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ボクとキミのロードショー

〜上映〜

校庭にボクはひとり。

走り出り出した白線の外側を、いつものように駆け抜けた。

そんなボクは、陽気に見せ物をするマジシャンのようだ。

そんなことは誰も知らない。


今日もキミは、いつもと同じ時間に笑顔で登校してきた。

キミは、ボクのところへタオルとお水を持ってきて”こう言った”

「先輩。今日もお疲れさま。」

溢れんばかりの笑顔と、田中みなみのような可愛い声

ボクは「いつもありがとう」とキミに返事をした。

キミが、学校に入るのを確認し

タイムをはかりに校庭へ出てきた先生を横目に

よし、「今日の練習もおーわり」と力を抜いた。

ボクは、「キミに夢中なんだ」
理由はわからないけど。

ただキミを見るとドキドキすること。

キミに目を奪われてしまうことだけは確かだった。


3時間目の授業は、体育祭の予行練習。
ざわめくグランド。にぎわう”くうき”たち。

なんとなくキミと目があったような気がした。

キミはそんなつもりじゃないだろうか?

でもボクの心は、キミしか見えないし
キミに見惚れてしまっている。それ以外のやつは”くうき”だ。

誰にも悟られないようにと思いながらも

ついついキミをみてしまうボク。

今にも飛び出しそうななにかが、ボクの胸を突き抜けていた。
この思いをキミに受け止めてほしかった。


朝何となく、キミから挨拶をされた。

先輩、おはよう!!

ボクは突然のことにびっくりし、童貞のような顔で

「おっおはよう…」なんて挨拶を返した。(童貞だったけど)

まさに「デビュー作で初めてモノが出ていた時の女優の顔」のようだった。

どうしていいかわからないこの変な感情。

ただ一つだけ言えることは「挨拶だけで幸せ」だったということ。

ボクの頭からキミは離れないけど、目をみて話すことはできないという
変な矛盾を感じながらも、今日という一日が最高に幸せなことを感じた。


キミから突然のメール。

今度デート行きませんか??

どんな風の吹き回しだろうか。

でも

「神様ありがとう」

今なら、大好きなお肉を1年間我慢します。
なんて独り言を言いながらも、心の溢れんばかりの肉汁に感動した。

その日からメールは何通か続いた。

DEEPの「SORA」の着信が流れるたびに

「キミからのメールかな?」

なんて、胸のドキドキがおさまらなかった。

件名:「明日、近くの公園で野球しようよ‥」

「なんだお前かよ」

なんてなることも多々あった。


この時ぐらいからか気づいていた。

ボクはキミのことがめっちゃスキだということ。


今日もボクはひとりグランドにいた。

朝8時前

突然物語はエンドロールを迎えた。

ボクは重要なことを忘れていた。

「キミには実は彼氏がいたんだ」

現実を背けるばかりに忘れていた


キミが彼氏と手を繋いでこっちへ向かってくる

そして、笑顔でキミこういった。

あっ「あの人今日もグランドにいるね」


そうだ

ボクのところへタオルとお水を持ってきたことも

朝突然、あいさつをしてくれたもの

楽しいメールをしていたのも

全部ボクがキミを想うばかりの
”妄想の世界”だったんだ


この日からボクは、今までやっていたマジシャンを辞めようかと思った

頭の中では、エンドロールが終盤にさしかかり

世界がドン引きの、衝撃のラストで幕が閉じた。

こちらとしては「超大作」である。


キミが彼氏と学校へ入ることを確認し

きっと届くはずのない想い
そんな思いを胸に、今日もボクはグランドを走り始めた。

〜閉演〜

「今日もボクは成長した」
「明日もボクは成長する」

ではまた✋




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