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人権教育(HIV感染者等の人たち)

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
(前文から抜粋)我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。
第四条 国民は、感染症に関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、感染症の患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならない。

 HIVはエイズの原因となるウイルスの名前で、エイズはHIVによって引き起こされる病気(23の合併症がある)の総称です。つまり、HIVに感染しても、合併症が発症していなければエイズではありません。かつては感染者の最終死亡率がほぼ100%だったこと、男性同性愛者の間での発症が多かったことなどから、大きな差別意識が生まれました。
(フレディ・マーキュリーが有名ですね。彼自身は同性愛者であったことを公言していません。差別されるからです)

 2018年のデータで、国内の新規HIV感染者は940人、新規AIDS患者は377人。感染者数が少ないのと、感染しても公言する人は少ないので、会ったことある人の方が少ないかもしれません。しかし、知らないことは差別につながります。養護教諭や保健体育の先生だけでなく、すべての人がある程度の知識をもっておきたいですね。


2019年9月17日付「北海道新聞」より
 エイズウイルス(HIV)感染を申告しなかったのを理由に病院が就職の内定を取り消したのは違法として、道内の精神保健福祉士の30代男性が病院を経営する社会福祉法人北海道社会事業協会(札幌)に対し、慰謝料など330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、札幌地裁であった。武藤貴明裁判長は「感染は極めて秘密性が高い情報で、他者に感染する危険も無視できるほどに低い。申告の義務があったとはいえない」として、協会に165万円の支払いを命じた。

 病院が、HIV感染歴のある内定者のカルテを無断で閲覧し、内定を取り消した事件です。専門家が集まるはずの病院ですら、正しい知識が浸透していないというショッキングなニュースです。しかも病院側は人権侵害の誤りを謝罪するのでなく、裁判を戦いました。「悪いことをしたから謝る」のではなく、「悪いこと」を「悪くなかったこと」にしようとしたのです。これは二重の人権侵害といえます。


 こういった事例を「他山の石」とし、考えるきっかけにしたいですね。なぜなら私たちも無自覚のうちに差別意識を持っているかもしれないからです。例えば、自分の子どもがHIV感染者と結婚することになった時、どう考えるでしょう。差別意識はもっていないつもりですが、その時まったく気にしないかどうか、今はまだ断言できません。考え続けていくことが大切だと思っています。
 

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