んでね! 昨日のありさんの記事でもいいです。

シナリオ指定幸福としての真城朔

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はい、この男です。昨日に続き繰り返しすみません。

PC1と同じ高校に通う高校三年生。素行不良で怪我や欠席が多いものの、級友や教師とはうまくやっている。PC1とは特別に親交が深い。
PC1には隠していたが半吸血鬼で、ハンターとして社会を脅かすモンスターを狩っている。その事実を知られた後も、PC1を狩りから遠ざけようとするが……。

吸血鬼だった母親を殺した半吸血鬼のハンターの話」をやろうと思ったのがあなたへの花の始まりでした。
私はキャラクターのオタクなので、キャラクター先行で話を考えます。ブラッドムーンはシナリオ指定幸福という形でPCの大切なものを指定し、動機としてセッションを進めていけるシステムです。そこにNPC(ノンプレイヤーキャラクター。GMの動かすキャラクターのことです)を入れるとNPCのための話をやっていける。
キャラクターをやりたいオタクには回しやすいシステムなんですね。

さて、話を作るにはキャラクターの動機が必要です。
半吸血鬼のハンター」と「殺された母親の吸血鬼」が主な要素になるわけですから、ハンターは母親を殺した事実に囚われている方が話を転がしやすい。母親が蘇るか蘇らないか、というベクトルを軸にしましょう。
吸血鬼の使う血戒と呼ばれる血の術は物理法則に反した現象を引き起こしますが、死んだ存在を蘇らせるような無法はできません。吸血鬼を物語の主軸としつつ、魔女や魔女の力である魔法の干渉によって要素を補強して話を転がしていくのがいいかな。
などと練りつつシナリオアドバイザー(私を去年「クロニック・ラヴ」でボコボコにした水面さんです)と相談しながら話が転がっていきます。

最終的に私はいつものどうしようもない男をやるのでキャンペーンをかけて救ってもらうかもらわないかというような……そういう話に……なりました。

真城朔を軸に用意されたシナリオ

さて、私はシノビガミで育ったTRPGerなので、分岐のあるシナリオ展開が大好きです。(※シノビガミはPvPを含むシステムで、展開に分岐があるシナリオが多いです)
一つの決まった結末に誘導するよりも複数の選択肢を提示し、PLらが本人の意志で選び取った道をその物語における真実としたい。そういうタイプのGMです。
というわけであな花もそうしたい。

結果、「真城を生かす」か「真城を殺す」という大まかな二つのルートを用意することにしました。

そして今回やるのはキャンペーンです。
しかも従来よりも難易度をゴリゴリに盛ったレギュレーションを全4話かけてやります(ちなみに実セッション時間にして150時間程度になりました)。
私は結構負けたら負けたでお話だしバッドエンドも物語だよねと思っていますが、流石に長い時間と労力をかけて行われるキャンペーンで勝利して辿り着いた結末で「やらなければよかった」だとか「あんなに頑張って勝ち取ったものがこれ?」とだけはPLに感じてほしくありません。負けた場合は知りませんが。いや、負けても前者はいやだな……。
とにかく、大変な苦労を強いるからには最後に勝った時に今まで頑張ってきて良かったと思ってほしかった。自分が選んで、勝ち取った道に胸を張ってもらいたい。

つまり真城を生かすにせよ殺すにせよ、PLに選んだ道をこれで良かったと納得してもらえるエンディングを用意しなければなりません。

こうなるとやることは一つです。
人情的には生かしてやりたいけど本当にそれが真城にとって幸せなのか?」「本人の望み通りに殺してやった方がいいんじゃないか?」と思わせるようなキャラクターと物語と説得力を真城に築き上げていくことが全てです。全てか? 全てだよ。
だって大切な存在には生きて幸せになってほしいってなるのが人情じゃん! 普通に考えたらノータイムで真城を生かす道を選ぶに決まってるんだから、それを思いとどまらせるだけの理由が要ります。
私は特に人殺しキャラにかなり厳しいです。(母親を蘇らせるためとはいえ)我欲のためにモンスターという名の人殺しを生み、夥しい犠牲を積み上げてきた罪人である以上、断固真城を殺すべきだ、という論調で挑みます。それが彼が受けるべき罰であると。GMが真城をかわいそうだと思ってはならないのです。

