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『おまえが世界をこわしたいなら』ほか 藤原薫

人には、その後の人生を変えてしまうような一冊との出会いがある。私の場合は岡崎京子の『リバーズエッジ』で、人によっては手塚治虫、諸星大二郎だったり、浅野いにおだったりするんだろう。コロナによるSTAY HOME中ということもあり友人とマンガの貸し借りをした。彼女から渡されたのは藤原薫の8冊。詳しいいきさつはまだ聞いていない。多分、彼女にとってとても衝撃的な作家だったんじゃないだろうか。

私は藤原薫さんを知らなくて、はじめて知った。最初に読んだのは『おまえが世界をこわしたいなら』。物騒なタイトルのこの本は、現代に生きる耽美なヴァンパイアたちの、転生も含めた壮大なお話。絵が繊細で、そしてストーリーがクレバー。そこがそうなる?という細やかでよくできた設定。思春期に、あるタイプの女の子がハマってしまいそうなテイスト。

続いて『禁断恋愛』、『思考少年』と読み進める。一話一話ごとに、驚くような伏線というか、ストーリーが詰め込まれている。この人、とても頭がいい。ただ、ちょっとずつ怪しい要素が入っていることに気づき始める。人がよく死ぬし、インモラルな性的表現も結構ある。そして普通に話に救いがなかったりする。ハッピーエンドなんかにはならない。不穏。

そして『楽園』『フェティッシュ』を手に取る。うわーダメです、これ。私しんどくなるやつ!私は、本や映画にものすごく影響を受けて、実際にその気持ちになり、引きずる人間なので、年を重ねるにつれ辛い話、痛い話、えぐい話とは距離をおくという術を身に付けた。これまでの話も変態性はあったけれど、ここにきて「痛い」が出てきた。わーダメだー。痛い痛い痛い。

私の思春期を完全にサブカル系中二病にスイッチさせた岡崎京子は、やっぱり鬱展開もあるし、性的表現もある。でも女の子のバカみたいな話を描く『東京ガールズブラボー』など「ヌケ」があるので、まだ救いがある。今回借りた本の他に、救いがある作品があるのかもしれないけれど、今回の8冊は逃げ場がない。魅入られて彼女の世界に足を踏み入れてしまったら、どこにも救いがなくてメンタルが落ちるばかりでは?このマンガを貸してくれたSちゃん、このマンガで思春期つらくなかった?良かったー私、多感な時期にこのマンガに出会わなくて。

耽美な絵と、緻密なストーリー、世界への独特なまなざし。圧倒的なエネルギーを注ぎ、マンガを描き出し、読者を「もっていく」ことができる人。触れたい方は、ぜひどうぞ。

マンガ366-368.『おまえが世界をこわしたいなら』 1-3 藤原薫
マンガ369-370.『思考少年』 1 -2 藤原薫
マンガ371.『禁断恋愛』 藤原薫
マンガ372.『楽園』 藤原薫
マンガ373.『fetish』 藤原薫

2020年読んだ本(更新中)
2020年読んだマンガ(更新中)
2019年読んだ本:77冊
2019年読んだマンガ:86冊
2018年読んだ本:77冊
2018年読んだマンガ:158冊

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