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(元)アブストラクト勢のある頓挫した試み

この記事はアブストラクトゲーム Advent Calendar 2022の17日目の記事です…これでうまくリンク張れてますかね?

初めまして、length(@l_ength)です。
私が過去にハマっていたものにアブストラクトゲームがあります。
当時の私の熱意はなかなかで、中学生でLOGY GAMESのアトリエに通いつめたり、Abstract Strategy Game Societyで自作のゲームを発表したり、nestorgamesのDuplohexをいち早く(日本で初めて?)仕入れて遊んだりしていました。

さて、今のボードゲーム界を見ると当時と比べるとアブストラクトゲームはある程度広くに受け入れられているような気がします。
Nestor Gamesが日本のボードゲームショップで販売されるようになった(その後土嚢シリーズの廃盤という大事件が起こりますが…)り、ゲームマーケット(現在でも行くことは多いです)でも何かしらアブストラクトの注目作品があったり、近年のアブストラクトがダイソーにまで置かれるようになったり、アブストラクトゲームのみを特集するアドベントカレンダーが企画されたり
当時の私が見たらどれだけ喜んだことか!

…ですが、現在(少なくともたった今)の私は当時ほどの熱意を持っていません。特に、ゲーム制作に関してはそもそも当時から得意でなかったものを熱量でねじ伏せていたようなところがあるので手をつける気はほとんどありません。
まあ、それでも、アブストラクトゲームアドベントカレンダー企画の記念すべき第1回目ということで、せっかくなので当時の私が作ったものと、作りたかったものの一つの話をしていこうと思います。最初から最後まで自分語りですが、ゲームルールも少しあるので気になる方は見ていってください。

アブストラクトシリーズの「お手本」、『Yavalath & Co.』

ある程度古くからアブストラクトゲームを遊んでいる者として思い入れが深いゲームといえばやはりYavalathでしょう。
シンプルな駒に少しだけ捻ったルールでここまで刺激的なゲームができるとは…当時の私は大いに衝撃を受けました。
恐らくは他のアブストラクトゲーム作家もそうであったようで、Yavalathに触発されたような、そしてどれも劣らずとも刺激的で面白いゲームが考案され、あるいは見いだされていきました。
それらをまとめてできたような書籍が『Yavalath & Co.』です。

これには15種ものアブストラクトゲームが収録されていて、そのどれもが十分面白く、何よりYavalath1セットのみで遊べるというルール集のお手本のような書籍です。

これに感銘を受けた野心あふれる私は、これに並び立つようなゲームルール集で、しかもそのセレクションに必然性があるようなもの作ろうと計画していたのです…。

Symbol Octology

まず、使うセットは前例に倣ってYavalath1セットとしました。より良いゲームルール集を作ろうと思った私は収録されているそれぞれのゲームが全て異なった特徴を持っている方が良いと考えました。そこですぐに思いついたことはゲームの性質を列挙してそれぞれを満足する/しないものをすべて集めるというものです。
そこで私は駒の物理的な特性に注目して次の3個の性質で考えることにしました。

  1. 赤駒を使う/使わない

  2. 駒を動かす・取り除く/動かさない

  3. 駒を重ねる/重ねない

この三要素はどれもゲームの紙ペン性を決定づける要素です。それぞれの性質を満たしているものほど紙ペンで遊びづらく、駒を使うゲーム特有の感覚を味わうことができるはずです。

そして、それぞれの性質を満たしているか否かで、例えば赤駒を使わず、駒を動かさないが重ねて置けるゲームなどの2^3=8種類のゲームを遊べるようにすればよいのではないかと考えました。そして、それらをまとめ上げるためにゲーム名をすべて記号1文字(これは個人的な趣味です)にして、ゲームシリーズ「Symbol Octology」を製作しようと思いました。

100ゲーム「∴(therefore)」

さて、これからゲームの中身を見ていきます。各ゲームにはそのゲームがどの性質を満たしているのかを表す符号(例えば前述の「赤駒を使わず」、「駒を動かさない」が「重ねて置ける」ゲームは001ゲームと呼ぶ)とゲームタイトルを表す記号(と読み方)が付いています。

最初に紹介するのは100、つまり赤駒を使い駒を動かしたり重ねたりしないゲームの∴(therefore)です。このゲームはSymbol Octologyを考える前に思いついたゲームで、原題は「Trilath」…まあ要はYavalath(ルール的にはどちらかというとManalath?)に強い影響を受けたゲームです。

∴のルール

  1. 最初、ボードには何も置かれていません。適当な方法で自身の色(白または黒)とスタートプレイヤーを決めます。

  2. スタートプレイヤーから交互に自身の色または赤の駒を1個空きマスに配置します。

  3. 同色の駒が連結してできる塊をグループと呼び、それを構成する駒の数をそのグループのサイズと呼びます。ゲーム中すべてのグループのサイズは3以下でなければなりません。