一方でどうしても真城に感情移入するだろうPLのために、真城を殺すべきエクスキューズを積み上げていきます。常に罪の意識に苛まれていて贖罪を望んでいる、どうせなら大切な人であるPC1の手にかかって死にたいと思っている、そもそも生きていく上で不都合のある体質である、など。
PC2とPC4がモンスターに身内を殺されているキャラクターであったため、もちろんそれらを真城による被害として設定します。真城は世界に犠牲を強いてきた大量虐殺犯であり、それを心の底から弾劾できる存在がPCの中に必要だからです。結局自分が被害を受けていないのならばいくらでも酌量できますから。
一方で真城に思い入れが発生するHOであるPC3には真城の死によって愛した人が蘇るという特典をつけましょう。真城が今まで積み上げてきた犠牲が実を結び、最後に真城が死んだ結果、彼の母親が、PC3の愛する人が蘇るのです。あとたった一人、真城が死ねばいいだけなのに、彼らの犠牲を無駄死にで終わらせるなんて馬鹿げている。
さて、PC1。お前が真城を殺して彼の悲願を叶え、楽にしてやるという結論を出せば全てが丸く収まるぞ。

大切な存在には生きて幸せになってほしい。当たり前のことだ。けれどそれは自分の独りよがりな願いではないか? 安易な選択の責任が取れるのか? 責任を取れないのならば殺してやった方がいいのではないか?
誰が見ても真城には殺されるべき妥当性があり、何より真城本人もそれを望んでいる。死ぬことによって彼の唯一の「自分のせいで死んだ母親を蘇らせる」望みも叶う。であれば叶えてやるのが幸せではないか?
それとも、これほどまでに殺されるべき理由があり、本人も死にたいと思っている真城を、生かすだけの覚悟があるのか? 責任を負えるのか? 彼を生かすということは彼が積み上げてきた犠牲を無に返し、罪だけを残す結果になるのに?
それでもなお、おまえたちは彼のためと思って彼を生かす道を選ぶのか?

というのが「あなたへの花」で用意された命題でした。

まあなんかその結果めちゃめちゃ腕っぷしが強くてタフなのに他人の性欲を喚起する体質を制御できていないし襲われたら抵抗できない後天的TS体質で堕胎経験のあるサキュバスのオスの永遠の17歳の半吸血鬼の男子高生ヒロインが生まれたんですが。
えっ? なんだこのキャラ?

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多分プリンセスティアーズのせいでここまでやっていいんだなって認識するようになっちゃったんじゃないかな……。(リンク先R18ゲーです)

大切な人を失った(或いは失う)PCたちが、大切な人のために行動するモンスターたちとの戦いの中で何を考え、最後に何を選び取るか。あなたへの花はそういうシナリオでした。

キャンペーンの結末とEX「禍災」

と、そのようなお話をやりまして。
リプレイあるいは前日の記事をお読みいただければわかるように、PC1である夜高ミツルは仲間を説得し、真城を生かす選択を取りました。
罪は消えない。生きていく上で不都合のつきまとう身体の性質も変わらない。それでも自分が全てを捧げてでも真城を支えるから一緒に生きてほしいと。
蘇った真城の母親である吸血鬼フォゲットミーノットを撃破し、その罪状を理由に真城を連行して検体として扱っていたD7の施設にテロまがいの行為を仕掛けて真城を強奪し、北海道に向かって逃避行。生きててよかった~!

からの、EXでああなりました。

いやっ いや~~ あのう・・・・・・・・
GMですよね? シナリオ組んだんですよね? マジで殺すつもりで動いたしそういう筋書きを設定したわけですよね? なんで発狂してるんですか? って言われたらそりゃ~~いや発狂するが?

