中国著作権法第3回改正

中国の国務院は、2020年11月11日付、著作権法改正を公示し、2021年6月1日から施行することを公示しました。主な改正は、民法典の影響、著作隣接権の明確化も含めて67条に亘る改正をしていますが、注目するのは賠償額の増額と懲罰的賠償制度の導入でしょうか?法定賠償額は上限500万元(約8500万円)、また故意など侵害の事情が重大の場合は算定された賠償額の最大5倍まで増額できる改正となりました。これは、商標法、特許法、不正競争防止法と横並びの規定です。

著作権法はあまり馴染みがないと思いますが、中国での権利行使では一番多く毎日訴訟が起きているような状況です。おもちゃなどキャラクターの模倣、映画や音楽、またゲームの侵害はいとまがありません。当方も何件か民事訴訟を経験しています。

中国での著作物については、著作権法第3条に以下のように規定され提案す。
著作物とは、文学、芸術及び科学などの分野において独創性を有するとともに、一定の表現形式される知的成果をいい、以下に掲げるものが含まれる:
(1)文字(訳者注:文芸)の著作物;
(2)口述の著作物;
(3)音楽、演劇、演芸、舞踊、曲芸芸術の著作物;
(4)美術、建築の著作物;
(5)写真の著作物;
(6)視聴著作物
(7)工学設計図、製品設計図、地図、見取りなど図形の著作物及び模型著作物;
(8)コンピュータ・ソフトウェア;
(9)作品の特徴が適合するその他の知的成果。
 そして、権利の種別が一番わかりづらいですが、日本と同じように人格権と財産権がありますが、第10条に以下のように規定されています。
著作権には、以下に掲げる人格権と財産権が含まれる:
(1)「公表権(発表権)」、著作権を公表するか否かを決定する権利;
(2)「氏名表示権(署名権)」、著作者であることを表明し、著作物上に氏名を表示する権利;
(3)「変更権(修改権)」、著作物を改変或いは他人に授権して著作物を改変させる権利;
(4)「同一性保持権(保護作品完整権)」、著作物が歪曲、改纂されないよう保護する権利;
(5)「複製権(複製権)」、印刷、複写、拓本印刷、録音、録画、ダビング、撮り直し、デジタル化などの方法で著作物の一部或いは複数部製作する権利;
(6)「発行権(発行権)」、販売或いは贈与の方法で一般に著作物の原本或いは複製品を提供する権利;
(7)「貸与権(出租権)」、有償で他人に視聴著作物、コンピュータ・ソフトウェアの原本或いは複製品を一時的な使用を許諾する権利。貸出を主目的としないコンピュータ・ソフトウェアを除く;
(8)「展示権(展覧権)」、美術著作物、写真著作物の原本或いは複製品を公開陳列する権利;
(9)「上演権(表演権)」、著作物を上演、並びに各種手段を用いて著作物の上演を公開で放送する権利;
(10)「上映権(放映権)」、映写機、スライド映写機など技術的設備を用いて、美術、撮影、視聴著作物などを公開再現する権利;
(11)「公衆送信権(広播権)」、有線或いは無線方式により著作物を公開送信或いは中継放送し、並びに拡声器或いはその他の信号・音声・画像を伝送する類似工具により一般公衆に著作物を送信、送信する権利、但し、本項第12項に規定する権利を含まない;
(12)「情報ネットワーク送信権(情報網絡伝播権)」、有線或いは無線方式により一般公衆に提供し、一般公衆が選定した時間及び場所で著作物を得られるようにする権利;
(13)「撮影製作権(撮制権)」、視聴著作物の撮影方法により著作物を媒体上に固定させる権利;
(14)「翻案権(改編権)」、著作物を改変し、独創性のある新たな著作物を創作する権利;
(15)「翻訳権(翻訳権)」、著作権をある文字言語から別の文字言語に転換する権利;
(16)「編集権(編集権)」、著作物或いは著作物の一部分を選択或いは編成し、新たな著作物として纏め上げる権利;
(17)著作権者が享有すべきその他の権利。
 これらの(5)以下が財産権ですからライセンスや譲渡ができることになりますし、侵害を受けやすい対象となります。

 著作権侵害は、第52条に以下のように具体例が示されています。
(1)著作権者の許諾なく、その著作物を公表した場合;
(2)共同著作者の許諾なく、他人と共同で創作した著作物を自ら単独で創作した著作物として公表した場合;
(3)創作に参加せず、個人の名声と利益を貪るために、他人の著作物に氏名を表示した場合;
(4)他人の著作物を歪曲、改ざんした場合;
(5)他人の著作物を剽窃した場合;
(6)著作権者の許諾なく、展示、撮影視聴著作物の方法で著作物を使用、或いは翻案、翻訳、注釈など方法で著作物を使用した場合、但し、本法に別段の規定がある場合は除く;
(7)他人の著作物を使用し、報酬を支払うべきところを支払わなかった場合;
(8)視聴著作物、コンピュータ・ソフトウェア、録音録画製品の著作権者、上演者或いは録音録画制作者の許諾なく、その著作物或いは録音録画製品の原本或いは複製品を貸与した場合、但し本法に別段の規定がある場合は除く;
(9)出版者の許諾なく、その出版書籍、定期刊行物の版面設計を使用した場合;
(10)上演者の許諾なく、現場の生放送或いはその上演現場の公開伝達、或いはその上演を収録録画した場合;
(11)著作権及び著作隣接権の権利を侵害するその他の行為。 

著作権侵害した場合の救済は、侵害の停止、影響の除去、謝罪、損害賠償などですが、損害賠償は第54条以下に記載されており、実際の損害額に差止にかかった合理的支出の賠償を求めることができます。故意侵害など重大な侵害の場合、最大5倍までの懲罰的損害賠償も可能です。また、中国では法定損害賠償額が立証が難しい場合などのために用意されており、500元以上500万元以下となっています。また、裁判所は損害賠償額を算定するために被告の帳簿資料の提出命令を出すこともできます。なお、改正では侵害品を製造するための材料や設備の廃棄も救済の対象に含まれており、こうした改正は商標法での救済内容と同じく強力なものとなっています。

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