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中国 最高人民法院民事事件再審請求指南(2024年版)

中国最高人民法院は、民事事件の再審請求手続きのガイドラインである「最高人民法院民事事件再審請求指南」を改正し2024年2月1日に公示している。本指南は2010年ごろ既に公布されており、何度か改正されており、5月になって最新版が公示された。
本指南は、以下の9項目14条で解説している。
1.どのような民事事件を最高人民法院に再審請求できるか?
2.当事者はどのような裁定に再審請求できるか。
3.再審請求できる人は誰か?
4.民事再審請求はいつ提出しなければならないか?
5.最高人民法院に再審請求するにはどのような方法があるか?
6.民事再審請求ではどのような書類を提出しなければならないか?
7.外国関連民事事件の再審請求に特別な規定があるか?
8.どのような民事事件を人民検察院に検察建議或いは控訴を請求できるか?
9.民事事件再審の条件には何があるか?
 外国の法人などが手続きをする場合の関係書類の公証認証などが新たに明確にされている。仮訳は以下の通り。

【最高人民法院民事事件再審請求指南】
 当事者が法律に基づき民事再審請求の権利を正しく行使することを保護し、人民法院の発効済み判決の安定性、権威性を維持するため、「中華人民共和国民事訴訟法」、「最高人民法院の中華人民共和国民事訴訟法の適用に関する解釈」などの関連規定に基づき、ここに関連事項について以下のように通知する:

1.どのような民事事件を最高人民法院に再審請求できるか?
第1条 当事者は、最高人民法院、高級人民法院のすでに法的効力の発効した民事判決、裁定、調停書について、最高人民法院に再審を請求することができる。

第2条 以下に掲げる情況に該当する当事者が再審請求した場合、最高人民法院はこれを受理しない:
(1)すでに法的効力の発生した婚姻解消に関する判決、調停書;
(2)当事者が発効した判決、調停書で確認された債権譲渡において、債権譲受人が当該判決、調停書に不服で再審請求した事件;
(3)特別手続、督促手続、催告公示手続、破産手続など非訴訟手続が適用され審理された事件;
(4)再審請求が却下された事件;
(5)再審の判決、裁定;
(6)人民検察院が当事者の請求に対し再審検察提案或いは抗訴決定を提出しない事件。

2.当事者はどのような裁定に再審請求できるか。
第3条 当事者は、最高人民法院、高級人民法院が下した本指南第1条の規定に合致する以下に掲げる裁定に対し最高人民法院に再審請求することができる:
(1)不受理の裁定;
(2)起訴棄却の裁定。

3.再審請求できる人は誰か?
第4条 再審請求人は、以下に掲げるいずれかに適合しなければならない:
(1)判決、裁定、調停書に明記された当事者;
(2)原判決、裁定、調停書がその民事権益を損われ、提出した執行異議が却下裁定された当事者以外の者;
(3)上記当事者或いは当事者以外の者が死亡或いは終了した場合、その権利義務の承継者。

4.民事再審請求はいつ提出しなければならないか?
第5条 当事者が再審を請求する場合、判決、裁定、調停書の法的効力の発生後6か月以内に提出しなければならない。以下に掲げる情況がある場合、知った或いは知りうべき日より起算し6か月以内に提出しなければならない:
(1)原判決、裁定を覆すに足りる新しい証拠がある場合;
(2)原判決、裁定の事実認定での主な証拠が偽造である場合;
(3)原判決、裁定を下す根拠となった法律文書が取消或いは変更された場合;
(4)裁判官が当該事件を審理するときに収賄を貪り、私情にとらわれ不正を働き、法を曲げて裁判行為をした場合。

5.最高人民法院に再審請求するにはどのような方法があるか?
第6条 当事者が最高人民法院に再審請求する場合、以下に掲げる方法で提出することができる:
(1)人民法院オンラインサービスプラットフォーム、人民法院弁護士サービスプラットフォーム、人民法院オンライン上訴投書・来訪プラットフォーム、最高人民法院訴訟サービスネットワークを通じオンラインで再審請求事件書類を提出する;
(2)最高人民法院に再審請求事件書類を郵送し提出する;
(3)最高人民法院本部、各巡回法廷訴訟サービスセンターが設立した専門窓口に再審請求事件書類を提出する。