大丈夫です。大丈夫じゃないが……ちゃんと……理解してます。私がやりました。私が提示した選択肢であり、私がそのように追い込んだ状況です。
選んだのはPLですが、やったのは私です。私が真城を殺しました。だってそうしないと嘘だから……。

まず「あなたへの花」の真城を生かして幸せにする結末には一つの大前提があります。
それは「大変な戦いを乗り越えてハッピーエンドを掴んだけれど、その後続いていく人生の方が圧倒的に大変である」ということです。
強敵を撃破するのは確かに大変なことです。しかし前段で散々に申し上げたとおり「真城とともに生きていく」のはさらに厳しい戦いなんです。
あなたへの花全四話は掛け値なしのハッピーエンドで幕を閉じましたが、ミツルと真城の人生とその戦いは続いていきます。この世界には強大なモンスターが跋扈しているというのに、それらを相手取った狩りを続けながら。真城の体質もあり、どちらかがいつ死んでもおかしくないというのはもちろん共通認識としてありました。
狩りで命を落とさずとも、真城は歳をとらない半吸血鬼、ミツルは通常の人間です。寿命の差があり、順当にいけば真城を残してミツルが先立ちます。精神的にも肉体的にもミツルに依存しきった真城がそのあと生きていけるのかどうかは非常に怪しい。最後には心中を選ぶのが幸せではないか? というような話題が定期的に出ていたほどです。

課題は山ほどあるけれど、今ここで掴み取った二人の幸せだけは真実。
そういうエンディングのあとにやる後日談でさァ~~……手ぬるいことできるわけないじゃん……
いやっ私は嬉しかったんですよ 嬉しかったですよそりゃ 真城が幸せになる結末を掴み取ってもらって本当に嬉しくてっそれは本当でいやっ私は真城に厳しいからあくまでも殺す方が本筋ですよというスタンスだけは絶対に崩しませんけどそれを覆すほどの頑張りを見せてくれたから本当に嬉しかったから勝ち取ってもらったこのハッピーエンドを壊したいわけないんですよ!
でもだからって絶対にハッピーエンドが壊れないで済むような雑魚敵当てるのは嘘だろ!!!! 本気でやるに決まってるだろ!!!!!

ハアッハアッハアッ

あなたへの花EX「禍災」で真城は死にました。
物語を通してみんなに命を救ってもらった真城が、今度はみんなを救うために命を擲ちました。美しい構図ですね。
ここで真城がそれでいい、と思いながら死んだならまだ幸せだったかもしれません。しかしそれも嘘です。何故なら勝てば死なずに済み、その先にこそ真城の幸せが続いていたからです。
真城を生かすための戦い。ミツルと真城が過ごした一年間。それらの価値を真実のものにするためには、自ら命を擲つことを選んだ真城はその選択を後悔しながら死ななければなりません。

繰り返し述べてきましたが真城はあまりにも多くの禍災を振り撒いてきた存在です。真城のせいで理不尽に人生を、大切な人を奪われた者が無数に存在している。
その事実を狩人社会に公表して償わせることをミツルは拒みました。真城が自分から離れることも、誰かに責められることも耐えられないからと。真城もミツルの意に従い、せめてもの埋め合わせの狩りを続けていく、という生き方を選びます。本当に償いを優先するのならば、ミツルの意見を無視してしまうこともできるのに。
そして真城は自分がミツルの大切な存在であることに怯えていました。自分は罪を犯してきた存在だから、きっと罰が下るのだと。自分はどうなっても構わないけれど、それでミツルが傷ついたり苦しむのは嫌だと。しかし他人を想っての祈りすら踏み躙るのが真城が生み出してきたモンスターという存在です。
ミツルが理不尽に大切な人を奪われて人生を致命的に狂わされてしまうという結末は、真城が何よりも恐れてきた、最も望まなかった結末です。そしてだからこそ真城に下る罰としてこの上なく筋が通っているのです。

