ちょい掘りIR〜まぐまぐ〜
はじめに
突然ですが、自学のために気になる企業のIRを調べてnoteにまとめるというのを、ちょこちょこやっていこうと思っています。
先月Twitterで四季報写経のすすめ的なものを見かけて、ビジネススキームのインプットになるかなと思い試しに100社写経してみたのですが、やってみて思ったのは
・四季報からだけだと収益構造やKPIが見えづらい
・数字をスナップショットでしか見れないので、時系列で捉えにくい
・写経せずともパラ読みしてても近しい効果が得られそう
という感じ。
会社の先輩にも、もっと1社に時間をかけてビジネススキームをちゃんと調べて(想像でも良い)、3ヵ年の予想を自分なりに考えたほうが良いというアドバイスを頂きました。業界・サービスのくくりごとに複数社深ぼれると比較もできてより理解が深まりそう。
ということで、手が空いている時に軽く企業のIR調査「ちょい掘りIR」やっていこうと思います。結構私見や想像で語ることも多いと思うので、ここは違うのでは?という指摘があれば是非勉強させて下さい。
株式会社まぐまぐ
今回はメルマガ配信サービスを運営している株式会社まぐまぐについて調べてみました。まぐまぐをチョイスした理由は、コンテンツビジネスについて調べてみたかったからです。他にはNewsPicksを運営しているユーザベースとかも今度見直したいです。
まぐまぐは1999年創業の老舗企業なのですが、2017年に航空券など扱うエアトリがまぐまぐを子会社化、その後3年経て2020年9月にマザーズ上場を果たしています。
エアトリによる買収後に売上利益ともに順調に伸びて、そのまま上場を果たしています。子会社化後、経営面でテコ入れされて利益をあげながら正しく投資できる状態になっていったのかなと思いますね。ファンドみたい。
時価総額は2021年4月27日現在、37.7億円、PERは40くらいです。
事業モデル
まぐまぐの主力事業はメルマガ配信サービスの「プラットフォーム事業」です。まぐまぐ上に有料無料のメールマガジンを書いているクリエイターがおり、読者は気になるメルマガをサブスク購読するという流れですね。そして面白いメルマガの内容を編集し、記事コンテンツとして複数のメディアに展開して広告収益で稼いでいるのが「メディア広告事業」になっています。クリエイターのコンテンツを有効活用できていい感じですね。逆にいうといいクリエイターをしっかり確保することがまぐまぐにとって一番大事なことであるとも言えそうです。その他事業で、イベント開催やクリエイターのサポートなども行っています。
直近の業績
それまで堅調に成長してましたが、20年度は減収減益。利益率も7%近く下がってしまっています。これはコロナにより広告事業が影響を受けたことに起因しています。
事業別の売上推移をみると、本丸のプラットフォーム事業は割と売上が寝てきていて、まぐまぐの上場までの成長はメディア広告事業の伸びに支えられていた事がわかります。
メルマガのまぐまぐから専門家の記事を提供する「MAG2NEWS」、マネー系に絞った「MONEY VOICE」は堅調に伸び、2018年には旅行メディア「Trip EdiTOR」、2019年には恋愛メディア「by them」と、新しい切り口でどんどんメディアをリリースしており、明確な勝ちパターンになっているようでした。しかしコロナの影響で20年度は広告単価が一気に下がり、それをもろに食らった形になりますね。21年目標については、引き続きメディア広告事業はコロナ影響を考慮しており、メルマガサービスを再成長させるプランとなっています。
今後の成長戦略
メディアの方はコロナで不安定なので、改めてプラットフォームを再成長させる方針をとっています。そのためにはクリエイターにとって、読者にとって、まぐまぐがより魅力的な場所である必要があります。そのために、コンテンツの多様化、配信手段の多様化を通じ、新しい価値提供をするとうたっています。
コンテンツの多様化については、例えばまぐまぐは2020年4月にまぐまぐLiveをリリースしており、ライブ配信が可能になりました。ライブ配信により読者の体験幅が広がって継続率があがったり、配信が得意なクリエイターが新しくまぐまぐに入ったりなどが期待できそうです。流石にライブ配信得意なだけのクリエイターは来ないだろうけど、今後動画や音声も追加していくと、他のプラットフォームのクリエイターが作成済みのコンテンツをまぐまぐにも横展開してくれるなどはありそうですね。
正直人々はどんどん文字を読まなくなっているので、YouTubeやTikTokをはじめとする動画サービスに年々人が流れているだろうし、テキストだけというのは厳しいでしょうね。
