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教科等ならではの見方・考え方

前回までは、コンピテンシー・ベースの授業を実現するためには「どのように評価するか」が大きな課題になるということで、「パフォーマンス評価」と「ポートフォリオ評価」の話をしてきました。

先日、中学校、高校の先生方とディスカッションをした際に、気づきがありましたので、今日はその話をしたいと思います。
それは、コンピテンシー・ベースの授業を実現するハードルの1つとして、コンピテンシーの捉え方があるのではないかとということです。

先生方は、総合的な学習(探究)の時間ではコンピテンシーを育てる授業ができるが、教科の授業ではどうしてもコンテンツ・ベースになってしまうというのです。総合の時間は多くて週に2時間程度です。全体の授業からみたら6〜7%です。それでは少ないでしょう。

そこで、このような話をしました。学力の氷山モデルです。学力を氷山に例えると、水面よりも上に出ている、つまり目に見える学力が「教科等に固有の知識や個別のスキル」です。テストで測定できることで目に見えるという表現にしています。そして、水面より下にある、見えない、見えにくい学力は二層に分かれています。一番深い所にあるのは「教科等を横断する汎用的なスキル」です。問題解決力やコミュニケーション力、主体性などです。一般的にはコンピテンシーというとこれらを思い浮かべます。そして、総合的な学習(探究)の時間では、これらの資質・能力を意識した学習プログラムが組まれます。
ところが、水面下の学力にはその間の層として、「教科等の本質に関わる教科等ならではの見方・考え方など」というものがあります。私はこれもコンピテンシーだと考えます、と先生方に言いました。

数学の先生に「大人になってから高校の教科書にあるような難しい数学の知識は使わないのに、なぜ学ぶ必要があるのですか?」と聞くと、こう答えてくれたのです。
「そういった知識や解法スキルを学ぶことを通じて、数学的なものの考え方、見方、問いの立て方を教えているのです」と。
そう、それそれ。それが教科の授業の中で児童生徒に身につけてほしいコンピテンシーなのではないでしょうか。
世の中にある問題は、明示的に教科に分かれて存在はしていません。しかし、私たちは、無意識にどの教科の見方・考え方を使って解こうかと考えているのです。そして、多くの場合それは1つの教科では解けない教科横断の問題なのです。

つまり、教科で教わっている知識そのものは、専門分野に進まない限り大人になったら使わなくなりますが、教科の見方・考え方というコンピテンシーは大人も無意識に使っているのです。問題解決が得意な方は、問いの立て方が上手です。それはこの教科の見方・考え方を総動員して考えられる力を持っている方なのです。

話を戻すと、教科の授業において意識して育てるべきコンピテンシーは、氷山モデルの第二層にある教科等の本質に関わる教科等の見方・考え方」だと考えると、最初の先生方の悩みが解けるのではないでしょうか。

ですから、授業において、教科の知識を教えることだけに重点を置いている先生は、少し本質的な見方・考え方を重視した授業に変えてみたらどうでしょうか。それなら変えられそうじゃないですか。

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