ブラッドムーンの世界は無慈悲で理不尽です。それでも力があれば、戦いの上で勝ち取れば、その無慈悲の中でも意志を押し通せる。幸せを掴める。そのように私は解釈しています。
けれど、後日談ではほんの少し、ほんの少しだけ、その力が足りなかったのです。ほんとうに紙一重、あと一手の差で、真城が死ぬことはなかったのですけれど。

あ~~~~~~~ッいやマジで本当に嫌だけどデータも物語も実際の運用も私は反省してないんですね~~~っもう一回やるなら絶対同じことやるもん当初はゆかりさんばっか狙うつもりはなかったんだけど物語とキャラクターの思考がそうなったんだからそうするしかないし6が6が出てよ~~ッ賭けに勝ったんだから殺しに行かなきゃ嘘だろうがよ~~~誰にも死んでほしくなかったよ~~~~クソが~~~~~~~~~ッッッ

本当に嫌なんですけど、いつ来るかも分からなかった決定的な離別をセッションという物語の中できっちりやったことで正しく『幕が下りた』なという感慨もまたあるんですね……いや……本当に嫌なんですけど……。
真城が最後に死んだことで本当にPC4人と真城の物語で終わったなって気持ちもあって……いや……本当に嫌ですけど……嫌ですよ……最後まで生きて幸せな結末を迎えたかったに決まってますけど……決まってるんだけど…………。
いやっっ 本当に嫌だ…………。

最後にみんなが真城を想ってくれて嬉しかったですよ、GMとしては。

真城朔という存在

最後に真城の設定とか書いて終わろうと思います。

微笑み

真城 朔(ましろ さく)。
本編開始時は17歳、県立八崎高校三年二組在籍。
半吸血鬼。吸血鬼となった恋人に襲われた女の胎から生まれた子供。母親の真城碧は真城を生むために両親の反対を押し切って高校を中退し、家を出ている。
多忙ながら愛情深い母親のもと、真城はそれらの事情や、自分が半吸血鬼であることを知らずに育った。小学校では母子家庭であること、母親が水商売をしていることを理由にいじめられ気味だったため、いつも一人でぼんやりと過ごしていた。
碧以外に心を開く相手といえば碧の友人である乾咲フランと、小学生の頃に碧が肺炎で入院した先で知り合った年下の幼馴染である皆川彩花くらいのもの。彩花とは小学校が違い、学校での自分のことを知られていないために気安く接することができたらしく、しきりに見舞いに通っていた。

吸血鬼となった母親から受け継いだ魔法血戒の影響を受け、在り方がモンスター寄りに変化している。半吸血鬼以上に吸血鬼に近く、魔法少女よりも魔女に近い。人間離れした身体能力と頑丈さゆえに単身すらでモンスターを屠り、高い実力を持つ狩人として一目置かれていた。
しかし真城には本来魔法を扱う適性がなかった。そのため魔女としての「他人の背徳的欲望を喚起する」性質を制御できず、周囲の人間が本来戒めているはずの欲望を解き放ってしまうことがままあった。
母親が色欲の相の持ち主だったため、性的欲望に対してはその性質が特に強く働く。獣欲の矛先を自分に向けさせるために身体のつくりや性別すら変化し、解き放たれた背徳的欲望をその都度歓待する都合の良い肉体と化した。本人にとっては全力の抵抗も相手を煽るための一要素に留まる。本人が望むと望まざると、制御できない魔女としての性質はそのように働いた。
モンスターとしての性質に人間性を圧迫されているため、人間らしい営みの多くに支障が出ている。身体は睡眠を必要とせず、寒いも熱いもなければ触れたものの温度すら十分には感じ取れない。食事をしても味が感じられないどころか、消化もできずに吐き戻す始末。消化器の作りが雑になっている代わりに、他人の性欲を満たすのに都合よい性質につくりかわっている。食事の代わりに人間の血を吸う必要があったが、そうすることでもまた相手の欲を煽っては犯された。
これらの性質は魔法血戒を手放しても戻らないはずだった。しかし魔女プルサティラの尽力の結果、少しずつ味や温度を感じられるように、ものを食べられるようになっていた。
それは人間性を取り戻した結果というよりは、見せかけや気分だけでも”らしく”振る舞うことが許されるようになっていった、という程度のものではあったが。

