うっかり同人誌が母校の図書館に所蔵されてしまったklis08の話

はじめに

 本稿はklis Advent Calendar 2021(https://adventar.org/calendars/6617)の一部として執筆しました.

 こんにちは.klis08のきゅんです.10年も前に学生だった人間が本アドベントカレンダーに混ざるのもどうかと思ったものの,枠に空きがあるようだったので1枠いただきました.

 さて,われわれklis08は(真っ当に4年で卒業していれば)2022年3月で卒後10年となります.そこで卒後10年の記念として,同級生有志で「卒業後文集」という同人誌を制作しました.

 ……そしてうっかり図情図書館に収蔵されてしまいました.

 ということなので今回は本誌の紹介をしつつ,執筆の経緯,そして図書館収蔵が決まった際の執筆陣の阿鼻叫喚っぷりの話をしていきます.なお,以降は常体で筆を進めるのでご容赦いただきたい.


自己紹介および制作の経緯

 まず自己紹介から.本稿筆者のきゅん(@heart_kyun2)は2008年知識情報・図書館学類入学.その後クラ代を辞めたり文サ館に居着いたり単位を落としたり卒論を落としたりつつ,5年と数か月かけて大学を卒業.

 つまりまだ卒後10年経っていないわけだが,それはそれとして話を進めよう.卒後8年強が過ぎた現在は,某医学系出版社にて学術系雑誌の編集者として働いている.自分の卒論も満足に書いていないのに諸先生方の原稿に朱を入れるのは若干の後ろめたさもあるものの,大きなトラブルもなくここまで過ごしてきた.

 さて.そんな私が制作している雑誌だが,学術寄りの雑誌なので仕方ないとはいえ,まぁレイアウトがおもしろくない.というか硬い.もちろんレイアウトはある程度編集者の裁量で決めているものの,それは雑誌としての品格や執筆者の意向の範囲内.思い切って遊ぶようなレイアウトはなかなか難しい.

 普段ガチガチの縛りのなかで雑誌・書籍を作っているし,たまには自分の好き勝手なコンセプトで本を作りてぇ…….しかし好き勝手に本を作りたいものの,自分で丸々一冊分の文章を書ききれるとは思えない.ということで「卒後10年」を言い訳に執筆者を集めだしたことが本誌制作のはじまりだった.

 幸い自分含め17名の同級生が執筆に名乗りを上げてくれ,「卒業後文集」の執筆・制作が始まった.

 11月の文学フリマ(文芸誌版のコミケのようなもの)に向けて,みな仕事や子育て等で多忙ななか,素晴らしい原稿を上げてくれたと思う.

 ちなみに本誌の編集方針としては,編集者(私)からは大きな間違いと語句の統一のみ提案し,それ以外はすべて執筆者の自由ということで制作を進めた.

本誌の紹介

 さて.ここで少々本誌についての紹介をさせていただきたい.

 とはいえ,本誌の概要については「はじめに」や目次を見ていただいたほうが早いだろう.抜粋して以下に掲載する.

はじめに

はじめに

もくじ

もくじ

 いずれも力作揃いではあるが,このなかからいくつかをピックアップして紹介しよう.


頼む、本を出してくれ/びよ

 「はじめに」のなかでも挙げたが,大変素晴らしいメッセージを投げかけてくれる.

 前回(?)の文学フリマに初めて出店したびよ氏が,創作をするなかで気づいたこと,創作することへの思い,そしてこれから創作をする人への思いを綴っている.

 これについては具体的に解説を上げるのも野暮なほど,心に沁みる文章なのでぜひ手にとっていただきたい.なんと図情図書館に行けばただで読めるらしいですよ.


大学時代に取ってた授業の振り返り ver. 10 年後/館・南

 本稿執筆者の館・南氏と私は犬猿の仲(だと思っている)なので大変癪だが,それはそれとして氏の文章は頭ひとつ抜けて面白い.まったく気に食わない.

 本稿は,08年度入学の館・南氏が当時のシラバスを読みつつ記憶を紐解き,全講義のレビューを行っている.レビューとはいっても,そこは10年以上前に受けた講義.あまりはっきりと記憶に残っていない講義もあるものの,読んでいると当時の思い出が蘇ってくる,「卒業後文集」らしい一作となっている.

 当時の思い出や裏話などを奇譚のない文章で描いており,ぜひ4月前に多くの学生によんでいただきたい.もし本稿を学生向けに配布したい場合,協力しますので私(@heart_kyun2)までご連絡ください.執筆者はこちらで説き伏せます.

 Twitter等の反応を見ると,われわれ古代klisが受けた講義と現代klisの講義では違いもあり,今はなくなっている科目もあるようだ.もし失われた科目に興味がある方は,過去のシラバスを漁って教科書に指定されている本を図書館で探してみてほしい.

 加えて,館・南氏の『腰掛けSEのすすめ(女性向け) 〜SE になろう! そして辞めよう!〜』も,SEを希望している学生諸氏にはぜひ読んでいただきたい一作.「女性向け」とあるものの,男性が読んでも楽しめるし,なんならSEでない男性のほうが高みの見物気分で楽しく読めるかもしれない.

