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【平家物語】巻01_06 祇王


勢を極めた清盛は傍若無人な振る舞いもした。
清盛には寵愛の白拍子・祇王がいた。
彼女の縁者はその寵愛の恩恵を受けて富み栄え、人々は彼女にあやかろうとこぞって「祇」の字を己の名前につかようとしたという。
三年が経ったころ、都にはまたひとり人気者の白拍子・仏が現れる。彼女は自分の芸を清盛に認めてもらおうと参上し、祇王のとりなしで芸を清盛に見せることに成功する。
するとたちまち清盛の興味は仏に移り、あわれ祇王は今度は邪魔者とばかり、清盛に追い出される結果に。清盛の心無きふるまいに傷ついた祇王は妹・母親とともに出家する。
その後、静かに暮らす三人の庵の戸をたたく者があった。
訪れたのはあの仏御前。

祇王のいまの不幸は、自分の近い将来の姿でもあると語った彼女は、被り物をとる。なんと既に彼女は剃髪していた……。
仲間に入れてほしいという仏の願いは聞き入れられ、四人の女性は共に尼として過ごし、四人それぞれが安らかな往生を遂げたという。

この章段の清盛は、ほんと極端に、ちょっと暗君成分入ってるレベルで「傲慢不遜な権力者」になっています。「私は芸をお見せに来ただけ、お傍にいる祇王様に申し訳ない」という仏御前に、「じゃあ祇王を追い出そう!」と即答しちゃう清盛の心変わりシーンは「おいおいおいおい!」とツッコミたくなるほどにデフォルメされてたキャラになってます。
あと、追い出した祇王を呼び出して「仏御前の為に何か歌って」とリクエストするくだりも、めっちゃ無神経ですよね~。あまりにも極端すぎて、ギャグめいてて笑っちゃうのですが。

仏御前は若くてちゃきちゃきしてそうだったので、ちょっと現代っぽい、可愛い系の女のコにしてみました。向上心と勢いがあって、けっこう好きです。
そんな彼女が祇王が追い払われるのを見て「やったー!」とならずに、「ああ、私らみたいな存在は、みんなこうやって使い捨てにされるだけなんだ」という境地に一足飛びにたどり着いたところは面白い。

そもそも、白拍子として芸で身を立てることが、権力者である清盛と男女の関係になることとほぼイコールってのが、世知辛いですものね。
いま清盛に気に入られて頂点に片足をかけた、まさにそのときに、「何もかもがしょーもなく思えた」のかな。