本編開始時の人を喰ったような強気な性格は狩人として生きるため後天的に身につけたもの。かくありたいと願った理想形のロールプレイ。煙草を吸ったりピアスをつけたりなど不良ぶっていたのもその一環。先述の体質や経験ゆえに本人の中で揺らいでいた「男らしさ」や「普通」に対するこだわりが特に強い。侮られないための強気な態度、実力を裏付ける、あるいは実力以上に自分を強く見せるための余裕。そういった虚勢の塊。
その奥の本質は甘えたな寂しがり、引っ込み思案な性格の泣き虫。人肌が好き、安心できる相手に抱きしめられることが好き。内気で無口なくせに衝動的に動くため、突拍子もない行動に出ては相手を戸惑わせることが多い。
それらの性状は強い自罰意識により更に悪化している。「自分は望みを叶えてはならない」という自意識が常に思考の頂点にある。加えて「望んではいない結果を得るという望みを得る」ことをも「自らの望みが叶った」結果として処理する回路が成立しているため、あらゆる思考回路にバグが生じている。
精神年齢が母親を亡くした12歳前後で止まっているため打たれ弱く、すぐに泣くしすぐに落ち込む。そのくせ嫌なことを嫌と言うことにすら抵抗を感じる。すぐに惑って本意ではないことを口走っては取り繕うためのバレバレの嘘をつく。
不本意に欲望を喚起してしまうことを繰り返してきたため、他人と関わることが怖い。人混みが怖い。電車やバスにはなるべく乗りたくない。性欲やセックスアピールの強い人間は特に苦手。自分が男であるという自意識は辛うじて残っているものの、自己の性への認識そのものはひどく歪んでいる。
根が臆病者なので自分よりも大きな生き物全般がそもそも恐ろしい。過去の経験から大型犬、特に猟犬は怖い。かといって小さな生き物もうっかり傷つけてしまいそうで触るのが怖い。動くのを眺めるのは好きだけど自分に向かってこられると怯える。
総じて取り扱いに困る面倒くさい性格の持ち主。

体質や自罰意識を理由に他人から距離を置いていた真城がしかしミツルとの交流を自分に許したのは、「自分が命を救ってやった相手だから」という傲慢な言い訳が本人の中で成立していたからだった。
自分は彼の恩人なのだから、自分のせいで寂しそうにしている可哀想な彼とくらいは一緒にいても構わないだろう。どうやら本人も喜んでいるらしいしと、一種の慈善事業のような気持ちで。
その言い訳が成立しなくなり、夜高ミツルが真城にとって「命を救ってやった相手」から「自分のせいで家族を殺された人間」に変わるまで、そう長くはかからなかった。そしてそうなった時には既に手遅れだった。人を遠ざけて生きてきた真城の、本質的な寂しがりの部分はすっかりミツルに依存しきって、それを切り離すことは難しくなっていた。
自分は既に罪を犯しているのに。母親を蘇らせることを自分の存在意義として、それ以外の全てを切り捨てて、何もかもの望みを手放してきたのに、気付けば何よりも夜高ミツルの存在が大切になっていた。
それでも止まることはできない。既に選んだ後だから。犠牲を積み上げてきたから。止まってしまったら犠牲にしてきた、殺されてきた人々、自分がモンスターに変えた者たち、すべてが無に返ってしまうから。
だから真城は高校が襲われたあの日にミツルを見捨ててしまうべきだったのだ。そうしなければならなかった。最も大切なものを失うことを、真城は受け入れなければならなかったはずだった。