  4. 自身の手番終了時に自身の色または赤の駒を連続した直線状に5個以上並べたプレイヤーの勝利です。

  5. 合法手が存在しないプレイヤーは負けです。

これはASGSや土嚢の会などでテストをして頂いて好評だったゲーム…と同じルールのはずです。(微妙にバリアントというかブレがある)
Yavalath系統と同様に配置制限で追い込んでいくのですが、赤駒だけが共通なので地味に赤駒を余計な所に置くことで阻止できたりできなかったりします。慣れてくるとボードが結構埋まるので自身のみが置けるマスを増やすのも重要かもしれません。

000ゲーム「>(greater-than)」

次に紹介するのは000ゲームの>(greater-than)です。最もシンプルな性質を持った000ゲームの代表となる作品は可能な限りルールもシンプルであるべきでしょう。

>のルール

  1. 最初、ボードには何も置かれていません。適当な方法で自身の色(白または黒)とスタートプレイヤーを決めます。

  2. スタートプレイヤーから交互に自身の色の駒を1個空きマスに配置します。

  3. 自身の手番終了時に自身の色の駒を連続した直線状にその列の過半数並べたプレイヤーの勝利です。

  4. お互い駒が無くなった場合は後手の勝利です。

要するに列に応じて勝利に必要な駒の数が異なる(端から3,4,4,5,5,5,4,4,3)ということです。この性質からボードの周囲から埋まりやすくなっており、ヘックスボードである必然性もあってこのアイデア自体は個人的にはなかなかよくできていると思っています。(Majoritiesとかで近い考え方はありますかね?)
どうしても先手有利で、引き分け盤面で後手勝利ですがおそらく先手必勝でしょう。パイルールの使用を推奨します。

動かなくなる駒

ここまで調子よく収録ゲーム(?)を発表していきましたが、ここでタイトルにもあるように計画は頓挫しました。
理由はシンプルで、考えるのに疲れたからです。ついでにテストプレイするのも疲れました(友人が少ないので)。
まあ、もっと具体的に言うと、そのゲームがその仕様である必然性を感じるようなゲームが思いつかなかったからです。
どうしてもYavalathに引っ張られるのかルールを単純にしたがるようで、気付いたらルールが減っている(動かせる駒がいつの間にか動かせなくなっていたり…)ことが頻発しました。連珠系にこだわっていたことも原因の一つでしょう。そうして100ゲームあたりが複数できてしまった(これらのルールも気が向いたら公開するかもしれませんね。ほとんどは調整中のままですが…)ぐらいでルールの制約がむしろ邪魔に思えてしまいました。
そこからもゲームを考えることはありましたがSymbol Octologyについて考えることは少なくなっていき、次第に忘れ去られていきました。
そのまま(元々飽き性なのもあって)アブストラクトゲーム全体からも離れていき…現在に至ります。

終わりに

…という訳で、ある若きアブストラクトゲーム勢が無謀な夢を抱き失敗するさまを書いていきました。せめてもう1ゲームぐらい作れれば説得力もあったのですが。
今はもう新しく何かを考える気はありませんが、しかし、上記のような性質を持ったルール集が生まれてほしいという気持ちはあります。正直言って失敗した理由は自分自身でゲームを作ろうとしたからで、このアイデアだけ提案して中身はもっと優秀なアブストラクトゲーム作家に考えてもらえばもっと簡単に、より質の良いものができるのだろう(そもそも分類方法ももっと良いのがありそう)とか思っているのですが、私はそこまで偉くないし、偉くなる気もないので、とりあえずはここに書いて放り投げておくことにしておきます。この記事がより意欲のあるアブストラクトゲーム勢の糧となってくれたら幸いです。

001ゲーム「¦(broken bar)」

…と書いたのですが、記事を書いている中で新しいゲームのアイデアが浮かんだので書いておきます。ゲームを思いつくかどうかはゲームに長時間触れている(触れていられる)かどうかも大きく関わっているのでしょうね。
仕様は001ゲームの、¦(broken bar)です。タイトルは仮題です。全部仮ですが。

¦のルール

  1. 最初、ボードには何も置かれていません。適当な方法で自身の色(白または黒)とスタートプレイヤーを決めます。

  2. スタートプレイヤーから交互に自身の色の駒を1個配置します。通常は空きマスにしか配置できませんが、相手の勝利(後述)を阻止できるような場合に限りボードに置かれた相手の色の駒の上に置くことができます。駒は2段までしか重ねることができません。

  3. 自身の手番開始時に上から見て自身の色の駒を連続した直線状に3個並べたプレイヤーの勝利です。

ゲームとして成立しているかはテストプレイをしていないのではっきりとはわからないですが、奇妙な性質を持っています。
まず、通常の3目は必ず阻止することができます。そのため2段目に駒を置くことで3目を完成させたいのですが、それができるのは相手の駒の上のみです。そのためにうまい位置に相手に置かせるというLOTのようなゲームになるような気がします。

さて、最後に新しいアイデアを発表することになりましたが、とりあえずここらで一旦終わりにしようと思います。これからもアブストラクトゲームの発展を願っています。

…移動操作が本質的に効いている配列ゲームとはどのようなものなのか…羊とペリカンとかを考えると…(続きません)

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