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「港区アートフェス」に学ぶ都市型市民芸術祭のGO GLOBALな未来

ビエンナーレ、トリエンナーレといった、数年ごとの大規模なアートフェスティバルが年々盛んになりつつあった流れの中で、今年は予期せぬコロナ禍により、多くの芸術祭が中止、延期、あるいはオンライン開催と、揺れ動きました。

屋外インスタレーションや観客参加型のパフォーミングアートで地方の特色ある自然環境を活かして趣向を凝らし、国内外からのインバウンド誘致を目指すことは、少子高齢化で衰退へ向かう地方にとっては有効な魅力発信の手段です。一方で、国や自治体や企業からの巨額な資金に支えられる地域芸術祭が「市民」芸術祭であり続けるためには何が必要なのかなと、ずっと考えていました。とりわけ世の中がインターネットという無限の広がりの中へと会場を移していくアフターコロナの時代には、「地域」芸術祭の意義も再考すべきかもしれません。

そんな中で、今年が第2回となる「港区アートフェス」のオープニングイベントに出席して一つのヒントをいただきました。「港区アートフェス」は、その名の通り地域芸術祭です。昨年はお台場に世界120カ国から集めた1000枚の絵を展示、3000人が来場しました。今年はいったい、どのような形で開催されるのかと興味深かったですが、行ってみると昨年とは対照的な虎ノ門ヒルズレジデンスのラウンジというアットホームな場でした。

港区は大使館が多数集積している区ですが、区内にある大使館の国旗が飾られ、大使館員たちがゲストとして招かれ出席していらっしゃいました。通訳を務める区内の高校生、少年少女国連大使としてジュネーヴ研修から帰国した高校生、教育長や自治体職員、受賞した子どもの祖父母、といった面々が集い、海外からは動画配信でメッセージが流れてきました。(動画に登場する方々の国籍が全員異なるという国際性も港区ならではです)

しかし絵が一枚もないと思うと、QRコードからウェブで閲覧できるようになっていました!募集テーマは「2030年の理想の社会」や「解決したい身近な問題・課題」の絵と、描いた絵を実現させるために必要と思われるSDGsの項目で、寄せられた応募作品1枚につき100円が社会課題解決のために活動している団体に寄付されます。https://www.goglobalarts.net/港区アートフェス応募作品閲覧

地域芸術祭の新しいコンテクストが、このフェスの主催団体であるGO GLOBAL ARTSの名に込められています。(悪名たかき!?)GO TOが、ある場所から別の場所への直線的な移動のイメージであるのに対し、GO GLOBALは、花火のように一地点から360度の広がりのイメージを喚起します。募集から展示まで全てウェブで可能ならリアルな場に集うことは不要かと思いきや、オープニングイベントでは港区のトポスを最大限に活かすペルソナを集合させる。そこにSDGsというドラマツルギーを投入し、アートを通じて社会活動への寄付というアクションを起こさせる。子どもからお年寄りまで港区という一地点から世界につながれるというのが、このフェスの「価値」なのですね!その価値を、美術館に集う知識階級だけでなく市民全体を巻き込んで、感性の部分で育てていくというビジョンとミッションが伝わってまいりました。

「港区アートフェス」オープニングイベントに出席してみて、クリエイティブビジネスとしての地域アートが見えてきた気がします。市民アート、新しい時代に即した「民芸」を追求してみたいと思います。そして、従来は個人の美意識という感覚的と思われていた価値を、エシカルな(環境や社会への影響をしっかりと考える)アート(技)であると捉え直す、いわば「技術寄りの感性」が地域アートなのでしょう。

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