部下が仕事を自己評価できるように、どのような意識を持たせるべきか。
私のチームは事業計画を担当していますので、事業目標を達成するために、社内の様々な関係部署と打ち合わせを行います。
例えば、工場であったり、設計者であったり、個別ビジネスのプロジェクトリーダーだったり。
そういった打ち合わせを行うときに、部下と一緒に準備をします。
先日は工場の関係者に改善活動を進めてもらうために、工場の費用構造を図式化して、それぞれに対して課題を検討してもらうきっかけを準備しました。
私の部下である若手の子は、まだ経験が少ないものの、先輩や私と話しながら工場費用の構造を理解し、そして、費用構造を見える化することで、活動のポイントや責任者を明確にできる、ということを十分に理解して資料を作ってくれました。
もちろん、工場における個々の課題をこちらですべて理解しているわけではありませんし、決めつけて本来の課題を見過ごしてもいけませんので、いくつか例示をするものの、「このように整理してください」とお願いすることになります。
よって、具体性がそこまであるわけではなく、全体のイメージと論点を示した、極めてシンプルなパワーポイント1枚とバックデータのエクセルを一つだけ準備しました。
しかし、この1枚の資料でも、若手の子が自分で理解して、「なぜ構造化が必要なのか」をしっかり自分の言葉で工場メンバーに説明してくれました。
工場の人たちは、普段自分の目の前にあるラインの改善にはかなり強力に取り組んでくれているものの、それ以外の領域にはなかなか目を向けられていないものです。お金の流れが見えていないので当然です。
そこで、今回私たちは全体から費用構造を示して、課題の大きさや優先順位を議論できるようにしたわけです。
工場の人は「こうなっているのか!」と非常に興味を持ってみてくれ、「ならばここを重点的に分析しなければいけないな」など、こちらの期待通りの反応をしてくれました。
この打ち合わせでは、分析と活動責任者を月末までに整理して役員報告することを合意し、無事終了することができました。
「自分が何をしたか」で成果を測っている
この打ち合わせについては、準備、会議進行ともに、私の上司(部長)も満足してくれ、若手の子の取り組みを評価してくれました。
そこで私は週次で行っている1on1の際に、若手の子に今回の会議準備、進行が非常によかった、と伝えました。
しかし、彼は「いえいえ、僕は本当何もしていませんから」というわけです。
そんな課長相手に謙遜するところではないので、「ちゃんとやってたじゃん、狙った通りに進んだよ」と言ったところ、彼はこのように言うわけです。
「私が分析したわけではないし、採算改善活動の内容を考えたわけでもないですから」
いやいや、それは各持ち場の人にやってくれればいいから、そこまで準備するのは仕事ではないんだよ、工場側でやってくれる、って言ってくれたからいいんだよと話しました。
彼は最近部内異動をしてきて、私のチームにきてまだ1か月です。ではその前に何をしていたか、というと、個別ビジネスを担当していました。
私のチームはマクロに事業全体を管理し、全体の目標の設定と、改善のフォローアップをするチームです。
一方で、彼は個別ビジネスの採算管理、改善主導をする立場でした。
その時の彼の仕事というのは、図面を見ながら原価を見積もり、数字や利益目標を達成するための活動をまとめた資料を作っていました。
私の部署ではこのような個別ビジネス担当が部署の7割を占めていて、若手のほとんどは個別ビジネス担当になります。
このような若手に話を聞くと、仕事は何かと問えば「見積もりをしたこと」「改善活動を考えたこと」「資料を作ったこと」と言います。
もっと言えば、中堅でも同じ反応をします。
私の部下になった子は、このような経験を4年してきていますので、今回の工場との打ち合わせについても、「イメージだけで、中身が記入されていない資料1枚しか作っていない」と思ったようです。
「相手の反応」で成果を測る
しかし、今回、私たちのチームがしなければいけないことは、「事業を改善するため、工場費用を低減する仕掛け」をすることです。
それは、「工場の人が、課題を認識し、自ら、現場の知見を活かしながら自立して改善をしてくれること」とも言えます。
そのように考えると、今回、仕事ができたかできていないか、は「現場の人が課題を認識して動いてくれるかどうか」です。
決して、自分が頑張って資料を作ったか、それが正確かどうかではありません。
今まで、その若手の子は「自分が何をしたか」で仕事の評価をしてきました。しかし、これからはそういうわけにはいきません。「他人がどう反応したか」が成果になります。
今回、私が反省しなければいけなかったのは、「打ち合わせの結果、工場の人がどのような反応、行動をするのが狙いか」を丁寧に説明していなかったことです。
チームで仕事をするということは関係者の能力を最大に引き出すことです。
今後は、相手の反応を見て、自分がいい仕事ができたか振り返ってもらえるように、打ち合わせ前後でしっかり話していきたいと思っています。
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