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#26 山祇 / Ourea



I. 解説: 小学生時代に作った曲と言えなくもない

敢えて臆面もなく誤解を招くようなことを言うと,この曲の一部は小5の時に作った.

小学生時代というと,ピアノなんてろくに弾けたもんじゃなく,勿論作曲なんて出来るわけがない.当時の私の休み時間といえば,とある理由で遊ぶ相手がいなかったため,教室にあるものでひとり寂しく遊ぶのが定番だった.将棋やチェスが出来るのもそういう理由だ.ただ,ずっとやっていると飽きるため,遂に教室から抜け出し,理科室に忍び込んで周期表見て元素を片っ端から覚えたり,図工室に忍び込んで勝手に彫刻板を取り出して彫刻刀でがりがりやってみたり,そして音楽室に忍び込んで弾けもしないピアノをぽろぽろやってみたりした.

下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるとはよく言ったものだ.時間が潤沢にあるとたまに「それっぽい」のが出来る.稀に良さげな響きの組み合わせが見つかるのだ.それが今回の冒頭のAM7.合う左手がないかなとまた適当にやっていたら,最終的に出来上がったのが今回の[A]の最初の4小節だ.

さて,そして話は今に戻る.新チャンネルにしてから動画タイトルに「フリーBGM」と書いているのだが,思えばBGMらしい曲でもなかったよなと思い,BGMらしい曲を書こうと思った.しかし,中々簡単に思いつくものでもない.

ああでもないこうでもないとしている内に飽きて,他のBGMを参考にしようと色々定番の曲を弾いていたら,ピンとくるものがあった.坂本龍一氏のMerry Christmas, Mr. Lawrenceである.

前に弾いていた曲の関係でトランスポーズをかけていたのだが,それの影響でこれを弾いたときに嬰ハ短調になった.すると後半の8分連打 (上の動画だと1分58秒あたりから) の部分がちょうどAM7から始まるのだ.そこを弾いた瞬間,大昔の記憶が呼び起こされたわけである.

一度とっかかりが出来るとあとは早いもので,ものの一時間で完成した.

イメージは霧の出ている鬱蒼とした山中.題には山の神の意を持つ「山祇」を据えた.英題のOureaはギリシア神話の山の神の名である.

BGM想定なので基本的にはループだが,普通に弾く場合はリピートした後[A]の前で止める.

冒頭,Vivacissimo misterioso.misteriosoというと個人的にはKalafinaの曲を思い出す.「神秘的に」という意である.

初めて聴いたときは「misterioso」という「「副詞」」がタイトル(つまり名詞)になっていることに若干違和感があったものの,まあ今ではもう慣れた.かといって自分でタイトルに副詞を使うことはまずないが.

進行は | AM7 | Eadd9/G# | AM7 | Eadd9/G# C#m7 | である.最後に関しては別にEadd9/G#を挟まなくて直接C#m7に行ってもいいのだが,ずっと同じ連打なのもつまらないので,ここは変化を付けた.[A]からは左手が入る.小学生時代に作ったモチーフの再現だ.

[B]以降から主旋律らしい主旋律が入るのだが,BGM意識ということで動きはかなり少なめ.4n小節目の内声は外声とアーティキュレーションが異なるため,左手で取る想定である.

[D]は冒頭のモチーフに主旋律をくっつけている形なのだが,最後のコードを転調用にC#m7からC#sus4に書き換えてある.そして変ロ短調への転調という形でそれを解決するのである.転調するだけで随分印象は変わるが,[E]でやっていることは[D]と全く同じで,[F]以降でやっていることも[A]以降のキーが違うだけver.に過ぎない.

さて,勢い任せで転調したはいいものの,これはBGMである.ループできるようにしなければならない.「VI♭ > VII♭ > I」というのよくありがちなノンダイアトニック(短3度上の調におけるIV > V > VI)を援用して,元の嬰ハ短調に戻る.


II. 楽譜&音源配布

ここに書いてあるルールを守ってくれれば使途は問わない.YouTubeで使っているのは「ループなし・リバーブ(反響)あり」のもの.BGMにするには「ループ対応・リバーブ少なめ」のものが使いやすいかな.

《楽譜ファイル (PDF)》

《高音質音源ファイル・ループなし・リバーブあり》
WAV形式のCD音質 (44.1kHz/16bit, 1411.2kbps)

《並音質音源ファイル・ループなし・リバーブあり》
MP3形式のストリーミング音質 (320kbps)

《高音質音源ファイル・ループ対応・リバーブあり》
WAV形式のCD音質 (44.1kHz/16bit, 1411.2kbps)

《並音質音源ファイル・ループ対応・リバーブあり》
MP3形式のストリーミング音質 (320kbps)

《ゲームBGM用音源ファイル・ループ対応・リバーブあり》
OGG形式 (100kbps)

《高音質音源ファイル・ループなし・リバーブ少なめ》
WAV形式のCD音質 (44.1kHz/16bit, 1411.2kbps)

《並音質音源ファイル・ループなし・リバーブ少なめ》
MP3形式のストリーミング音質 (320kbps)

《高音質音源ファイル・ループ対応・リバーブ少なめ》
WAV形式のCD音質 (44.1kHz/16bit, 1411.2kbps)

《並音質音源ファイル・ループ対応・リバーブ少なめ》
MP3形式のストリーミング音質 (320kbps)

《ゲームBGM用音源ファイル・ループ対応・リバーブ少なめ》
OGG形式 (100kbps)


III. あとがき: 作品番号

パンドラの前書きで少し触れたのだが,このネット上での作曲活動を始める前からも,そこそこ曲は作っていた.特に高1,2の時期はかなりの数を書いていた.それ以降は受験だったり,大学入学以降はバイトに飼い殺されたりと,中々忙しくて,結局パンドラを作るまでは何もしなかったのだが.

今聞いてみるとかなり未熟な部分も多いのだが,それでも一応データは残してある.たった16小節のループだけで「曲」と名乗っている図々しいものもあるのだが,そういうのも入れると果たして私は何曲作ったんだろうかと気になった.

発想記号を必ず入れたり,忘れなければ極力 [J] を抜いたりと,クラシックに寄せていながら1つやっていないことがあった.作品番号である.

作品番号を振っていなかった理由が,この「パンドラ以前のゴミ曲共」があるからなのである.何しろ数えていないので.デモ音源と完成音源とバリエーション音源が入り混じっていて,曲数的には正確に何曲あるのか分からなかったのである.

しかし,まあ,引っ越しして折角部屋が綺麗になった(?)ということで,折角ならPCのデータも掃除しようと,作品リストを作ることにした.数える基準はシンプル.「完成品のMIDIファイルがあり」なおかつ「自分が納得できる形で完成させたものである」ことだ.デモ止まりの曲は数えなかった.

この基準を設けてみると,数が予想していたよりも少なく(予想では今回の「山祇」までで100くらいは行くと思っていた),パンドラはOp.63で,この山祇はOp.88らしい.デモとかスケッチ止まりのものを入れると逆に予想以上に多く,この山祇はOp.181らしい.意外に作りかけが多い.

意外と手直ししたらYouTubeに出しても大丈夫そうなものもあるので,そのうち日の目を見るときが来るかもしれない.


IV. クレジット

作曲・執筆: kyoka (@kyoka20011218)
動画編集・浄書: Noah
見出し画像: フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)


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