そうできなかったことですべてが破綻した。それを真城が後悔しなかったはずはない。
けれど触れられるごとに、微笑みかけられるごとに、名を呼ばれるごとに、その選択が間違いではなかったと自らの中で結論が出てしまうのだった。

真城はミツルが好きだった。
少し癖のある髪が好き。丸い瞳に見つめられるのが好き。自分よりもしっかりした首の筋が好き。狩りを始めたせいで硬くなった手のひらの皮膚が好き。その手が器用に包丁や調理器具を扱う様子が好き。触れられるのが好き。抱きしめられるのが好き。
そのどれかひとつ、あるいはすべてが失われたとしても、自分とは遠いところにあったとしても、夜高ミツルという人物がただただ好きだった。
彼が満たされることを望んでいた。彼の隣に自分がいることが恐ろしかった。尽くされることが嬉しいのに居心地の悪さから逃れられずにいた。いつか手放されることが怖いから、いっそ手放してほしかった。彼とともにいたいという望みが叶ってしまっていることに怯えていた。
それでも一緒にいられることが嬉しかった。幸せだった。

最後の禍災の日。
真城が生きていたために大災害に巻き込まれた故郷の街。グロキシニアに拐われ、ミツルの前で犯されて、自分の罪を改めて突き付けられ、ミツルは自分のせいで傷つけられて苦しめられていた。
一度はグロキシニアから助け出され、ミツルのもとに戻っても、絶対に離れるつもりはないとのミツルの啖呵を受け入れることができずにいた。自分のせいで人が死んで、自分のせいでミツルが苦しむ。なのにどうしてのうのうと自分だけが望みを叶えていられるだろうと。
自分はミツルと一緒にいてはいけないのだと確信していた。
だから一緒にいたいと最期に想った。

ミツルの言葉が、ゆかりの赦しが、最期の真城にどれほど届いたか。
それは誰にも分からない。死んだ者はそこで消える。
伝えられなかった想いは誰にも知られることがない。
真城はもう笑わない。幸せになることもない。苦しみもない。

「死なないで」

真城の最期の願いをミツルが守ろうが放り出そうが、死んだ真城には何も伝わらない。喜ばせることも悲しませることもない。
このあとのミツルがどのような人生を生きようが、真城がそれを知ることはない。幸せになろうが不幸になろうが関係ない。
真城のためにできることなど、最早この世界には何一つ存在しないのだ。

ただ、真城は最期に、ミツルの生を望んでいた。
それだけが揺らがぬ事実で、ミツルに残された想いだった。

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いかがでしたか?

いかがでしたか? これが我々の破滅です。
さらっと書くつもりだったのになんか無駄に長くなったな。ここまで読んでくれた人本当にありがとうございます。

ミツルくんはもともと叩いて叩いて私の好きな攻めに仕立て上げた男なんだけどX年後のifミツルくんは私の好きな未亡人のオスになってるから別方向から突き刺さってめちゃめちゃ苦しんでます。どうして?
いや一年後写経が終わった後にさらにifやり始めない自信、ね~~~~!! わからん!!! 先のこと、何もわからん!!!! 気が狂ってま~~~す!!!!

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一年後にまだ我々が気が狂っててまかり間違って人が集まったらやるかもしれん。マジ? いやまず集まらんやろこんなん……。
まあやってもifはifですけどね~セッションでやってもifだよif これ以上はもう何もかもがifです

ありさんに無理矢理アンナチュラル見せたので今度責任取ってひぐらしのアニメ見て思春期特有の根拠のない全能感にズタズタにされてこようと思います。
令和にもなって竜騎士07と向き合うの、ほんとにマジで嫌だな~~!!

明日は私の初TRPGで他のPCが殺されたり逃げたりした中で一人残った少女をバケモノが丹念にゴアする結末をやった名GM、消夢さんの記事だそうです。
楽しみですね〜! お前が種を撒いた人間はいまこのように破滅してます。感謝してるよ(本当ですよ……)。

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