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Go to キャンペーンは地域のためになるか?

観光業界にとって待望のキャンペーンの業務委託広報がようやく始まりました。旅行需要か増えることで、息を吹き返すことができる人はたくさんいると思うので、基本的には歓迎するべきことだとは思います。ただ、今回は敢えて批判もしておきたいと思います。

直接予約救済はいま必要なのか?

いろんな人の書き込みをみると、キャンペーンによる割引が、旅行会社やOTA経由だけでなく、宿泊施設の直接予約も対象になったことが評価されているようです。過去の同様のキャンペーンのときに、直接予約が対象外であったので、今回改善されたことになります。ただ、それが最も経済効率の良い政策設計であるかどうかには疑念が残ります。

なぜなら、宿泊施設はOTAを利用するにあたり、基本的に最低価格保証契約を結んでいるからです。この契約がある限り、施設側がどれだけ直接予約を増やそうと直接予約価格を下げたところで、必ずOTA予約の方を安い価格にしなければならないので、旅行者側としてはOTAを利用したほうが得だと考えるようになります。そこで施設側は、直接予約することになんらかのオマケをつけたりして、契約に反しない範囲で工夫するわけですが、これにもやはり限界があります。アパホテルみたいに自社の強力な販売チャネルを持っているチェーンならまだしも、個別の施設にとってOTAの優位性を崩すことは極めて難しいのです。

とはいえ、直接予約を対象外にするよりは、対象として認めてあげたほうが良いんじゃないの?と思われる方が多いかと思います。ただ、僕が気になるのは、キャンペーンにおいて直接予約を割引の対象とすることで、おそらく余計な手続きコストが結構かかっているんじゃないかということです。別に外資系のOTAに肩入れしたいわけでは無いのですが、この非常時において、効率の悪い仕組み(直接予約)に対して、税金投入することの妥当性は吟味したほうがよいように思います。(委託費が高すぎるといって批判するならなおのことです)

直接予約は、顧客にその施設へのロイヤリティを高く保ってもらうことによって選択される行動なので、キャンペーンの範囲に含めるようなやり方ではなく、宿泊施設に常連客を作るための支援を別で走らせたほうが、無駄がないのになぁと個人的には思います。

キャンペーンによる送客主導への先祖返り

先程の話と微妙に矛盾するかもしれませんが、キャンペーンによる割引を受けるために基本的にOTAや旅行会社を利用しなければならないようにするということは、送客側に主導権を保たせるということになります。

ここ数年、国の観光政策は地域にDMO作ることで着地側主導へシフトしようとしてきたはずなのですが、今回のキャンペーンはこの流れに逆行するものです。(緊急事態なので仕方ないのですが)

キャンペーンの公募資料によると、DMOの役割は、「地域の事業者にキャンペーン参加を呼びかける」って書かれてますが、このあたりの設計にもうひと工夫あってもいいのになぁとも思います。なんか、DMOが旅行会社の手先となって店舗営業するための存在程度にしか捉えられていないような気がします。クーポン利用実績のデータは全てDMOに集約することを義務付ける、とかしてくれればいいんですけどね。

とはいえ、決まったものは仕方ないので、キャンペーンが地域の実力を鍛えるカンフル剤として働くように、知恵を絞りたいと思います。

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