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タイムカプセルはいつ始まった?

Remembrance of Things Present:
The Invention of The Time Capsule

「今ここにあるものの記憶:タイムカプセルの発明」
by Nick Yablon
June 2019 (The University of Chicago Press)

「タイムカプセル」といえば、小学校の卒業のときにそれぞれが将来の自分に向けた手紙やら記念品やらをいれ、何十年か後にほりかえす、というのが、なんとなく一般的な印象だ。私もそう思ってた。やったことないけど。

だから、洋書でタイムカプセルについての本がでるとわかったときには、「え?外国にもタイムカプセルってあるの?」と思ってしまった。そりゃそうだ。というか、いわゆる今のタイムカプセルと呼ばれるものがはじまったのは、アメリカなのだ。

ネットでタイムカプセルを調べると、後世のためになにかを残すという行為は、メソポタミア文明のころからあったようで、日本では、経典を後世に残すための経塚なるものが10世紀ごろからあったらしい。

広い意味でのタイムカプセル的なものではなく、今のタイムカプセルの原型は、1939年のニューヨーク博覧会ではじまった。「タイムカプセル」という言葉も、そのときにうまれたものだ。文明が崩壊しているかもしれない5,000年後(=6939年)のために、さまざまなものが入れられた。

重要金属や瓶に入れた穀物、布や繊維類、ゴムや樹脂などのほかに、顕微鏡、電球、煙草、化粧品、貨幣なども入れられた。本は辞書や聖書のほかに、おもしろいところでは、シアーズアンドローバック社の通信販売カタログも入れられたらしい。

タイムカプセルじたいは、7つの鋳鉄でつくられた円筒型で、この本の表紙に写っているのがたぶんそれなのだが、どうみても大型ミサイルにしかみえない。

本書では、アメリカにおけるタイムカプセルのはじまりを、1876年フィラデルフィア万国博覧会の「センチュリー・セーフ」として、そこからアメリカのタイムカプセルの歴史をたどっている。

当時のアメリカ人が、なにを後世に残したいと思ったのか、時代ごとの中身を見ることで、その当時の社会の様子や文化・風俗がみえてくるのは、とてもおもしろいと思う。

ちなみに日本でタイムカプセルが広まるきっかけとなったのが、1970年の大阪万博で、松下電器(現パナソニック)が企画したもの。ニューヨーク博覧会の影響を受けたらしく、やはり5000年後の未来に伝えるためのものとうたっている。2098点の物品と記録が収められていて、100年に一回取り出されて点検されるらしい。
Time Capsule EXPO'70というサイトを見れば、さらにくわしい中身をしることができる。

5000年後って、なんだかめまいがするほど遠い未来。そのころ、まだ人類は生きのびているのかなぁ。。。でも、ちまちました日常生活からいったんはなれて、5000年後の未来に思いをはせるというのは、悠久の時の流れに身をまかせるようでゆったりした気持ちになる。


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