【短編小説】いじめ、ダメ絶対
こんにちわ!
前回の「運送の仕事」はどうだったでしょうか?天口の雰囲気からして、逮捕はされていないようですが、これは立派な犯罪ですね。
そういえば逆目や亀川や嘉三は天口に置いて行かれた後どうなったのでしょうか?それはあなたのご想像にお任せします。
助けも呼べず、厚着もせず、外は寒く、そんな中,、三人は途方にくれてしまったでしょうね。人を簡単に疑うのはやめた方が良いですね。
では、どうぞ😊
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「お前なんか出ていけー!」
尊陣さとしは、長く続いた父親とのけんかをそう言われて終わらせられた。
「あ~いいよ。出てってやるよ」
さとしはそう叫んだ。
自分の部屋に行き、少しの金と雑誌と着替えを入れたリュックを持ち、
「今までありがとうございました。」
と冷たく言い放った。
行く当てはなかった。だが父親に
「すいません。残らせてください」
というのだけはごめんだった。
とりあえずコンビニに立ち寄って、コーヒーを買う。
イートインコーナーに縮こまって雑誌を読んでいるとこのまま一人で生きてゆくのもいいかなという気持ちになった。
「え、動物保護協会、、、、住み込みバイト、、」
思わず声が出る。
さとしにはぴったりのバイトだった。動物も大好きだった。
小さなころから母と動物を飼おうと話していたほどだ。父に却下されてからは、母もその話をすることはなく、他界した後も、父の考えが揺らぐことはなかった。
「はい、尊陣さとしと申します、、はい。アレルギーは大丈夫です。住み込みも、、はい。できます。はい。はい。明日の8時、、はい。朝ですね。はい。食事付き、、はい。ありがとうございます。」
明日の八時にテストを受けることになり、その日はコンビニで過ごした。
次の日、指定されたオフィスに向かった。
どこからか犬の鳴き声が聞こえる受付で、「尊陣です」と言うと「こっちです。」と事務室のようなところに連れて行かれた。
「こんにちは。尊陣さんですね?木無村と書いて(きむそん)と言います。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「まず、動物嫌いやアレルギーはないとのことでしたので、仕事内容から説明しちゃいますね。朝出勤は7時です。少し早いと思いますが、7時にぽろんちゃんというダックスと女の子とフンジーというハムスターに餌をあげるだけです。あと水もお願いします。どのくらいかはウチの子たちそれぞれの名前が書かれたロッカーの中の朝ってかいてあるジップロックの中のを上げればいいです。水も入って、、、、、」
長い説明が終わった。まず朝7時、ぽろんちゃんとフンジーに水と餌。10時にトイプードルたちのお散歩。11時にオフィス周辺をパトロール。一時からドッグランにくる里親検討中の人たちの見守り。3時のおやつタイムを全員分用意する。が仕事だった。結構少なかったけど、一時からの仕事はみんなとたくさん遊べて楽しい仕事らしい。
初日は研修のあとテストをして、合格だったら次の日から出勤という。
近くのホテルに泊まり、うきうきしているうちに夜が明けた。
昨日言われた仕事を一生懸命やったと思ったが、ぽろんちゃんの水をこぼしてしまったり、トイプードルの一人をおいて散歩に行ってしまったり。
うでを組みながらきむそんさんは苦い顔をしていたのに気づいていた。
パトロールをしながら合格できないかもしれないと落ち込んでいると、
「ワン!わぅー」
という犬の鳴き声が聞こえた。きむそんさんからパトロールはこうして助けを求めていそうな生き物をみつけるためにあると教えてもらっていた。
鳴き声を頼りに進んでいると人影のない細道についた。
どうやら、男三人がホースで犬に水をかけているようだった。
「おい、なにしてんだ!」
男三人は尊陣を見ると走り出した。
犬はぜーはーぜーはーとくるしそうにしていた。
「動物病院に連れて行かないと!」
3分ほど走ったところにある動物病院で診てもらっているうちにきむそんさんを呼んだ。
「何があった?!」
汗だくになってやってきたきむそんさんは、尊陣の話をじっくりと聞いた後警察に連絡をした。そして
「俺が探す。あいつらは前も人のハムスターを盗んで、放り投げて遊んでいた。あんときは逃げられたけれど、大体の場所はわかる。」
というのだ。
きむそんさんだ動物病院をでたあと、医師からあの犬が息絶えたことを知らされた。
とぼとぼと帰ると、男三人がきむそんさんに怒鳴られていた。
「動物をいじめて何が楽しいんだ!」
こっちから聞いても鼓膜が破れそうな勢いだ。
そして最後に
「あの子のお墓が完成したら、一度来い。」
といい、場所を書いた住所を渡した。
尊陣はパトロールの成果で合格をもらい、犬のことなど忘れてしまった頃だった。
「昨日、午前10時頃白山を訪れた三人の男性が遭難しました。現在も行方は分かっていません」
というニュースが流れだした。
尊陣は驚いた。白山は犬が眠っているお墓のある山だったからである。
「あの三人ってどうして遭難したんですかね」
ときむそんさんに話すと
「ホントに、いじめ、ダメ絶対だね」
と笑った。
きむそんさんが何かをたくらんだのかは怖くて聞けなかった。
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