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深夜1時、防波堤で。

桜の花びらが落ちきって、新緑まばゆいこの季節。

朝晩はまだひんやりするくせに、すこしずつ湿度を帯びてくるこの絶妙な季節が歳を重ねるごとにすきになってきました。

ここ数年は地方のド田舎暮らし。カエルのけたたましい合唱と、ジーっと羽音のするなんだか怖いよくわからない虫たちが元気。玄関先で力尽きた、いろいろな生物たちをほうきで掃くことも日々の当たり前になっています。

この季節を好むようになってきたのは何故だろうと考えたところ、理由は黒川温泉で体験した夜にありました。

黒川温泉にある茅葺屋根のバス停を見上げた初夏


暮らしのなかで明らかに空気のにおいが変わったことに気付いて四季の間(あわい)に自分がいることを実感した瞬間、湿気大敵だった私が雨をすきになってしまいます。
季節の移ろいに意味を見い出せた気がしました。
ちぐはぐに田植えの終わった田園にうつる月夜や、山から聞こえる野鳥の種類が変わること、雪解け水と気温の上昇により山菜はピーク時期を迎えて食卓がいつもより賑やかになるし、深い霧に包まれる感覚も心地が良かった。

きょうは休日で、商店からの帰り道に低い雲間をみつけて思わず写真を撮りました。この島で初めてみつけた、しっとりした景色。大切だった人を思い出すかのように、いつかの大観峰からみた景色に想いを馳せたりします。


2022/5/13 崎地区からの帰り道

この時期はどうしたって夜型生活になってしまいます。22時ぐらいからドライブしたくなって仕事おわりに島を半周してみたり、港に駐車して途中だった本を読みすすめたり。今夜も出掛けたいなーと思っていた先日、島に住む同僚のSNSで「岩壁呑みなう」の投稿を発見。行きます、の返事と同時にいただき物の茶葉を片手に車を走らせていました。

付け加えるとこの時期の夜、実は人にも逢いたくなるんです。
誰かと一緒にいたい欲がぐっと高まるので、本来は約束というものが大の苦手なのに、この時期に限ってはフットワークの軽い自分が表出してきます。自分のことをつくづく動物的だなとおもいます。

2022/5/11-5/12 ほろ酔いのふたりに茶葉で合流

オープニングスタッフとして入社して1年経ったいまってどう?から始まり、
どんな働き方がしたいのか、仕事や生活でたのしい場面はどこか、このさき我々は各々どこにいるのか。
実はEntôのなかで以前からしっかり向き合って話してみたかった2人だったので、調子に乗って色々と素朴な疑問も投げてみるという、わたしにとっては贅沢な対話の時間になりました。

Entôに所属を決めた理由はいくつかあって、代表の青山さんそのものが面白そうだとおもったこと。この人と一緒に観光を見つめ直したいと直感で決めているところがありました。
もうひとつ更に大きかった理由として、海士町リモートトリップの存在がありました。
「ここに出てくる、いま目の前に居るほろ酔い状態のあなたのファンになったからだよ」という話をやっと本人に伝えることができた夜でもありました。これは本人にだけ伝わればいいと思っていたし、本人に言うまで大切にとっておきたくて誰にも伝えていない大切なわたしの気持ちだったのです。


中村旅館の動画は、何度も繰り返しみていました。島で唯一のホテルが、これから観光再出発の場所として、自分で選んだけれど自然なことのようにも思えるような不思議な感覚がありました。
海士の観光に携わるひとたちの熱意や「伝えたい」が、こんな短い動画から溢れ出すほど伝わってきて、もう一度観光に携わって考えたいと転職早々に燻っていたわがままな私だったのに、そこからたった数ヶ月でこんなに温かい場所や人ともう出逢えたのかという驚きと嬉しさで、動画を見つめるパソコンの前でひとり泣いていたのを思い出します。ちょっと変態ですね…笑

「なんで海士町では磯の香りがしないん?」
わたしがなんの気なしに、ほろ酔いの彼女に尋ねると「もう島の人やのにあんた、観光客のひとみたいなこと聞くなぁ!」と軽く叱られ、なぜか嬉しかった、そんな数日前の深夜でした。

次はあの場所で朝日を迎えたいと目論んでいます。


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