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【アンテナの『あん』 - ライター:マーガレット安井】なぜ彼は筆を執るのか。

アンテナの『あん』とは?
編集部メンバーがお互いを知るために、インタビューでメンバーを掘り下げ、アンテナの『なかみ』を副音声的にお届けします。

アンテナには会社員や学生でありながら、アンテナのメンバーとして活動しているメンバーが多い。今回インタビューしたマーガレット安井もその例に漏れず、日夜会社員として働きながらライターとして活動している。そんな多忙を極める生活の中、それでもライターとして彼が筆を執り続ける理由とは。

マーガレット安井
大阪在住のしがない音楽好き。普段は介護施設で働きながら、鬱々とした毎日を過ごす。好きなジャンルはシティポップと女性シンガー・ソングライターと女性アイドル。


いつもそばにいてくれた音楽

ーー:音楽が好きになってからは音源やライブにお金を使うようになったと思うのですが、それまではどんなものにお金を使っていましたか?

安井:そもそも僕は中学校の頃、吹奏楽部に入っていました。だから当時はポピュラーミュージックではなく、クラシックや吹奏楽のCDを親にお金をもらって買っていました。

ーー:最初はクラシックだったんですね。そこからポピュラーミュージックを聴き始めたきっかけはなんでしたか?

安井:僕が通ってた大学の学科がとても小さくて、40人くらいしかいなかったんです。最初にみんなで自己紹介をした時に、ある友達が「音楽が好き」と言ったら女の子からいっぱい反応があったので、「音楽好きはモテる」と思ってしまったんです(笑)。そこから音楽をちゃんと好きになろうした、というすごく不純な動機でした。その頃には一人暮らしを始めて、お金も自由に使えるようになっていたので、色んな音楽のCDを買い始めました。

ーー:まさにモテるためにバンドを始めるみたいな感じですね(笑)。

安井:大学の頃は「他の人は知らない音楽を俺は知っているんだぞ」という優越感に浸りたくて、あまり知られていないような新人の音楽をみんなで聴いたり、各ラジオ局のトップ100を発表する番組でかかった曲を全部書き出して、TSUTAYAで借りて聴いたり、みんなにCD配ったりしたことはありました。でも結局聴いていた音楽や、その聴き方は時々で変わるんですよね。

ーー:音楽にのめり込むきっかけや、人生を変えられたと思う曲やアーティストはいますか?

安井:音楽にのめり込むきっかけというのも無ければ、僕の人生を変えてくれた曲というのもないです。「音楽は色々な人を救ってくれる」と言われたりしますが、僕はそうは思ってないです。でも、人生で色々な転機がある中で、いつもそばにいてくれる存在であるとは感じています。だから、その都度で聴く音楽も変わっていく。


そして訪れたターニングポイント

ーー:なるほど、ではどんなところに安井さんの人生のターニングポイントがあったと思いますか?

安井:音楽を聴くことよりも書くことの方がターニングポイントだったのかもしれません。昔から何かを発信することが好きだったんです。中学生の頃、好きだった吹奏楽の曲の解説をワープロで書いて親に「自分で書いたんだよ」って言って見せていた記憶があるんです。高校の時も、お笑いが好きで漫才の台本を書いていました。

ーー:そんなこともやってらしたんですね!

安井:昔から何かを発信したいという欲はあったんですよ。ただ一番のターニングポイントは2012年に京都で開かれた音楽ライター講座に参加して岡村詩野さんに出会ったことでした。当時「僕は相当音楽も聴いてるし、文章もちょっとは書ける」という自信がありました。でも「井の中の蛙は大海を知らず」というか、自分よりもさらに深いところを知っている人達がわんさかいると感じました。ライター講座からki-ftに派生していくのですが、峯くん(峯大貴:アンテナ副編集長)はまだその頃大学生だったのに、ティン・パン・アレーや細野晴臣、ボブ・ディランの曲とかも全部知っていた。僕はその当時28歳だったけど、峯くんの話を聞きながら「こいつはヤベェぞ」って思いました。このライター講座は「僕もちゃんと勉強しないといけねぇな」って思うきっかけでした。

ーー:そのタイミングで関西のインディーズに傾倒していったんですね。

安井:ki-ftで取り上げる音楽は「関西のインディーズか洋楽」というゆるい縛りもありました。ぶっちゃけ、それまで関西のバンドシーンのことも知らなかったし、ライブハウスにも行ったことがなかったです。

ーー:そうなんですね。お話を聞いてる感じだと大学時代から音楽のこと勉強し始めたんだと思ってました。

安井:全然違いますね。自分は環境や場に左右されやすい人間であるということを自覚していて、だからこそ厳しい環境に身を置かないと、怠けてしまう。だから、ライター講座に参加してki-ft に身を置いたことが僕の中でターニングポイントだったのかなと考えています。


それでも彼が書き続ける理由

ーー: ki-ft に入ってから今までも色々な音楽を聴いてきたわけじゃないですか。その中で、安井さんが記事として取り上げる音楽のポイントはありますか?

安井:単純に良いと思ったものは取り上げるし、そう思わないものは取り上げない。案外自分の好きなものは曖昧で、そこに一貫性は無いと思うんですよね。好きで取り上げたものを客観的に見たときに、「こういうものが好きなんだな」と見えれば、おもしろいけど、僕は意識せずに取り上げてます。僕らは「良い音楽は伝えたい」という前提だけでつき進んでるだけなので。

考えたことないですか? 「基本的にお金は入らなかったり、他の仕事もしてる中で、この人達はなんでアンテナをやってるんだろう」と。なんでこんな熱をかけてやれると思いますか?

ーー:みんな発信することが好きだからじゃないですか?自分のやりたいことがあるからだと思うのですが。

安井:僕に関していえば、半ば宿命でやっています。短い納期で少なく無い文字量の記事を書く。しかも、休みの日の時間を削って。それでもなぜやるかと言うと、これが自分のやるべきことだからだと理解しているから。

今、関西のインディーズのシーンがちゃんとメディアに取り上げられている感覚が無い中で、そこに取り組めるのは僕か峯くんだけだと思っています。だけどお互い取り上げられるジャンルやアーティストに限りがあることもわかってる。僕は大阪に住んでるから現場で色んな音楽を観ることが出来るし、その面白さを伝えることが、自分の宿命だと感じています。

ーー:安井さんは関西インディーズの他に女性アイドルも多く取り上げてますが、そこについてはどのような心持ちで書かれていますか?。

安井:一つ大前提として、僕はそもそも評論が好きなんです。色々なレビューを読んでいる中でおもしろい文章があって、そういう文章を書けたらいいなと考えています。だから特にインディーズ作品以外のレビューを書くときには、自分が書きたいという発想ありきでやることが多いです。

ーー:インディーズのシーンを取り上げるというのは安井さんの宿命であり、思いつきで書かれた文章は安井さんが本当に書きたくて書かれた文章と、明確に分けているように捉えました。

安井:昔の僕はそうでした。ただ今は発想ありきで書いていた時間をもインディーズのバンドを発信することに費やしています 。

ーー:これからも自分の時間であったり熱量は、自分がライターとして発信すべきだと思ってることに注いでいこうということですね。

安井:自分も厳しいなと思うところはあるし、何年続くかはわからない。だけれど続けられる限りはアンテナに全力を注いでいこうとは思います。

ライター:岡本海平

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