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💌BOOK.あとは切手を一枚貼るだけ


あとは切手を、一枚貼るだけ
小川洋子/堀江敏幸
中央公論新社


◇この間大学の授業で、自分の性格検査を受けました。
私の数値はぐんとでっぱったり、がくんとへこんだり、まるで「平均値」という言葉を一生懸命避けるようでした。その必死な姿に笑ってしまうくらいに。


開放性。その中でも突き抜けるように高い数値を指すものでした。関心が外的にも内的にも向けられており、前向き・後ろ向き両面の感情を人よりも鋭くキャッチするという特性です。

必要以上に悩んだり傷ついてしまったり、それは、凄く疲れてしまうことだから、そういう自分の心がずっと好きではありませんでした。
もちろん素敵なことでもあるということも分かってはいるけれど、私の心はあまりに敏感すぎなのです。


そんな扱いにくい心のことを愛しく尊いものであると思えるようになったのがこの一冊です。

むしろ、もっと「開放性」の数値が上へ上へ育っていってほしいと願ってしまうほどです。物足りなく感じてしまったのです。

それほど、この本に出てくる二人は、出会った物事の細部に気づき、深く思いを馳せることのできる心を持っていたのです。


敏感すぎる心を受け入れ、それをまるで楽しんでいるように映ります。
それは、分かり合える存在があったからなのでしょうか。


私には手の届かなかった世界を二人は生きていました。その世界はとても美しいものです。



手紙に貼られた一枚の切手に、
音色を司るバイオリンの魂柱の存在に、
実験で口に穴を開けられたパブロフの犬に、
やぎさんゆうびんの歌に終わりがないということに、

思いを馳せることのできる二人はとても美しい心を持っているのだと思うのです。

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