3年越しの約束を果たすとき

SOUL LOVE

客電が落ちた後に響き渡るのは、興奮に満ちた歓声ではない。手拍子の音。コロナ禍で定着してしまった悲しき光景。
それが、今回ツアーから解禁になったことは、日常のライブに向けての大き前進と言えるだろう。そして、「声出し解禁」が齎したのは、日常への大きな一歩だけではなく、3年前の約束の実現でもある。

遡ること3年前。まだ、デビュー25周年の集大成としての東京ドーム公演の中止が発表される前のこと。世界がコロナの脅威に晒される中、日本はまだそこまで深刻さを捉えきれていなかった時期に、HISASHIがSNSで「東京ドームで「SOUL LOVE」を全員で歌おう」と提案したことで、一気に「SOUL LOVE大合唱企画」がファンの間に拡散した。これ、HISASHIが提案したことにも大きな意味というか、意外性というかがあり、GLAYとファン全員の大きな目標ができた。
ただ、コロナの脅威は拡大の一途をたどり、東京ドーム公演の約2ヶ月前に中止が発表され、「SOUL LOVE大合唱企画」は幻に終わった。

GLAYの歩みがコロナ禍で止まってしまっていたら、「SOUL LOVE大合唱企画」は本当に幻となっただろう。しかし、GLAYは「解散しないバンド」「約束を守るバンド」としての定評がある。ファンも東京ドームでは叶わなかった目標が、そのままで終わるともおそらく思っていないだろうが、声出しが解禁となったハイコミツアーのアンコールで、3年越しの約束をしっかりと果たしたのである。

「SOUL LOVE大合唱企画」にて、すっかりみんなで歌うことが定着した「SOUL LOVE」だが、もとはそこまで目立つというか、同時リリースした「誘惑」の影でひっそりしているような楽曲だった(と思う。自身は大好きな曲だが)。とは言っても、ミリオンは超えているし、この楽曲がバンドでコピーした初めての曲ですなんて話もよく聞く。
先日は、勤務先の人生の先輩(GLAYファンではない)から、「SOUL LOVEのMVが好き」なんていうコメントがあったが、MVでのメンバー同士の仲の良さが伝わりまくる微笑ましいMVだという声が一般的だ。
ただ、売上もライブでの演奏回数にしても、圧倒的に「誘惑」なのだ。

しかし、HISASHIの件の発言から、ファンは「SOUL LOVE」の見直しにかかったのではないだろうか。何より、自身がそう。合唱のために、歌詞の確認をはじめ、歌詞を覚えるために改めて歌詞をじっくり読んでみたら、以前とは180°異なる解釈だったとか、そんなことはよくある話。音楽は映像だが、その映像は時に最新版に上書きされて行くのだ。

ウィークリーのシングルランキングで1位を取ったことがない楽曲の中で、最も売れた楽曲が「SOUL LOVE」だそう。そんな記録はとるに足りないもので、アンコールのMCの後にTAKUROのギター始まりのイントロが響き、それの流れに乗ったJIROのベースが彩りを加えると、それだけで胸がいっぱいになる。会場に向けられたマイクにマスク越しに必死に歌詞をなぞり歌いながら、涙腺が完全に決壊したことは言うまでもない。

実に3年越しの約束を果たした瞬間。でも、GLAYにとっては3年と言う月日はそこまで長くないのかもしれない。今回のツアーで十数年ぶりに訪れた会場や街もあった。その地でも必ずTERUは「また帰ってくるから」「いってきます!」と約束をした。何年越しの約束になったとしても、それを守るために、すでに5年後くらいまでのスケジュールが既に決まっているというGLAYというバンドの堅実さに、ファンでよかったと思わずにはいられない。

↑見よ、この楽しそうな4人を。

↑75,000人が歌うとこうなります。


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