お腹の空いたクモ、あなたは美しいチョウ

ミュージシャンのマッキーこと槇原敬之さんが覚せい剤および危険ドラッグのラッシュを所持していた疑いで逮捕された。

槇原さんは1999年にも覚せい剤、MDMA所持で逮捕されていて、約20年ぶりに逮捕されたということになる。あの頃もCD回収にコンサートツアー中止などの騒動があり、ファンが回収前にCDを買い占めるという現象が起こったため過去作がランキングに再浮上した(今回も同じような状況にある)。逮捕報道と共に使われたのは当時の最新シングル「Hungry Spider」だった。歌詞が薬物使用を思わせると夕方のニュース番組だかワイドショーだかわからない中途半端な民放の情報番組でさんざん報道されていた。ただ世論の多くは今と違ってヘイトまみれとまではいかなかった。なぜなら芸能人の事件的ニュースは他人事であり、今みたいに必死に叩く、血祭りに上げるようなことは起こりにくかった。インターネットというよりもSNSによって社会構造がまったく違う今の日本が形成されているとも言える。

20数年前、田舎の一般的な家庭での会話。テレビを観ながらの夕食中、親が「昔っからいろんな芸能人がクスリで捕まってる。芸能界はそういう怖いつながりがある世界」と言う。繰り返し逮捕ニュースで流される「Hugry Spider」や「どんなときも」に「いい曲をこんなに作っている人なのにもったいない」とだけ言った。

私は「Hugry Spider」の歌詞や曲の持つ幻想的でミステリアスなのにどこか懐かしい雰囲気が大好きだった。覚せい剤匂わせと言われたフレーズは「星のような粉をまくその羽根」だったかな。hideさんが亡くなったときもテレビでは「ピンク スパイダー」の歌詞を用いて「もうだめだ 失敗だ」を強調していたが、曲は遺書などのツールじゃないのです。そういうテーマだったり、病床で書いた遺作というならわかるけど。奇しくもスパイダーつながりで妙に蜘蛛の思考回路を覗いてみたいと思ったものだ。

今回の逮捕は2年前の容疑らしいのでまだどうなるかわからないけど、槙原さんが音楽を続けるのが苦痛でないならこれからも作品を生み出してほしいと思っている。やっぱり何度聞いても「Hungry Spider」はいい曲だ。ちなみにASKAさんの「ID」も覚せい剤チックだと言われることがあるが、そもそもASKAさんは作詞に時間をかける方で、楽曲には言外にいろんなほのめかしがあるらしく、ミスリードを生みやすいようだ。最近の曲はストレートな印象です。何せものすごい表現力のあるボーカリストなので、ライブを見たことない人は死ぬまでに1回は見たほうがいい。マイクいらないんじゃないかと思うほどの声量なのだ。

ヤフコメとTwitterリプ欄が地獄絵図になってるだろうからそれにも触れつつ書こうかな思っていたが、途中で調べてみたところ、そんなに槙原さんにヘイトや暴言を向ける人がいなかった。ちゃんと見てないからだけどそんなあら探しを一生懸命やるほど国会審議のような非生産的なことはしないのでこれで終わります。

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