見出し画像

洋酒コレクターが終活してわかったこと③


 ここで前回の話を整理しておこう。

1. 買取業者に売却
○メリット:比較的手間いらずで儲かる
×デメリット:味見できない
→味見は絶対なので却下

2. 遺品整理業者に依頼
→生きているため却下

3. 縁のあるコレクターに譲る
○メリット:コレクションが生かされる
×デメリット:心情的に意外に難しい
→残念ながら断られた


 いろいろ思いつめた末、次のようなことも考えた。


4. 一部味見して、残りは捨ててしまう
 真のコレクターなら、ボトルと同様に生産者やボトラーズにも愛着を持っているはず。例え”端くれ”であっても私もウイスキーラヴァーズだ。これだけは絶対にできない。自分の筋肉を切り取れというのと同じ。
却下


5. 一部味見して、残りをバーのマスターやウイスキーラヴァーズにあげる
 これも一見良いように思えるが、誰にあげるかとか、それを聞いた誰々がどう言ったとか、残り物なんてどうよとか、遠慮問題とか、私のような取り越し苦労・先回り悩みタイプにはハードルが高すぎる。また、ウイスキーラヴァーズにあげると、既存のバーの売り上げが減ってしまうんじゃないかとか、それも悩みで難しい。
却下


 完全に手詰まり状態、思考は1〜5をグルグル回るだけで一冬を過ごしてしまった。


河川敷と桜


 もう春は始まっていた。


 例の、私のコレクション譲渡を断ったマスターのバーで、挨拶がわりに あれから全く終活進みませんわー、なんて話をしてた。

 会話がちょっと途切れて、

「じゃあ、あんたが自分でやったらええねん。」
「???何を?」
バーよ。」

「!!!無理っしょ!」
「できるって。楽勝や。」

 いつもと変わらない、本気か冗談か全くわからない柔らかい笑顔でマスターが言う。

 私は 全く相手にならんわ、とその話はそのまま終わった。


 私はちょうど、今も続けている本業に腰を据えて取り組み始め、面白くなってきた頃だった。辞める気は更々なかった。                                  

 

 でも。待てよ。
 とりあえず、人から勧められたことはいきなり断らない主義の私。
 とりあえず、バーやってみるって考えられない?


 いやいや、そんなん、素人が無理に決まってるでしょ?

 少し長くなりそうなので、続きは次回に。

よろしければサポートお願いします。いただいたサポートは京都市北大路に実在するバー「京都洋酒研究所」存続のために使わせていただきます。