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プラモデル少年が、花に目覚めるまで いけばな作家・安達力インタビューvol.2

インスタグラムで人気のいけばな作家、安達力(あだちつとむ)の作品には、いつかどこかで見たことある風景のような、懐かしさと優しさを感じる。そしてブレない信念や、純粋な遊び心も、その作品に魅力を加えているのだろう。インタビュー後編では、いけばなを始めたきっかけや、本人の目指す究極の花について語ってもらった。〈vol.1はこちら〉

>プラモデルの会社に就職したかった

私、一応男子ですからプラモデルが大好きなんですよ(笑)ミリタリーのプラモデルばっかり作っていたんです。それで大学は静岡まで行ったんですよ、プラモデルの会社がいっぱいあるので。でも2000年代で、株価がめちゃくちゃ下がって景気が悪い時だったんです。それでその年度は「(新卒を)とりません」と。なので上京して会社員になって…っていう流れなんです。

で、東京ってよく引越しをしますよね? プラモデルって(完成したものを)持って運ぶと壊れてしまうから「やだな」と思って。それでも何か手先を使って作るのはやりたいとずっと思っていたので「いけばなだな」と。剣山と器だけ持っていれば、どこでも作品は作れますから。小原流は「写景」と言って自然感のある生け方をするんですけど、まさにジオラマ作る感じですよね。

>3.11をきっかけに教室をスタート

最初のきっかけは、会社のサークルなんです。会社のサークルって助成金が出るじゃないですか。「(予算が)余っているからなんか使ってくれ」みたいな話があって、そうこうしているうちに3.11があったんです。あの後ってみんな暗ーくなっちゃったじゃないですか。だから教室をやろうと思って。会社で「興味ある人?」って呼びかけて始めたんですね。

>明治時代の実験的な盛花がかっこいい!

実はいけばなの歴史って分からないんです。こういう流派の変遷があって、ここで一気に衰退して盛り返して…とか。でも江戸時代はブームだったので、本がいっぱいあるんですよね。それで自分で調べるようになって。むっちゃ古い和綴じの本が1000円くらいでバンバン売っているので、それをヤフオクで落としていくんですよ(笑)そうするうちに「昔って、どういう作家がいたのか」というのがだんだん分かってきたんです。「なんで小原流って盛花に走ったんだろう?」とか。

「盛花」が完成する以前の世界って型もなかったし、とにかく実験、実験の繰り返しなんですよ。でも明治時代くらいの作品を見てみると、かっこいいんですよね! 洋花と和花が混在していたりして、花がすごく野心的なんですよ。媚びてない。大衆受けしてやろうとかなく、とにかく洋花をいけばなに取り入れてかっこよく見せるにはどうしたらいいのか、という試行錯誤があって。そういう作品って面白いんです。

>いけばなは終わりなき「道」だから

いけばなって道なんですよね、華道。終わりのないものなんですよ。極めようと思っても極められないものなんですよ。だから80歳、90歳でいけばなをやっているおばあちゃんたちもたぶんそう。やっぱり「生ける」という行為の向こう側の世界が究極だと思うんですよね。もう枝を見たら、手が勝手に動いていくくらいの技術力というか。いけばなというものにおいてはそれが究極なのかなと思います。

私が今、37歳のこの時点で好きなのは「省略美」ですね。作品としてどこまで省略できるか。そしてその季節の花同士で構成されている、というのが今の自分の目標ですね。やはりその花を殺めているわけですから、美しく生けなくてはならないし。その個性が引き出せるよう、限界点まで削いで、構成を作りたい。


いけばなの奥深さを語りながらも「でも技術が上がっていくっていうのは純粋に嬉しいですよね。自分の思ったように形が作れたり、決めた場所に花が入っていくというのは、非常に嬉しいこと」と笑顔を見せる姿が印象的だった。

新宿のいけばな教室「花ならい」の詳細はホームページから。日常空間を彩るいけばなに、あなたも入門してみては?

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