配信手段の多様化についても、ぶっちゃけメールでしかコンテンツが読めないのは、読みにくいしSNSのシェアも生まれにくいのでイマイチですよね。面白いものはメディア化しているので、そこからの流入はあるけど、手軽に書けてバンバンシェアされるnoteとかと比べると劣りますね。なのでアプリにしたりウェブでも見れるようにしたり面を増やしていく事が大事そうです。
競合と如何に差別化していくか
一番意識するのはマガジン機能のあるnoteですよね。購読者側の体験で言うと、Webやアプリでみれること、洗練されたUI、SNSでシェアされやすい&SEOの強さを加味してnoteは強力です。クリエイター目線だと両方のプラットフォームに出すのは意外と手間じゃないので共存はすると思います。ちなみに収益比率をみるとクリエイターの取り分はまぐまぐが丁度50%で、noteは70〜80%であり、負けていますね。YouTubeとアドセンスも確か70%。
こうなるとまぐまぐの差別化ポイントとしては、例えばライブ配信めっちゃやりやすいとか、グッズ制作サポートするとか、クリエイターへの手厚いサポート力が大事かなと思います。また、複数プラットフォーム共存はしそうですが、購読者と密な関係のコミュニティを複数抱えるのは大変なので、コミュニティ機能が優秀な方が主軸になるということはありえます。noteにはサークル機能があるので、そことの機能差分は考える必要がありそうです。
2019年にシリーズAで約16.5億調達したニュースレターサービスのSubstackが参考になりそうですね。正式に日本版はでていないですが競合にもなりそう。
Substackでは、独立したライターやジャーナリストを支援するために、「Substack フェローシップ」というプログラムを行っています。このプログラムは、ニュースレターの質を向上させるために奨学金と3ヶ月のメンターシップサポートを受けられるというもの。
そのサポートも、ただの編集やライティングのサポートだけではなく、Instagramの初期の従業員でありコミュニティ作りのスペシャリストやマネタイゼーションのアドバイスもしてくれます。また、Substackの創業者から直接デザインやブランディング、PR、SNS戦略までサポートしてくれるのです。
また、最近では新型コロナウィルスの影響で、経済的困難に直面しているユーザーに対して約1,000万円の助成金を寄付することを発表しました。Substackは、単なるニュースレターサービスではなく、ライターやジャーナリストを支援し、成長させるクリエイターエンパワーメント企業としての姿勢が書き手からの信頼に繋がっているのだと思います。
クリエイター支援が手厚いのでメルマガ版noteのような思想を感じます。Substackはなんと購読者のリストをクリエイターに渡しているという攻めた事をしていて、元々外部のリストを持っている場合は持ち込みも可能。これによってクリエイターはリストを分析した上で直接コミュニケーション取りにいけるので、かなり強固なコミュニティを作れそう。逆にいうとそのままリストを持ち出してSubstackを簡単に卒業することもできるので、そうさせないために手数料以上の手厚いサポートに力をいれているということです。真にクリエイターファーストって感じで憧れますね。
ベンチャー投資の合弁会社
2021年2月に親会社エアトリと投資事業を行う合弁会社を設立しています。。
当社は、2016年9月より投資事業を開始し、計66社、総投資額約25億円を投資し、これまで6社の上場投資先を有しております。①当社がこれまで展開してきたエアトリ旅行事業及び投資事業等で蓄積した知見・ノウハウ・ネットワーク・ブランド力と、②まぐまぐ社の有する顧客ネットワーク、コンテンツ開発力、ブランド力とのシナジー創出を図り、投資先を支援してまいります。また、2社の上場経験を活用した投資先の上場準備、事業成長、企業価値向上等の支援を行ってまいります。
まぐまぐも純資産が立派に12億ほどあるので、投資をするのはありですよね。とはいえ主導はほぼエアトリなんじゃないかなあ。
まぐまぐの3年後業績予想
売上
コンテンツノウハウはあるはずなので、プラットフォームに投資できれば110%成長は続けられる気がするものの、21年度目標を見た感じそこまで投資意欲は見えないです。ただ広告がコロナ前の水準まで戻れば8億円はいくんじゃないかな。
コスト、利益
プラットフォームへの投資次第だが、ちゃんと利益作りたそうなので1.8億円(利益率23%)と予想。
時価総額
積極投資しきれずに成長鈍化するのでPERは30程度と予想。時価総額は55億程度。ちょっと力尽きた感あるのでここらへんちゃんと考えるのは今後の課題にします、、
次回
次は同じサービス複数社をもう少し軽めに見て比較する感じのことをやりたいな。あれこれ考えて書くのは楽しいですね。
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