「予測」「計画」「管理」は過去のもとなりました。

 前回、「所有」と「知財」と「秘匿」と「標準化」という工業時代の核概念が1990年を境に無効化したことを述べた。

 1990年を境に起きた前提の違い。それは、所有という思想が無効となったのだ。直感的には、かのこんまりさんが、あの所有と消費の国米国で大ヒットとなっていることでも漠然としたイメージを共有していただけるだろいう。所有の時代ではない。しかるに、例えば誤った知的財産権の理解により「この共同研究で発生した知財は総て弊社に帰属する」という契約書を今日でも突き付けてオープンイノベーションに加われない日本企業がいかに多いことか。

 「予測」「計画」「管理」は過去のもの。

    当たり前のことだが、所有が無効化したということは管理が意味をなさない。所有しても意味をなさないものは管理しても意味をなさない。MBA(Master of Business Administration)は不要ないし、前世紀の残滓としての管理業務として劣後のものとなった。概念の理解が困難なら直感的に分かるために伊藤穣一先生のTEDプレゼンテーションがわかりやすい。

インターネットによってMBA主導のイノベーションモデルから
デザイナーと技術者主導の モデルへと移行したのです
計画を立てるのに必要なコストはどんどん上がっているのに
計画自体はそれほど正確でも有益でもありません
すべてを計画しすべてを揃え完璧に準備を整えなければなどと考えるのはそろそろやめにして

 伊藤穣一先生は、「ネット前では 物事はシンプルでした・・・それなりに予測可能でした・・・その後インターネットが登場し世界は極めて複雑低コスト高速になり・・・ この予測不能な世界」になったと論じる。

 500startupのMr.Dave McClureが2015年に来日し東京で公演した時に、伊藤先生と同様の指摘をしている。

“[They are] lies and bullshit. Why? Because they are guesses about the future. If you show me expense projections for one year, I might believe that,”

 Dave氏の話はちっと日本語に訳しにくい言葉の連発なので記事から必要なところだけを英語のまま引用した。当日Liveで話を聞いていた人ならこの言葉の後に(記事では省略されている)「[事業計画書を信じるような人は]小説家か政治家になってください」という言葉が印象に残っているだろう。それほど、計画というものは空理空疎なものでしかない。しかるに今日でもPDCA信仰や事業計画書信仰の日本企業って・・・

 計画や管理といえば、孫泰造氏は2017年12月25日Facebook

この際、ハッキリ言おう。「この考え方こそが日本をダメにした」と。長年考え続けてきた末の結論なので、もうハッキリとそう断言する。この「MBA(Master of Business Administration)の劣化コピー」みたいな考え方こそが、人々を拝金主義にし、人々を自己肯定感のない、常に不安な心理状態に陥れ、家族や地域のコミュニティを破壊し、日本をダメにしたのだと。
売上や粗利、営業利益、ROI、EBITDAなどの「ショボいパラメータ」至上主義の、理数的にも社会的にもなんの正当な根拠もない「ドグマ」には、もうこれからの人たちはついていかないと思う。少なくとも、僕は絶対についていかない。なによりも、このやり方にはまったくクリエイティブなセンスがなく、ダサいのが気にくわない。僕がいわゆる「経営者」になりたくない最大の理由はそこにある。

 御意。TOEIC高得点ならグローバル人材という愚論もこの「ショボいパラメータ至上主義」の典型である。外部基準でしか判断できない。こんな輩に少なくとも筆者も絶対についていかない。
 同様にPDCAおじさんやしょぼいパラメータ主義おじさんが面白いのは一方で「時代はVUCAだ!」と言い放つことである。こんな簡単な矛盾にすら気が付かないのだろうか?

 日本が1990年以降凋落したのは、前提の変化を理解せず漫然と孫泰造氏のいうMBAの「ショボいパラメータ至上主義」経営を行ったからに他ならない。

 さて、では、ネットワーク化した世界で、「所有」「管理」という概念が無効化し、「シェア」「オープン」を実践している世界を示してこの稿を閉じることとしよう。

 深セン(Shenzhen)市の話を伊藤先生もしているので、IngDan社を事例に話を進めることとしよう。同社は、電子部品の企業調達を目的とした中国最大の電子商取引プラットフォームであるCogobuyグループの子会社である。IngDan社は、高度なデバイスイノヴェーターが必要とする、設計・製造、ベンチャーキャピタルや資金調達、広告やマーケティング、顧客体験の場などのサービスを提供したり紹介するシェアリングエコノミーモデルを実現している。このプラットフォーム上では既に電気自動車の企画から10カ月間でprototyping完成まで至っている。中央研究所や巨大な工場は一切用いられていない。大事なことだからもう一度言うね。自動車を製造するのに中央研究所も工場もいらない。ネットのプラットフォームで総てが解決する。わずか数年で伊藤穣一先生のプレゼン時よりはるかに進んでいる。

 ハーバードビジネススクールがこのような教育が間違っていたと猛反省し「これまで「ハーバード」という名称がタイトルに載った本は何十冊と出版されているが、それらは辛辣な言い方をすると、すでに「賞味期限」が過ぎている。これまでの本は、HBSが100周年を契機に行った深い反省について触れていない。」とまで宣言しているのに、今でもなお日本でMBA信仰や計画・所有・秘匿信仰が続いているのはなぜだろう。もはやブードゥー教の域なのだが。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?