見出し画像

返すもんかのナッジ

今回もナッジについて。

(前回)

(前々回)

ナッジとは

同じ量の料理でも、小皿に盛るほうが、大皿に盛るよりも多く感じる。
多く感じるだけでなく、実際に満腹感も増すらしい。

そのため、食べ放題の店では客に小皿を提供し、何度もおかわりさせて
「たくさん食べた。元が取れた」
と思わせる工夫をしている。

こういうのを「ナッジ」という。

「ナッジ」とは、おおざっぱにいうと、
人間の心理を利用して行動を促すさりげない仕掛け・優しいテクニック
を指す。

この大皿・小皿の効果は、ダイエットにも使うことができる。
つまり、小皿に盛って食べるようにすれば、食べすぎが抑えられるということだ。

これもナッジの一種だ。

ボーナスは先に渡せ

今回のテーマは、「損失回避」。

アメリカでの話だが、教師を対象に、ある意地の悪い実験が行われている。
「いちど渡したボーナスを取り上げようとするとどうなるか」
というものだ。

まず、学校を2つのグループに分けた。

「グループA」では、生徒の成績に応じて教師は年度末にボーナスが与えられる。
つまり、後払いボーナス。
通常は、この方式だ。

「グループB」では、教師は年度初めに前払いでボーナスを受け取る。
生徒の成績がよければボーナスを返却する必要はない。
が、生徒の成績が悪ければ、最初のボーナスを取り上げられる。

どちらのグループでも、教師は生徒を良い成績に導くことでボーナスを手に入れる。
つまり、条件は同じ。
ところが、実際には大きな差があった。

事前にお金を受け取った「グループB」の教師たちのほうが、生徒の成績を大幅に向上させた。

一方、後払いで成果報酬のボーナスを提示された教師たち=「グループA」では、生徒の成績に向上が見られなかった。

つまり、ボーナスの取り消しがありうることが大きな効果を生んだ。
お金を先に渡しておき、「失敗したら返せ」ということが、教師を頑張らせた。
いったん受け取ったものを返すのは、「損」になる。
それが、よほどイヤだったのだろう。

これは、
人は「得をするために頑張る」よりも、「損を防ぐために頑張る」ほうが、圧倒的に馬力が出る
という行動経済学の法則を示している。

協会への応用

この「損失回避」を協会に応用できるか?

いくつか挙げてみよう。

  • 会員登録時の特典:新規会員に登録時に特典を提供し、一定期間内に一定の活動をしなければ特典を失う制度を設ける。これにより、新規会員の積極的な活動を促せるかもしれない。

  • 認定資格の維持要件:資格を得た会員に対し、一定の基準を満たす活動を行わなければ資格を維持できないとする。既に得た資格を失うことを避けるため、会員は継続的に活動を行うようになる可能性が高い。

  • 条件付き割引制度:たとえば、会員が一定の講座やイベントに参加することで得られる割引を、参加しなかった場合に失うようにする。参加を通じて得られる割引を失いたくないという動機付けにより、会員の参加を促せるかもしれない。

  • 予測市場: 会員に対し、特定の課題やプロジェクトの完了予測に賭ける機会を提供する。予測が的中した場合、報酬や特典が得られるが、的中しない場合は賭け金を失う仕組み。これは「予測市場」と呼ばれるもので、会員の参加意欲を刺激し、プロジェクトへの関心を高めやすい。

  • タイムバンキング: 会員が協会のために行った活動の時間を記録し、一定の時間が貯まると特典を得られるシステム。一定期間活動がない場合、貯まった時間は減少するというルールを設けることにより、定期的な参加を促進できる。

おわりに

「損失回避」は行動経済学の重要な概念で、
人間は「損をする」ことに対して過剰に苦痛を覚える
という性質を指す。
同じ金額の場合、得る喜びよりも損する苦痛の方が2倍以上大きいとされる。

昔からある

  • 期間限定セール

  • 先着100名様割引

などは、「今買わないと損をする」という「損失回避」の心理に働きかけるものだ。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?