
これから研究をはじめる実践家のために(随時更新)
【アップデート】
2020/8/23 スコーピングレビューを加筆しました。
2019/4/18 Q&Aを加筆しました。
2018/11/6 Q&Aを加筆しました。
【YouTube開始のお知らせ】
本記事に関連する動画をYouTubeにアップしているので、そちらもあわせてご覧になってください。
【読者層】
本記事の対象は、これから研究したい実践家です。本記事は入門レベルの内容ですが、様々な研究法の概観と選択法を論じているので、特定の研究法しか知らない場合、研究歴があっても新しい視点が増えると思います。研究経験がある人は、本記事を通して様々な研究課題に対応できるプラグマティックなオールラウンダーを目指しましょう。
また内容的には入門レベルなので、以下のような状態の人にもお勧めです。
・研究って何かよくわからない
・実践家が研究する意味を理解したい
・研究にはどんな種類があるのかわからない
・いろんな研究法があるけども、いまいち全体像がわからない
・あらゆる研究に通じる視点を知りたい
・研究法の選び方を理解したい
【この記事の特徴】
・あらゆる研究に通じる原理を理解できます。
・文献研究、理論研究、事例報告、質的研究、量的研究(観察研究、介入研究)、混合研究、尺度研究の概要と選び方を理解できます。
・著者は作業療法研究者ですが、本記事では様々なヘルスケア領域で活用できる内容を書いています。
・内容は適宜アップデートしていきます。
・購入者向けの質問コーナーあり。研究の全体像の俯瞰や研究法の選び方で迷うことがあれば、随時質問を送ることができます。
【注意点】
・noteの仕組み上、払い戻し不可なので、無料部分をよく読み、本記事の必要性を判断したうえでご購入ください。
・本記事は概論であるため、あくまでも研究法全体の見取り図を示しています。個別の研究法で論文を書く方法は、別の記事を購入してください。
・個別の記事としては以下がありますが、本記事の最後に告知しているように今後「これからシリーズ」をさらに増やしていく計画です。
【著者紹介】
京極真(きょうごく・まこと)。博士(作業療法学)、作業療法士。専門は多職種連携、作業療法学、研究方法論。吉備国際大学准教授、Live study副代表。
Researchmap https://researchmap.jp/read0151322/
Blog https://kyougokumakoto.blogspot.jp
Twitter https://twitter.com
Live study http://livestudy.strikingly.com
【目次】
1.本記事の目的
2.研究って何だろう?
3.研究もできる実践家になろう!
4.研究が認められる職場環境を作ろう!
5.あらゆる研究で使える原理
6.各研究法の概要と選び方
1)文献研究
2)理論研究
3)事例報告
4)質的研究
5)量的研究(観察研究、介入研究)
6)様々な研究法の統合(混合研究、尺度研究)
7.関連記事
8.購入者向けの質問コーナー
9.文献
【本記事に関する感想紹介】
**本文**
1.本記事の目的
こんにちは、岡山県の田舎にある吉備団子大学もとい吉備国際大学で教育・研究・雑務に取り組む京極です。聖隷クリストファー大学大学院、香川県立保健医療大学大学院などでも教えています。
この記事は、これから研究したい人が道に迷わないために、研究法の見取り図を提供するために書きました。研究法と一言で表しても、その内実はとても複雑なので、初学者は混乱しやすいからです。本記事ではコンパクトに全体像を示しているので、これから研究を行いたい人に役立つことでしょう。
また本記事は、哲学原理に基づいて様々な研究法の選び方を論じています。研究法は方法なので、目的に応じて柔軟に活用していく必要があります。しかし、実際には自身が馴染んだ手法を中心に活用するという罠にはまりがちです。本記事では様々な目的に対応できる研究力を、初学者の段階から身につけるために、目的に応じた研究法の選び方を論じました。
実践家だからこそ、プラグマティックに研究を遂行する方法を理解しておきましょう。
2.研究って何だろう?
では、研究って何でしょうか??
