見出し画像

踵の”ガサガサ”は身体を硬くする②

前回から引き続き、踵(皮膚)をガサガサにしてしまう原因と、ケアの方法について書いていきたいと思います。

まず、前回の復習も兼ねて、踵がガサガサになってしまうのは、角質層の水分保有量に左右されます。

そして、角質層の水分保有量は、角質への水のイン/アウトのバランスで決定します。

角質に入る水分は、血管内の血液中の水分が「真皮」→「表皮」→「角質」の順に入ったものです。そして、角質から出る水分とは、角質表面から空気中に蒸発する水分のことになります。

このバランスが正常であれば、角質は乾燥せず水々しい肌を保つことができるのですが。角質に入る水分の減少(血流障害、これは皮下組織の筋膜などの凝りなどで起こると考えられます)、角質から出る水分の増加のどちらか、または両方により肌は乾燥するわけです。

画像1

石鹸やボディーソープで皮膚を乾燥させている

今では、当たり前のように毎日お風呂に入り、身体を洗っている生活をしている人が多いと思います。

しかし、それは科学的に正しいのでしょうか?

もともと「日本人は風呂好きで清潔好き」というのは実は間違った認識で、日本人が毎日お風呂に入るようになったのは、高度経済成長期後半の1970年に入ってからです。

それ以前には、毎日お風呂に入るなんて習慣も、住宅環境も、インフラも存在していませんでした。

生活環境が変わり、毎日お風呂に入り、石鹸やボディソープで身体を洗うようになった日本人ですが。そもそも、身体の汚れを落とすのに石鹸もボディソープも必要ありません。

むしろ、それらを使って身体を洗うことで皮膚を乾燥する状態へ、自ら導いているのです。

そもそもなぜ、毎日お風呂に入り、身体を洗うようになったのでしょうか?それには、アメリカの影響を強く受けているのだと考えられます。

清潔がステータスになる

画像2

建国当時のアメリカでは、ヨーロッパと同様にお風呂に入る習慣は根付いていませんでした。そんな習慣を変えるきっかけになったのが、南北戦争(1861〜1865年)です。

なぜ戦争がお風呂と関係あるのかというと、南北戦争では戦死者よりもケガによる病死者の方が多かったからです。そんな悲惨な状況で、傷口を洗うことで病死者を大幅に減らせることがわかりました。

戦争終結後、故郷に戻った兵士たちは、家族に洗浄と清潔の重要性を伝えます。広大な土地にゼロから街や家を作ることができたアメリカでは、家庭に水道管が敷設(ふせつ)できたため、浴室を備えることが流行しました。

貴族階級や由緒ある旧家が存在するヨーロッパでは、相手の社会的ステータスを、衣服や装飾品、言葉遣いで判断します。しかし、貴族制度も階級制度もないアメリカでは、それができない代わりに「清潔さ」がステータスとなったのです。

つまり、相手が小綺麗な格好で、垢などの匂いなどがしなければ、信用していい相手だと考えるようになったのです。

ちなみに、アメリカの「真っ白な歯」も同じ理屈です。ヒトの健康な歯牙(しが)は、やや黄ばんだ状態が正常です。しかし、アメリカでは「真っ白な歯にしなければ不潔」と様々な医療行為や美容行為が横行しています(今は日本でも増えている)。

そんなアメリカの影響を強く日本人に与えたのは、テレビでないかと考えられます。1950年代後半から1960年代にかけて、日本のテレビ番組の定番はアメリカのホームドラマでした。

『パパは何でも知っている』『名犬ラッシー』『うちのママは世界一』『奥様は魔女』

ドラマを通して、豊かで便利なアメリカの生活に触れ、清潔感溢れる生活(毎日お風呂に入り、石鹸で身体を洗うなど)に憧れるようになったのだと考えられます。

石鹸はなぜ油汚れを落とせるのか?

画像3

そもそも石鹸は、なぜ油汚れを落とせるのか、わかりますか?

それは石鹸が「界面活性剤」だからです。

画像4

図にあるように、界面活性剤とは、疎水基(油と親和性のある部分)と親水基(水と親和性がある部分)の両方を持つ分子で、水と油を均一に混合させることができます。

水と油は、本来なら混じり合いません。小皿に「醤油」と「酢」と「ラー油」を入れたところを想像してください。醤油と酢は親水性なのでよく混ざります。しかし、ラー油はいくらまぜても上手く混じりません。

ところが、酢と油に「卵黄」を加えると、本来は混ざることのない両者が上手く混じり、ペースト状の物体ができます。これが、皆さんが好きなマヨネーズです。

卵黄にはレシチンというタンパク質に界面活性効果があり、酢と油を一体化させ(これを乳化、ミセル化と言います)、クリーム状のマヨネーズに変化させたのです。

このように自然界には、様々な天然の界面活性効果のある物質があり、下の表のように様々な目的で利用されています。

画像5

これらの機能をさらに強化するために、工業的に合成されたものが合成界面活性剤です。なかでも、乳化作用(=油汚れを落とす効果)に優れた合成乳化剤が合成洗剤で、シャンプーやボディーソープなどがこれに当たります。

これは、油汚れを落とすのに特化した合成界面活性剤であり、天然成分から作る石鹸よりも強い洗浄力を持っています。

そもそも身体を石鹸やボディーソープで洗う必要がない?

画像6

人間は、習慣的に身体を合成石鹸で洗っていますが、果たしてそれは科学的に必要なのでしょうか?

