世にも奇妙な話
先日、テレビで世界のミステリー映像を特集し放送していた。たまたまチャンネルを合わせていたため、何となく観ていたのだが、途中から食い入る様に見入ってしまい、この世界の“奇妙”に夢中になった。
『世界中、知らないだけで結構奇妙なことって起こってるんだなぁ』なんて思っていたが、身近に奇妙な事が起こったことを思い出した。
私の父は私が中学一年の時に亡くなった。生きている時はかりんとうが好きで、「お父さんが死んだらかりんとう供えてくれな」なんて言っていた。だから私はいつも、実家へ帰る時、仏壇に供えるためにかりんとうを買って帰る。
父が亡くなって一年程経った時のこと。
父の高校時代からの友人もお墓に来てくれていた。お墓は田んぼに囲まれた狭い私有地にあり、周りは農家の家があるくらいで、私の母と親戚、他に父の友人たち数名とお墓の作業に関わる業者数名の方々がその場にいた。
母は父がやるはずだった墓の建て直しを行った。その日は建て替えた墓の土台に竿石をのせ、魂入れを行う予定であった。
作業車が竿石を吊り上げ、土台に乗せようとしたその時だった。
「ビーーーーーーーーーーー」
突然、警笛が鳴り響いた。警笛…クラクションといった方が分かりやすいだろうか。
その場にいた全員が驚いた。
クラクションはどこから?
母の車だ!!
少し離れた傍に停められた母の車からクラクションが響いた。
「え!??こんな事ある??」
全員驚いている。
「あいつならこういう事しそうだもんな」と父の友人。とは言ったものの、顔は完全に血の気が引いたようにゾッとしている。
その日も私はかりんとうを持っていた。怖がりの私だが、その時ばかりは、驚いたが怖いという感じはなかった。
帰りの車の中でかりんとうを頬張る。父が好きだったかりんとうは細いやつではなく、太いやつ。前歯だけだと不安だから、ちょっと奥歯を借りるやつ。
車内にただよう奇妙な感じ。だけど父がいる様なぼんやりとした中で、私はかりんとうを頬張った。
私はそのかりんとうの食べにくさを、今でも覚えている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?