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京子先生の教室13「バレンタイン大作戦 」

ガタガタ、ゴトゴト

「ねえ、目立つように引き出しの一番上よ。」

「わかってるって。」

               💛 

今日は3月13日。バレンタイン前日の放課後、5時近くの教室です。校舎全体がひっそりと静まり返っています。

「エエト、この席は坂下君か・・・、じゃあ、これね。こうして目立つように置いてと。これでよしっ。」

何をしてるのかって? 女の子4人がクラスの男子の引き出しに封筒を配っています。実はこれ、6年2組女子による「バレンタイン大作戦」なのです。

                 💛

「バレンタイン大作戦」 これは、クラスの男子全員に日頃の感謝を込めて、女子全員からプレゼントをしようと、こっそりと計画をされたものでした。

3月13日を迎えるまでの女の子たちはすごかったです。そんなことが進められているとはお首にも見せずに動いてました。

こっそり伝言が回ります。

『今日に昼休みに理科室集合。先生には許可取ってある。男子には気づかれないように。』

秘密を共有した女子の結束力はすごいです。昼休みになると、先生もびっくりするようなポーカーフェイスで各々が教室を出ていきます。でも、行先はみんな一緒、理科室。

「来た人達から作業進めといてね。」取りまとめをしている陽子が数人にそっと声を掛けます。

女子みんなで話し合った結果、プレゼントは男子一人一人のいいところをメッセージとして書いた手作りの「しおり」になりました。

製作はまず一人一人を見つめる所から始まりました。

「次はやっちんかあ・・あいつのいいところは・・・」

「ほらこの間、掃除の時、あのきったないごみ、おれが持って行ってやるって一人で持って行ってくれたじゃない。あれ、ちょっとカッコよかったよね。」

「あ~、あったねそんなこと。それいいね、なんて書こうか。」

「時々見せる優しいところがかっこいいです、なんてどう?」

「いい、いい。あいつきっと照れるよね、ははは。」

こんな調子です。男子18人へのメッセージが次々に相談され、出来上がってっていきます。

『へ~、そんなことあったんだ。』京子先生の知らないことがたくさんありました。

文が完成すると次はしおり作りです。

メッセージを書いて、カットの絵を描き、色をぬって、周囲に飾りを描いて、最後にリボンをつけます。そして、封筒に入れ、宛名を書いたら完成です。18枚のしおりが丁寧に仕上げられていきました。

「よし!これで全員分できたね。明日の放課後残れる人いる? OK。4人ね。じゃあ、4時40分教室集合ね。」陽子の的確な指示が出ます。

                💛

と言うわけで、今、放課後のこの時間、一人一人の引き出しにプレゼントの封筒が配られているのです。女子みんなの心のこもった封筒です。

                 💛

さあ、2月14日。朝から教室の中は男子の大きな声が飛び交い大騒ぎです。

「なんや、これ?・・・・!うそ~!!」

「お前も入とった?俺も。何てかいってあった?・・・へ~。」

「誰や、こんなことしたの。」

「なんや~、おいおい。びっくりじゃないか~。」

窓際で、しおりを読んでいるやっちんがいます。・・・、あれ、顔がちょっと赤くなってますよ。

男の子たちの様々な反応に、女の子たちは満面の笑み。

男の子たちは照れながらも、やっぱりみんな嬉しそうでした。

                 💛    

2月14日。教室の中は朝からあったか~い空気に包まれました。


〈おまけ〉さて、この出来事を受けて、男の子たちは、3月に「おひな様大作戦」を決行しました。これもまたサプライズ。これには泣き出す女の子たちも出てしまいました。でもこの話は、また次回のおたのしみと言うことにして今回はこれで。

                         おしまい


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