「音に心を込める」ってなに?
「あなたのビートは死んでいるんです」
オーケストラが鳴り止み、彼はある奏者をまっすぐに見つめる。
声の主は、私が所属する大学オーケストラの常任指揮者。
今年81歳になった先生は、合奏の際よくこの言葉を使う。
先生が言う「ビート」とは、音楽でいう拍のことはもちろん、奏者の心臓のことも指している。
心臓がない、つまり鼓動のない音楽には、色がない。
演奏中に、隣の奏者の息遣いを感じること。周りに目を向け、大きな音楽の波や空気に乗っかること。そして時には自らが先頭に立って引っ張っ