いろいろな解答がありえるでしょうけども、ぼくは、研究とは「未解決の問題を設定して、共通了解可能なかたちで解くことだ」と考えています。つまり、人類にとって解くべき新しい問題を明確にし、他の人も確かめられるかたちでそれを解決・解消する。その営みが、研究だと思うのです。
そうした問題は、世界のあちこちに存在しています。例えば、我々の研究を通して障害者・健常者にかかわらず生活障害は5つのステージで成り立っていそうだということはわかっていますが、各ステージごとの最適な介入法は未解決の問題です。これはなかなか厄介な問題です。こうした未解決の問題は、医療、保健、福祉などの様々な現場でゴロゴロあります。
ここでいう問題とは、対応が求められる課題です。既に解かれた問題であれば、既存の知識を使って対応できます。ところが、未解決の問題は既存の知識のみでは対応できず、何らかの創意工夫や解決・解消する方法を考案する必要があります。対応が求められる課題の特徴は、放置していたら誰かが困るところにあります。なので、問題にはやっぱり対応できるようになった方がいいわけです。
3.研究もできる実践家になろう!
それはいったい誰がやるのか。
ぱっと思いつくのは研究者です。上記の議論にそえば、研究者とは未解決の問題を設定して、共通了解なかたちで解く専門家です。だから、研究者の役割は普通に大きい。でも、研究者は人材不足なうえに、研究職の確保がめちゃくちゃ厳しいから、現実的制約ですべての問題に対応できない。研究者のみに頼るのは心もとないのです。
となれば、様々な現場にいる実践家が研究できるようになることが、とても重要になってくるわけです。世界は未解決の難題が山積しています。例えば、超有名な少子高齢化ひとつとっても未解決難問です。高齢者関係の現場で働いている実践家は日々その難題に直面しています。現場で働く皆さんが、研究を活用することによって問題解決・解消の糸口をつかんでいく。そういう努力が必要です。
本記事では、実践家自身が研究を遂行することに焦点化しています。だけど、実践家による研究への参加は、これだけではありません。例えば、研究者とコラボレーションする、データ収集に協力する、フィールドを提供する、などなど。実践家が研究に参加するルートはいろいろあります。実践家は自らの置かれた状況に応じて適した方法で研究に参加するとよいです。参加の仕方に優劣はないので、自分にあったやり方で研究に関わっていくことです。
さて、くりんぱっと話を戻しますけども、人類の福祉一般を少しでも向上するために、実践家は実践だけでなく研究もできるようになった方がいい。そう、ぼくは思うわけです。
4.研究が認められる職場環境を作ろう!
実践家が研究を行おうとすると、案外、足を引っ張るのが職場の環境です。
わかりやすいパターンを列挙すると以下のような感じ。
・研究したいなら退職しろ
・売名行為するな
・実践家の仕事は臨床なので、そもそも研究する必要なし
・実践家に研究は関係ないので、うちの職場でなく他の病院・施設でやってくれ
・研究は医師や看護師がやるものなので、他の職種はやらなくてもよい
・勤務時間中に研究するな
・研究なんて無駄やろ などなど
他にもいろいろありますが、職場環境が整っていないとふつーに上記のような批判を受けるものです。特に、あなた以外に誰も研究していない職場環境の場合、「前例がない」という理由で上記のような問題にぶち当たることもよくあります。
こういう批判に対して、ホンネを言うと「寝言は寝て言え」の一言です。けども、だいたいこういうことを言ってくる相手は自分よりも立場が上なので、そう簡単に言えるものではありません。もうちょいうまいやり方を考える必要があります。
では、どうしたらいいか?
実のところ、こうした問題に即効性のある対策はありません。研究が職場の質の貢献につながる、と地道に訴え続ける他ないです。例えば、自分がやりたい研究を行えば、病院・施設に通う患者や対象者にどう役立つことができるのか、研究によって実践の質がどう改善するのか、などについてわかりやすく繰り返し説明し続けるしかないでしょう。
もし、本記事を読んでいる人が研究環境を整えられる権限をもつならば、同僚が実践だけなく研究にも力を入れられるようなシステムを設定する工夫を行ってください。人材育成、社会貢献は組織の基本的な使命です。自らの職場が中心になって発した情報が、世界に貢献できる未来を創ろうではありませんか。
そういう努力をもってしても、「研究したいなら退職しろ」などと言われ、どうしてもやりたい研究があるならば、望み通りに他に移ることも考えたらよいかもです。人それぞれ人生設計があるので、自分が納得できる選択肢をつかむしかありません。
5.あらゆる研究で使える原理
さて、後述するように、研究法には様々な種類があります。その一つ一つに理論や技法があるのですが、本記事には研究法の見取り図を示すというがあるため、まずは、あらゆる研究法で使える原理について紹介します。
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