6.民事再審請求ではどのような書類を提出しなければならないか?
第7条 再審請求人は、再審請求書を提出しなければならない。窓口、郵便の方式で提出する場合、被申立人及び原審のその他の当事者の人数に応じ再審請求書の副本を提出しなければならない。

第8条 再審請求書には、以下に掲げる事項を明記しなければならない:
 (1)再審請求人、被請求人及び原審のその他の当事者の基本的情況。当事者が自然人である場合、氏名、性別、生年月日、民族、職業(或いは勤務先及び職務)、住所及び有効な連絡先電話、郵送先住所を明記しなければならない。当事者が法人或いはその他の組織である場合、名称、住所及び法定代表者或いは主要な責任者の氏名、職務及び有効な連絡先電話、郵送先住所を明記しなければならない。
 (2)判決、裁定、調停書を下した人民法院の名称、判決、裁定、調停書の事件番号;
 (3)具体的再審請求;
 (4)再審請求の根拠となる法定情況(根拠となる民事訴訟法の具体的な条項号を明記)及び具体的事実、理由;
 (5)最高人民法院への再審請求の明確な記述;
 (6)再審請求人の署名或いは押印;
 (7)再審請求書の提出日。

第9条 再審請求人は、規定に適合する再審請求書を提出するほか、以下に掲げる資料を提出しなければならない:
 (1)再審請求人が自然人である場合、身分証明書の写しを提出しなければならない。再審請求人が法人或いはその他の組織である場合、公印を押印した営業許可証の写し、組織機構コード証明書の写し、法定代表者或いは主要な責任者の身分証明書を提出しなければならない;
 (2)他人に再審請求を委託する場合、授権委任状を提出し、委託代理人が弁護士の場合、弁護士事務所書簡原本と律師執業証(弁護士資格証明証)の写しを提出しなければならない。委託代理人が基層法律服務工作者(訳注:中国特有の弁護士不足を補うために設けられた地方地域レベルの法律業務サービス業者)である場合、基層法律サービス事務所書簡原本と法律服務工作者執業証の写し、及び当事者の一方が執業区域内所在であることを証明する資料を提出しなければならない。委託代理人が当事者の近親者である場合、代理人の身分証明書の写し及び当事者と近親者との関係を証明する資料を提出しなければならない。委託代理人が当事者の従業員である場合、代理人の身分証明書の写し及び当事者と合法な労働人事関係があることを証明する資料を提出しなければならない。委託代理人が当事者の所在するコミュニティ、単位及び関連する社会団体が推薦する公民である場合、代理人の身分証明書の写し、推薦資料及び当事者が当該コミュニティ、単位に所属する証明資料を提出しなければならない;
 (3)再審請求する判決、裁定、調停書の原本、或いは照合され誤りのない副本。判決、裁定、調停書が二審裁判所で下された場合、一審裁判文書の原本、或いは照合され誤りのない写しを同時に提出しなければならない;
 (4)原審訴訟過程において提出された主要な証拠の写し;
 (5)再審請求の根拠となる法定情況と再審請求を裏付ける証拠資料;
 (6)送付先確認書;
 (7)再審請求人は新たな証拠を有する場合、証拠資料を提供しなければならないが、窓口、郵送方式で提出する場合、被請求人及び原審のその他の当事者の人数に応じ相応の部数の新証拠の写しを提出しなければならない。
 (8)法律、法規の規定により提出する必要があるその他の資料。

第10条 再審請求人が再審請求書などを提出する場合、A 4版の用紙を使用しなければならず、書面の内容と一致する編集可能な一審、二審の裁判文書と再審請求書の電子テキスト(Word文書)、すべての紙文書のポータブルテキスト(PDF文書)を添付することができる。上記の2つの書式の電子テキストを同じ光ディスクに書き込み、紙資料と一緒に提出する。上記の資料をオンラインで提出する場合、対応する規定に基づき処理する。