その理由は、以下の2点です。

①皮膚の分泌物は皮脂を含めて水溶性物質である。

②皮膚常在菌は嫌気性菌(けんきせいきん)である。

一つずつ解説していくと、まず頭皮を含め皮膚から分泌される物質は基本的に水溶性で、皮脂もミセル化して分泌されるため、水で洗い流せます。まして、お湯などで洗えば簡単に洗い流せます。

皮脂以外の油、例えば自転車のチェーンを触ってしまった、ラー油が手についたなどの汚れは、界面活性剤でなければ落ちません。

次に②ですが、人の皮膚にはそれぞれの場所に、常在菌が存在します。アクネ菌など、ニキビ関連で聞いたことがある人がいると思いますが。(実はアクネ菌はニキビの原因ではない)

常在菌については、この場で深く話してしまうととても長くなるのでざっくりにしますが、私たちの皮膚や身体の中には、常在菌がいて共生関係にあります。そして、その常在菌がいるおかげで、外からくる外来性細菌の侵入を防いでくれています。

例えば、私たちの皮膚をマンションに例えると、そのマンションにはすでに常在菌が住んでいるため、部屋が埋まっています。その状態だと、外から新たに菌が住み着くための部屋がないのです。逆に空室があると、そこに外来性細菌が住み着いてしまいます。

この共生関係のおかげで、私たちの皮膚や、身体の健康は保たれているのです。

そして、その皮膚常在菌は嫌気性(けんきせい)といって、酸素に触れると活動を停止してしまいます。だから、アクネ菌は毛孔の奥にいるし、その菌を守るために皮脂を分泌して角質表面をコーティングしているのです。

そんな私達を守ってくれている常在菌を、界面活性剤で脂・油を落とし、過剰に乾燥した状態にしている。つまり、ボディソープなどでゴシゴシ洗うことで、常在菌を酸素に触れる機会を多く作ってしまい、外来性細菌が繁殖しやすい環境を作ってしまっているのです。

自然界にいる生物が、どれも水浴び程度で健全な皮膚を保ってられるのはそのためです。

つまり、科学的には石鹸やボディーソープで身体をゴシゴシ洗う必要性はないと言えます。

保湿クリームという名の乾燥剤

画像7

踵のガサガサも、その他皮膚の乾燥もケアには「保湿クリーム」をまず検討すると思いますが、実はこれは逆効果をもたらしている可能性が高いです。

あなたが使ってるハンドクリームも、ボディークリームも、肌荒れを悪化させる皮膚の乾燥剤である可能性があります。

どうしてかというと、医薬品・化粧品のクリームは水溶性物質と疎水性物質を界面活性剤で乳化させて作るからです。

皮膚科などでよく処方され、好きな方も多いと思いますが「ヒルトイドソフト®︎(マルホ)」はよく油を落とします。そんなバカな!と思われた方のために簡単な実験を紹介します。

画像8

まず、皮膚に油性マジックで線を書きます、その上にヒルトイドソフトを塗り、ティッシュペーパーなどで拭き取ります。

どうでしょうか?ものの見事に油性マジックが消えます。これは他の市販・病院で処方される保湿クリーム・UVクリームでも同様の結果が出ます。

クリアファイルに油性マジックで書いて、クリームを塗っても同様に検証ができるので、お手持ちのもので試してみてください。同じクリームでも天然の界面活性剤で作られているクリームなんかは、あまり落ちませんでした。(そもそも洗浄力が弱いため)

まとめ/正しい皮膚ケアとは

では、これまでのお話をまとめて、問題点などを整理してみましょう。

まず、皮膚の角質層(角層)は死んだ表皮細胞の周りを脂でうめた、「レンガとモルタル」の構造になっていると前回もお話ししました。

画像9

画像10

この角質層が、正常に機能していれば水を弾き、外来性細菌やウイルスからも身体を守ってくれ、健康を維持できます。

しかし、ボディーソープや保湿クリームなど(合成界面活性剤)で、皮膚表面や角質層の脂をよく落としてしまうと、角質層は薄くなり、常在菌も活動が低下し、皮膚のバリア機能は低下、角質層からの水分の流出が増加…

つまり、皮膚が乾燥するということです。

そして、乾燥するからクリームを塗り、状況を昼ドラの如く泥沼化するわけです。

では、どうしたらいいのでしょうか?科学的には、下記の2つで乾燥肌は改善します。

①身体を必要以上に石鹸やボディーソープでゴシゴシ洗わない。 

(目立った油汚れがなければ、お湯で洗い流すだけで十分です)

②保湿クリームではなく、白色ワセリンやボディオイルを使う。

(ワセリンやオイルをお風呂上がりに乾燥が気になるところに塗り、キッチンペーパーで拭き取る)

男性なんかはめんどくさがりそうですが、そんなにお金がかかるケアではないですし、角質や表皮などは2週間で入れ替わってくるので、1ヶ月ぐらい試してみると変化が感じられると思います!

白色ワセリンも、キッチンペーパーで拭き取ればベタベタは気にならないし、伸びが悪いのを気にされるんでしたらボディマッサージオイルがオススメです。

個人的にはNEAL’S  YARD(ニールズヤード)のボディマッサージオイルは保湿力も、オイルの伸びの良さ、サラサラ感などが良くてオススメです。

https://www.nealsyard.co.jp/onlineshopping/item/list.php?sm_id=104

なんか踵のガサガサについてお話してたのが、いつの間にか皮膚全体になってしまいましたが、ご容赦ください。

今回も長くなってしまいましたが、お付き合いいただきありがとうございした。ご質問などありましたら、気軽にメッセージください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?