 『SE』は本誌のなかで唯一,編集者が「これはさすがに過激だから直そうぜ」の提案を入れたパンチのある文章に仕上がっている.これ母校の図書館に入れて大丈夫か?


2 年しかいなかった春日の話/さとお

 本誌執筆陣のなかで唯一の3年次編入生のさとお氏による,東北の短大から知識情報・図書館学類に入学するまで,そしてその後の話.

 東北という地方のせいか,執筆者の筆力か,大学に編入するまでのもの寂しさが滲み出てくる大変いい文章.原稿整理の段階で,他の執筆者の原稿は1回読んで終えたが,本稿だけは2回読んでしまった.

 文章からはもの寂しさが滲む反面,執筆者のさとお氏の図書館学にかける情熱も感じられる.学生当時はさとお氏も留年したとだけ聞いていたので「俺と同じダメ学生だったか〜」とか思っちゃってごめんね.違ったね.

 現在の3年次編入の制度がどうなっているかわからないものの,編入を考える皆様にはぜひ読んでいただきたい.図情図書館で読めます.オープンキャンパスの際にでも,ぜひ手にとっていただければと思う.


子育てと家事と仕事と私/ポチ

 なんだかんだ,本誌の中では本稿が一番「10年という時間」を感じる内容となった.

 仕事・家事・子育てを(おそらく)平均水準以上のレベルでこなしているポチ氏による近況報告.

 学生時分は他人のベッドの上で飛び跳ねるからと言って宿舎の部屋から締め出されていたポチ氏が,卒業して仕事,結婚,子育てをしていくなかでこんな人間になるなんて誰が想像できただろうか.

 大学卒業後の子育て,仕事,個人の時間を考えるうえでぜひご一読いただきたい.


婚活なんてうまくいってないときが一番楽しいし、あの葡萄はたぶん酸っぱい/きゅん

 最後に,手前味噌ながら私の寄稿文を.

 これについては百万言を尽くすより読んでいただいたほうが早いと思うので,以下に全文を掲載する.

きゅん

 やっぱ単位落とす人間は原稿も落とすわ.

 学生諸氏,できるだけ単位は落とさないようにしていただきたい.

 でも仕事じゃない原稿は気軽に落とせるから素晴らしい.

 普段の仕事で原稿を落としそうな先生方に伝えていた言葉が全部自分に跳ね返ってきて辛かったという面はある.


文学フリマから図書館収蔵まで

 さて.そんな素晴らしい作品をまとめた本誌だが,(私の落とし癖を乗り越えて)無事印刷所へ入稿し,文学フリマ当日を迎えることができた.

 実物の書籍はイメージしていたよりも良い出来で,この時点でかなり満足度は高かった.しかしいくら出来がいいとはいえ,正直内輪向け100%の同人誌.あまり当日販売には期待しておらず,50部印刷したうちの10部も動いてくれれば万々歳.残りの部数は執筆者に買い取らせようと思っていた.

 だがフタを開けてみると,当日で50部がちょうど完売.

 直前の告知であったにもかかわらず,Twitterを見て購入を決めていただいた方や,klisOBOGの方々,旧図書館情報専門学類の方,先生からのお使いできてくれた学類生(!)の方,たまたま通りかかってデザインを気に入ってくれた方など,多くの方に買っていただいた.

 これは普通の出版をしているだけではちょっと得られない感動だった.自分が自分の裁量で作った本を目の前で買ってくれる.ちょっと身震いした.この体験はいいぞ.みんな,頼む、本を出してくれ.

 当日はいけぴ将軍(@general_ikep)先生も来てくださり,2部購入をしていただいた.

 この時点で,「ああ,1部は先生の中で回覧されそうだな」と思っていたが,まさか母校の図書館に入るとは……

 図書館への収蔵決定前後の執筆者陣の阿鼻叫喚っぷりを,執筆者Slackから一部引用して紹介したい.

「凄腕編集パワーで今からでも匿名になりませんか?」

「リジェクト大明神に祈るしかない」

「執筆者一覧を意図的に破損させて怒られが発生vsシンプルに内容を読まれたうえで怒られが発生 どっちがましかかなりどっこいどっこい」

「執筆者一覧だけ差し替えた2版をこっそり作って入れ替えるか……?」

「館・南のページがコピーされてシラバスと一緒に新入生に配られる!!」

「図書館員が収蔵をためらうくらい面倒な体裁の本にすればよかった」

 おおよそ元図書館情報学徒とは思えないフレーズだが,それほど大騒ぎだった.


おわりに・告知

 ともかく無事図書館に所蔵され,われわれの同人制作は一段落となった.

 最後にひと騒動あったものの,本当に楽しかった.好き勝手に本を作れるのって最高.みんな騙されたと思って同人誌を作ろう.楽しいぞ.

 さて,そんな「卒業後文集」ですが,発注分の50部は完売したものの,印刷時余剰分が若干手元にあります.購入希望の方は送料込み1,500円で販売いたしますので,きゅん(@heart_kyun2)までご連絡ください.

 執筆陣各位,また本作ろうな.

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