第11条 再審申立人が提出した再審申立書などの資料が上記の要件に適合しない、或いは個人攻撃などの内容が含まれ、対立が激化する可能性がある場合、補充或いは訂正しなければならない。

7.外国関連民事事件の再審請求に特別な規定があるか?
第12条 外国関連民事事件の外国当事者が最高人民法院に再審請求し、請求人は外国人の場合、パスポートなどの有効入国証明書の写しを提出しなければならない。請求人は外国企業或いは組織の場合、その所在国の公証機関により公証されるとともに、中華人民共和国の同国駐在領事館の認証を受けた、或いは中華人民共和国が同国と締結した関連条約に規定される証明手続きを履行した商業登録、代表者或いは責任者の身分証明などの主体資格証明資料を提出しなければならない。
 外国人、外国企業或いは組織が弁護士に訴訟の代理を委託する必要がある場合、中華人民共和国の弁護士に委託しなければならない。中華人民共和国の領域外から送付する或いは委託した授権委任状などの資料は、その所在国の公証機関の公証を経て、中華人民共和国の駐在領事館の認証を経る、或いは中華人民共和国と同国が締結した関連条約に規定される証明手続きを履行しなければならない。中国が同国に領事館がない場合、中華人民共和国と外交関係のある第三国の駐在領事館の証明を受け、そして、中華人民共和国の第三国駐在領事館に移送し証明を受ける。国外に居留する中華人民共和国公民が国外から送付する或いは委託した授権委任状は、中華人民共和国の同国の駐在領事館の証明を経なければならない。中国が同国に領事館がない場合、中華人民共和国と外交関係のある第三国の駐在領事館の証明を受け、そして、中華人民共和国の第三国駐在領事館に移送し証明を受けか、現地の愛国華僑団体の証明を受ける。外国人、外国企業或いは組織の代表者が中華人民共和国国内で授権委任状に署名する場合、民事訴訟法の司法解釈第523条の規定に基づき、人民法院裁判官の立合いの下で署名する、或いは民事訴訟法の司法解釈第524条の規定に基づき中華人民共和国公証機構の公証書を提出しなければならない。

8.どのような民事事件を人民検察院に検察建議或いは控訴を請求できるか?
第13条 以下に掲げるいずれかがある場合、当事者は、人民検察院に検察建議或いは控訴を請求することができる:
 (1)人民法院が再審請求を却下した場合;
 (2)人民法院が期限を過ぎても再審請求に対して裁定を下さいない場合;
 (3)再審判決、裁定に明らかな誤りがある場合。

9.民事事件再審の条件には何があるか?
第14条 当事者の請求に以下に掲げるいずれかに適合する場合、人民法院は、再審しなければならない:
 (1)原判決、裁定を覆すに足りる新しい証拠がある場合;
 (2)原判決、裁定で認定された基本的事実に証拠による証明が不足している場合;
 (3)原判決、裁定の事実認定での主な証拠が偽造である場合;
 (4)原判決、裁定の事実認定での主な証拠に質疑がされていない場合;
 (5)事件を審理するために必要な主な証拠について、当事者が客観的な理由により自ら収集できず、書面で人民法院に調査収集を請求したが、人民法院が調査収集していない場合;
 (6)原判決、裁定での法律の適用に確かに誤りがある場合;
 (7)審判の組織構成が合法ではない、或いは法により回避すべき裁判人員が回避されていない場合;
 (8)訴訟行為能力のない者が法定代理人を置かずに訴訟を代理した場合、或いは訴訟に参加すべき当事者が本人或いはその訴訟代理人の責めに帰すことができない事由により訴訟に参加していない場合;
 (9)法律の規定に違反し、当事者の弁論権利を奪った場合;
 (10)召喚状なしに、欠席判決になった場合;
 (11)原判決、裁定が訴訟請求を省略或いは超えていた場合;
 (12)原判決、裁定を下すための法律文書が取消された或いは変更された場合;、
 (13)裁判人員が当該事件を審理するときに汚職収賄、私情にとらわれて不正を働き、法を曲げて裁判行為をした場合。

参照サイト:https://ssfw.court.gov.cn/ssfww/ssfwwnew/detail.htm?ssfwznid=3

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